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沖縄の若者の「悩み相談」から始まった県民投票が、辺野古埋立工事を止める「法的根拠」に!?

3/3(日) 15:31配信

HARBOR BUSINESS Online

 辺野古新基地建設工事への「反対」が7割を超えた沖縄県民投票投開票から3日後の2月27日、「沖縄県民は答えを出した。私たちはそれにどう応えるのか」と銘打った集会が衆議院第二議員会館で開かれ、沖縄生まれの若者・元山仁士郎氏が県民投票について報告した。

⇒【画像】「沖縄等米軍基地問題議員懇談会」会長の近藤昭一衆院議員

◆県民投票は師匠への「悩み相談」から始まった

 元山氏は昨年4月に一橋大学大学院に休学届を出して「『辺野古』県民投票の会」を設立、代表として活動を開始した。その発端は、行政法が専門の武田真一郎・成蹊大学教授から「県民投票をやるべきだと考えている」と聞いたことだった。隣に座っていた「『国民投票/住民投票』情報室」代表の武田教授がこう振り返った。

「(JR中央線の)武蔵境駅の近くの中華料理屋でご飯を食べながら、彼が沖縄出身の1人として非常に悩んでいたので、『県民投票をやるしかないよ』と言いました。『やれ』とは一言も言っていません。そうしたら彼が『じゃあ、やりましょう』と言って、がぜん動き始めたのです。その後の動きは、本当にビックリするくらい精力的でした」

 集会冒頭で、元山氏は配布したレジュメに沿って経過を説明。5月23日から2か月間をかけて県内を駆け回り、住所・生年月日・押印(印鑑または指印が不可欠な署名を10万950人分(有効署名数9万848人分)集めて、法定必要署名数をクリア。そして9月5日に県に請求を行い、10月26日に県民投票条例が成立した。

 しかし昨年12月から5市(うるま市・宜野湾市・沖縄市・宮古島市・石垣市)の市長が不参加を表明。元山氏は翌年1月15日から5市長に県民投票への参加を求めるハンガーストライキを開始。これが県議会を動かして、選択肢を3択に増やす条例改正を経て全県での県民投票実施となった。

◆沖縄の若者たち主導で進んだ活動

 武田教授は一連の経過についてこうも振り返った。「成蹊大学の武田教授が元山君たちを操っている」という見方に対して「逆です」「本土の人間が指図したのではなく、私が指図されていたのが真相」と否定したのだ。

「私が完全に操られていたのです。『説明会をやるから来てください』と言われたら、『ハイ、ハイ』と(沖縄に)飛んで行ったし、沖縄に行ったら隙間の時間はみんな、『ここではこの人に会って下さい』と全部指示されて、言われるがままに動いていた。その結果、投票が成功したということになったわけです」

 ちなみに司会を務めた「『国民投票/住民投票』情報室」の今井一事務局長も、「1年半ぐらい前から何回も沖縄に自腹で足を運んで、元山さんたちのアドバイザーとして『県民投票には法的な意味があるのだ』ということを繰り返し説明されてきました」と武田教授を紹介していた。

◆県民投票の条例案は、一昨年に作って県に出してあった

 最初は、知識豊富な教授に若者が悩み相談をするという“師弟関係”だったが、途中から弟子が師匠に指示する“主従関係”に変わったというのだ。また武田教授は、県民投票実現に至るまでの“秘話”も明かした。

「『県民投票が必要だ』ということは1年半以上前から言ってきました。(当時の)翁長雄志知事が2015年10月に埋立承認取り消しをした時に『県民投票をやってから取り消した方がいい』と思っていました。

『取り消しが違法』と判断された福岡高裁の判決があった日(2016年9月16日)に、実は翁長さんから知事室に呼ばれまして、お話をする機会がありました。その時に『県民投票をしたうえで(埋立承認)撤回をするのがいちばん有効だと思う』と申し上げたのです。

 しかも県民が直接請求をして条例を制定しないと、『知事がやらせたと言われる』と申し上げたのです。すごくよく分かっていただきました。それで知事の側近の方々からは『県民から声が湧き上がってくるのを待っている』というふうに聞いていました。

