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アジア圏でも普及したQRコード決済。でも「QRコード」って何か知ってる?

3/6(水) 15:30配信

HARBOR BUSINESS Online

◆日本発の技術、QRコード

 数年前、中国でQRコード決済が大きく普及しているという話が話題になった。「Alipay」(2004年設立)や「WeChat Pay」(微信支付、2013年開始)がその中心的な存在だ。日本でも「LINE Pay」(2014年開始)や「楽天ペイ」(2016年開始)で、QRコード決済が導入されていった。

⇒【画像】 どこにQRコードがあるのかを高速で見つける「切り出しシンボル」

 そして、2018年6月に「PayPay株式会社」(ソフトバンク、ヤフー系列)が設立された。PayPayによって行われた昨年末の「100億円あげちゃうキャンペーン」で、一般の人にQRコード決済が大きく浸透し始めたように感じている。

 「PayPay」は、インド最大の決済サービス事業者である「Paytm」と連携している。Paytmの技術を利用して、営業力の強いソフトバンク、ヤフーが、日本の決済市場を握ろうとしている。Paytmは、PayPayとの提携時点で、3億人以上のユーザーと800万のオフライン加盟店を抱えていた巨大な存在だ。

 前述の中国での普及や、インドでの展開を見ていると、QRコードは外国発の技術に見える。しかし、QRコード自体は日本発祥の技術である。

◆QRコード開発元からのメール

 私事だが、筆者はQRコード生成と解析を行うWebアプリを公開している(QRコード生成、QRコード解析)。2015年に公開したのだが、2018年に株式会社デンソーウェーブの知的財産室からメールが届いた。

「QRコード」は、デンソーウェーブの登録商標なので、その旨記載して欲しいという内容だ。一時期「QRコード 生成」というキーワードで、上記ページがGoogle検索の1ページ目に表示されていた。そのためメールが来たのだ。

「QRコード」は、1994年に株式会社デンソーが開発した。現在、その開発部門は株式会社デンソーウェーブに分離している。デンソーウェーブでは、「QRコード」の普通名称化防止に取組んでいるそうだ。世界的に普及して、一般的に使用されるものになってしまったがゆえの苦労だと言える。

◆開発元のデンソーの苦労話

 QRコードという名前は、「クイック・レスポンス」に由来している。この技術の開発は、たった2人のチームで始まった。先行するバーコードは、一次元(横方向)にしか情報がない。QRコードは二次元(縦横)なので、より多くの情報を格納できる。

 しかし、課題は速度だった。どこにQRコードがあるのかを高速で見つける必要があった。その解決のために考案されたのが、四角い形をした「切り出しシンボル」だ。

 QRコードの角には、「黒い枠、白い枠、黒四角」という形の四角形の記号がある。その「切り出しシンボル」の場所を探すことで、読み取り機械はQRコードの位置を特定する。実際に形になったものを見れば、簡単なものに見える。しかし、何もないところから、この仕組みを考え出すのには苦労が伴った。

 問題解決のカギになったのは「帳票などで一番出現率が少ない図形」というアイデアだ。似た図形が多くあれば誤認識は増えて、読み取り時間が掛かる。エラーが少なければ、短時間で結果を出せる。

 開発チームは、様々な印刷物を白黒に直して、その面積の比率を調べた。膨大なデータを蓄積して、「印刷物で一番使われていない比率」を突き止めた。それが「1:1:3:1:1」という比率だ。「切り出しシンボル」の形は、この数字を元に作られている。最終的に1年半の期間を掛けて、QRコードは誕生した(参考:道のり|QRコードドットコム|株式会社デンソーウェーブ)。

◆QRコードの生成や読み取りは、今では手軽な技術

 多大な労力の末に完成したQRコードは、今では社会になくてはならない技術として普及している。QRコード決済は、そうした普及の結果誕生した派生技術だ。QRコードは大きく普及したことで、生成や利用が非常に簡単になった。

 スマートフォンでQRコードを読み取ったり、生成したりするのは、今では当たり前のことだ。そうしたプログラムを簡単に書くためのライブラリ(プログラムの部品)も充実しており、手軽に利用できる。前述の私が公開しているWebサービスも、そうしたライブラリを利用したものだ。

 たとえば、前述の筆者のQRコード生成Webサービスでは、「jquery.qrcode.js」を利用している。このプログラムをWebページに読み込んだあと、「jquery(‘#qrcode’).qrcode(‘生成したいQRコードに入れる文字列’);」といった1行のプログラムを書くことでWebページに、生成したQRコードを表示できる。

 古い時代には、同じようなことをWebページ上でしようとしても、こうした手軽なライブラリはなく、サーバーサイドで生成するものぐらいしか見当たらなかった。それらも使い勝手がよいとは、あまり言えないものだった。あるいは外部のWebサービスを利用するしかなかった。QRコードの普及とともに、手軽に利用できるプログラムが開発されて公開されていった。

 QRコードは、スマートフォンでのURLの読み取りや、商品の管理、航空券、入場券など、様々な場所で利用されている。今はQRコード決済が賑わっているが、その他のサービスでの利用も今後出てくるはずだ。そうしたサービスが出てきた時には、QRコードがどこから生まれた技術なのか、思い出すとよいだろう。

<文/柳井政和>

やない まさかず。クロノス・クラウン合同会社の代表社員。ゲームやアプリの開発、プログラミング系技術書や記事、マンガの執筆をおこなう。2001年オンラインソフト大賞に入賞した『めもりーくりーなー』は、累計500万ダウンロード以上。2016年、第23回松本清張賞応募作『バックドア』が最終候補となり、改題した『裏切りのプログラム ハッカー探偵 鹿敷堂桂馬』にて文藝春秋から小説家デビュー。近著は新潮社『レトロゲームファクトリー』。

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