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残り147羽、NZの飛べない鳥カカポに「記録的な繁殖期」

3/8(金) 7:11配信

ナショナル ジオグラフィック日本版

世界で唯一の飛べないオウム、最新技術の導入で回復に光

 ニュージーランドの南島沖に、コッドフィッシュ島(マオリ語でウェヌア・ホウ)という島がある。その島に建つ小屋の冷蔵庫には、カカポの未来が垣間見える表が掲げられている。

ギャラリー:世界の美しい鳥たち、カカポほか30点

 カカポ(和名:フクロウオウム、学名:Strigops habroptila)とは、希少種の飛べないオウムで、ニュージーランドの固有種だ。表には、現在生き残っているすべての繁殖可能なメスのカカポがリストアップされている。その数わずか50羽。すべての個体にパール、マラマ、ホキなどの名がつけられ、それぞれが産んだ卵の状態が描かれる。孵化可能な卵にはニコニコマークが、孵化できない卵には横線が一本、孵化した卵には翼と足、死んだものにはX印が書き加えられる。

 できるだけ多くのニコニコマークに翼が生えて、反対にX印の数は減ることが望ましい。そのために繁殖期の間、科学者やレンジャー、ボランティアらが、24時間体制で野生のカカポの監視と保護活動を行っている。そして、3Dプリンターで作られた「スマートエッグ」、行動追跡装置、そしてドローンによる精子の運搬といった最新技術を投入した結果、今シーズンは記録的な数の卵が産まれている。これを弾みに、多くのニュージーランド人に愛されるカカポが絶滅の危機から脱することができるよう期待がかかる。

「かわいがるなというほうが無理」

 カカポはかなり変わった鳥だ。世界で唯一の飛べないオウムで、夜行性。体重4キロの体で地上をよたよたと歩く。敵に見つかると、その場で固まって動けなくなる。緑色のまだら模様は森の中で身を隠すのに適しており、太めのくちばしは顔をコミカルに見せる。

 飼育下で育ったシロッコという名のカカポは、ニュージーランドの自然保護への取り組みを代表する「広報鳥」に就任し、20万人以上のフォロワーがフェイスブックにいる。ある日、人間の頭と交尾しようとして見事に失敗したが、この時の滑稽な姿が基になって、「パーティーオウム」という動く絵文字まで作られた。頭をぐるぐるとローリングさせる派手なシロッコの絵文字は、ネットユーザーやナショジオ編集部の動物担当者の間で人気者になった。

「カカポは、驚くほどカリスマ性のある鳥です」と語るのは、ニュージーランド自然保護局カカポ回復プログラムの科学顧問アンドリュー・ディグビー氏だ。「かわいがるなというほうが無理です」

 かつてはニュージーランドに数多く生息していたが、人間が島に持ち込んだネズミやネコ、オコジョに、卵やひな、飛べない成鳥までもが捕食されて激減した。現在生存している成鳥の数はわずか147羽だが、1990年代半ばには51羽まで減少していたのを、保全努力によってここまで回復させた。その147羽は全て、天敵のいない3つの島へ移されている。

 個体数の回復には大変な労力が必要とされる。カカポのエサとなるリムの木がたわわに実をつけるのが2~4年に一度という長い周期なため、カカポの繁殖期もそれに合わせて数年に一度しか訪れない。また実際に卵を産んでも、孵化するのは半数以下だ。個体数の減少による近親交配が原因とみられている。2016年には、メスは122個の卵を産んだが、そのうち巣立ちまで成長したのは34羽だけだった。

 動物学者であり、作家で、カカポの専門家のアリソン・バランス氏は、繁殖期に繰り広げられるドラマは「もどかしくもあり、落胆させられることもあり、また喜ばしい瞬間もあります」と語る。バランス氏は、ラジオ・ニュージーランドのカカポ・ファイルズというポッドキャストで繁殖期の様子をレポートしている。

 今シーズンは、2018年12月末からメスが218個の卵を産み、52羽のひなが孵った。前回の繁殖期の記録を既に上回っている。「近年では記録的な数です。これほどの成功は今までありませんでした」と、ディグビー氏は言う。

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