 ある筋からの要請で、一昨年(2017年)の2月でしたかね。オール沖縄の幹部の方々にも『県民投票をやった方がいい』と話しに行きました。しかし非常に反応が鈍かった。『やらないと決めたわけではないけれども思考停止だ』という話をずっと聞いていた。

 そんなことがありまして、実はとっくに条例案を作って県に出してありました。元山君たちが直接請求をしたものは、私が作った条例案を叩き台にしているのです。『準備は万端だったのだけれども、なかなか動かなかった』という経緯がありました」(武田教授)

◆裁判所が埋立承認取り消しを認めなかった根拠が瓦解

 反応が鈍い中高年世代の思考停止状態を、即断即決でパワフルな若者たちが打ち破って、快挙を成し遂げたというサクセスストーリーでもあったのだ。集会で、元山氏は県民投票実施の理由について、ひとつひとつ説明した。

「3番目が埋立承認の取り消しに対する判決です。2016年9月に福岡高裁那覇支部、12月には最高裁で出されたのですが、これが一つの県民投票の理由になっています。特に2016年9月の高裁での判決に『沖縄県民の民意は選挙結果からは明らかではない』と書かれていました。『基地反対が沖縄の民意、(沖縄県知事選の)選挙結果だ』と私も思いますが、裁判所、福岡高裁の人はそうは考えていなかった」

 しかし今回の県民投票で「反対71.74%(投票率52.48%)」の結果が示されたことで、状況は一変した。裁判所が県の埋立承認取り消しを認めなかった根拠の「県知事選では基地反対の民意は明らかではない」が瓦解することになったのだ。

◆玉城知事が埋立承認再撤回すれば、裁判所は認めざるをえない

 武田教授は、投開票の翌25日付の『沖縄タイムス』で「再撤回の有力根拠に」と題する寄稿記事(識者論評)を紹介したうえで、「『辺野古埋立を白紙に返す道筋をつけた』と見ている」と次のような解説をした。

「(今回の県民投票で示された)民意に基づいて知事が再撤回をすると、これは裁判所も恐らく『違法』と言えなくなる可能性が非常に高い。なぜかと言うと、公有水面埋立法は埋立を承認する要件として『国土利用上、適正かつ合理的』ということを規定しているのです。地元の県民が非常に強く反対している埋立が『国土利用上、適切かつ合理的』であるはずがない。

 ですから仲井真知事(当時)がした埋立承認は『公有水面埋立法にも違反している』ということが(県民投票で)はっきりしたわけです。そうすると、玉城知事が埋立承認の撤回をする最大の根拠になるわけです。

 しかも折しも辺野古の埋立は、世界で例のない難工事になる7万本もの砂杭を打って(地盤改良をする船が海面下)70メートルしか届かないのに90メートルまで砂杭を打たないといけない。『本当にできるのか』という(軟弱地盤)問題が起こっています。

 公有水面埋立法を見ると、『環境保全と災害防止に十分配慮されていること』という環境防災要件もあり、この要件にも違反していることがいまハッキリとした。玉城知事がこの2つの理由で(埋立承認の)再撤回をすると、これは非常に明確な法的な根拠があるということになります。

 これから玉城知事が(埋立承認の)再撤回をすれば、これも裁判所も認めざるを得なくなると私は見ています。最初からこのことが予測できたから『県民投票をやってみる価値がある』と何度も申し上げていた」(武田教授)

 悩める若者が師匠の助言を発端に実現した県民投票は、計り知れない破壊力を有している可能性がある。政府の埋立工事強行を“撃退”する法的根拠になりうるというのだ。新たな“切り札”を手にした玉城知事がいつ、埋立承認の再撤回に踏み切るのかが注目される。

<取材・文・撮影/横田一>

ジャーナリスト。小泉純一郎元首相の「原発ゼロ」に関する発言をまとめた『黙って寝てはいられない』(小泉純一郎/談、吉原毅/編)に編集協力。その他『検証・小池都政』(緑風出版)など著書多数

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