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東野幸治が描く“中山功太伝説”「2年落ちのR-1チャンピオンが無間地獄の末に改名したワケ」

3/7(木) 8:10配信

デイリー新潮

 東野幸治が仲間たちの秘話をつづる連載「この素晴らしき世界」。今週のタイトルは「ブレイク前夜芸人、中山功太(2)」。

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 R-1ぐらんぷりチャンピオンになったものの、売れるタイミングを逃した中山功太君の話の続きです。

 優勝から2年後に東京進出したものの、残酷ですが、2年落ちのチャンピオンには用がありませんでした。完全にタイミングを逃してしまったのです。でも、その頃の中山君はそんな状況でも全然腐っていませんでした。

「チャンピオンになってから2年も経っているし、まぁそんなもんやろ」「おもろいネタ出来たら仕事もいっぱい入ってくるやろ」と、とにかく前向き。むしろ、「R-1チャンピオンの中山功太です。東京進出しましたが、週5日バイトしてます」と自虐ネタにして笑いを取っていました。歌舞伎町でホストのアルバイトもしました(中山功太本人注:ホストではなく、サパークラブの店員でして、キャバクラのアフターで来た男のお客さんのご機嫌を取ったり、代わりにお酒を飲んだり、軽く殴られてヘラヘラしたりするお仕事でした)。

 芸人ですから店の小さなステージでネタを披露することもありましたが、なかなか軌道に乗りません。この頃からテレビを観ていて苛立つことが増えてきました。チャンネルを替えるたびにグルメ情報番組ばかりで、自分が好きだったお笑い番組がどんどん減ってきている。同世代のお笑い芸人達が「このハンバーグめちゃくちゃ美味しいです! 口の中に入れた瞬間お肉が溶けました! 何ですかこれは!」と大げさにびっくりしている。誰も面白いことを言っていない。いや言おうとしていない。というか極力ボケないようにしている……。

 一部の先輩芸人を除いて、ボケたりツッコんだりの「お笑い」はもうテレビではできないのか⁉ 家賃20万円のマンションに住んでいましたが家賃が払えず、上京からわずか9カ月で家賃の安い部屋に引っ越し、なぜか頭を金髪に染めました。さあ、無間地獄の始まりです。

 極力家にいる。ストレスで食べる。動かない。太る。寝る。床ずれする。ドラえもんのように愛嬌のある体型だが目つきは異様に鋭くなる。右を向いて寝転がる。左目から涙が垂れてくる。それを右目に入れて左に寝返りを打つ。右目から涙を垂らして左目に入れる。そしてまた右に寝返りを……繰り返しやり続けました。

 芸人としての給料はついに1万になる(本人注:最終的に23円になりました)。

「ひっきりなしに苦難に苛まれる」無間地獄の中、何を思ったのか、「負ければ芸人引退」というとんでもないライブを企画。尊敬する先輩芸人・麒麟の川島明君と大喜利で対決をして、お客さんの投票で負ければ芸人を引退するというものです。なぜいきなり芸人を引退するのか? 謎すぎます。ヤバイ感じしかしません。川島君は自身に全くプラスがないこのイベントによく出てくれました(本人注:川島さんにはこの件で多大なるご迷惑をおかけしました。飲みの場で「負けたら芸人をやめろ」とおっしゃったのは川島さんですが、そうなるまで喧嘩を売ったのは完全に僕でした。どうかしていました)。

 案の定、結果は27票対23票で中山君が負け、約束通り芸人を引退すると宣言しました。その後会社と話し合った結果、芸人ではなくタレント「コウタ・シャイニング」として再スタートすることに。「俺がやりたい仕事はあくまでお笑い芸人なんだよ!」という(面倒くさい)こだわりがビンビン伝わってくる、コウタ・シャイニングの改名騒動でした。(続く)

東野幸治(ひがしの・こうじ)
1967年生まれ。兵庫県出身。東西問わずテレビを中心に活躍中。著書に『泥の家族』『この間。』がある。

「週刊新潮」2019年2月28日号 掲載

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最終更新:3/7(木) 8:10
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