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生活困窮者を囲い込む「大規模無低」のカラクリ

3/1(金) 5:00配信

東洋経済オンライン

 表だって行政側は「個別の無低を斡旋・紹介することはない」としているが、例えばSSSはホームページ上で「利用のきっかけ」というデータを公表しており、そこでは入所者の96%が役所からの紹介だとアピールしている。では福祉事務所側はどうか。各福祉事務所には来所した当事者からの相談内容を記録する面接記録票が置かれているが、さいたま市の福祉事務所の一部では、「SSSへの入所契約」を前提とするような記録票を作成、設置していたことが、昨年9月に明らかとなった。

■入居者に選択の余地はほとんどない

 こうした両者の「蜜月」の反面、生活保護受給者の選択権は著しく阻害されることになる。かつて大規模無低に入居していた50代男性は、福祉事務所で近隣の無低の一覧表を提示されたとき、以前と同じ団体の施設だけは避けたいと強く思っていた。

 それは10年ほど前に都内のある団体の施設を利用した際、ワンフロアに二段ベッドがいくつも詰め込まれた相部屋に入れられ、プライバシーは自らのベッドの上だけという生活を余儀なくされていたためだ。

 ところが、入りたいと思った施設にたまたま空きがなかったため、ケースワーカーから「ここを予約したから」と告げられて、以前と同じ団体の施設への入所を余儀なくされた。「部屋が簡易個室だということも、施設利用料がいくらかでさえも、実際に入所するまで知らなかった」

 意に沿わない施設への入所を求められた結果だろうか、無低からの失踪者は少なくない。先の千葉県の現況調査によれば、無低からの退所者のうち、失踪が3割弱を占めている。

 生活保護法では生活扶助は被保護者の居宅において行うという「居宅保護」の原則が定められている。居宅での保護ができない場合に限り施設に入所させるとされ、施設保護は例外という位置づけだ。だが実際に、多くの福祉事務所の現場では、施設入所が生活保護開始の条件かのように説明されることが少なくない。

 今回の厚労省の検討会は、生活保護費を搾取する「貧困ビジネス」の排除を目的の1つに掲げている。無低をめぐる構造問題にメスを入れるべきだが、少なくともこれまでの議論は「無低の存在ありき」の施設保護を前提にした話ばかりに終始している。

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