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もっちりの食感としっとりの甘み、東北を代表する銘菓

3/8(金) 18:18配信

旅行読売

かんのやの「家伝ゆべし」
福島県郡山市

 饅頭、餅、飴、団子など、菓子の種類は数多い。それぞれ姿や形、味で物の見当が付くが、柚餅子(ゆべし)はどうだろう。日本各地に伝わる菓子だが、作り方や形、味が各様に異なり、なかなかひと言ではくくれない。
 柚餅子の始まりは、柚子(ゆず)の実の中身をくりぬき、中に米粉やみそ、木の実などを詰め込んで蒸し上げた保存食や携行食といわれる。奥能登の輪島や岡山で作られる手間のかかる「柚餅子」がそれである。
 もう一つはもち米、うるち米の粉に砂糖やみそ、しょうゆなどを加え柚子汁や柚子皮、クルミなどを入れて蒸したもの。すがすがしい香り、もちもちした歯触り、しょうゆ、みその絡んだ甘さが溶け合った餅菓子である。
 東北や北関東では柚子が穫れないので、代わりにクルミやゴマを散らすのが一般的で、仙台ゆべし、山形ゆべし、福島ゆべしの名でそれぞれに異なる。柚子を使わないので、平仮名表記なのだろうか。

 そんな中で独自の伝統の味を伝えてきたのが、三春城(舞鶴城)の城下町で、菅野(かんの)文助が1860年に創業した「かんのや」である。
 看板菓子の「家伝ゆべし」は鶴の形をした東北を代表する銘菓だ。丸いゆべし生地を薄く延ばして、真ん中にこし餡(あん)を包み込み、鶴の形にして蒸し上げた唯一無二の餡入りのゆべしである。
 もっちりとした歯応え、しっとりしたこし餡、プチッと触れるケシの実など味わい深い。皮に潜めたしょうゆ味に餡の甘さが引き立つ懐かしい風味に、心がほぐれる。
 「主な原材料は上新粉、小豆、砂糖など。蒸し上げた生地を1日寝かせ、餡を包んでさらに蒸します」と、工程を分かりやすく説明してくれた広報担当の佐藤敦さん。「べっ甲色のあの艶と滋味深い味わいは、手間ひまをかけるからこそ生まれるものなのです」と強調した。  かんのやの菓子作りのポリシーは水、米、砂糖、小豆など素材の厳選と、職人の手技と化学的な研究の相乗効果、気候状況の把握などにある。手間と時間をいとわない仕上げがモットーという。
 佐藤さんがさらに熱意を込めて話すのは、「家伝ゆべし」の鶴の由来話。簡潔に言うと、「戦国時代の三春城主・田村の祖先と称される征夷大将軍・坂上田村麻呂が赤子の時にこの地で捨てられていたところを2羽の鶴に育てられた」との伝説に基づく。そこで鶴が翼を広げた姿をかたどったゆべしが作られた。
 この伝統の「家伝ゆべし」に、季節限定のゆべしが加わり、好評を得ている。春は香りよい桜葉を入れた白餡の「家伝ゆべし さくらあん」、初夏は白餡に愛知県の西尾の抹茶を加えた「家伝ゆべし 抹茶あん」ほか、春夏の「宮古島塩あん入り」、秋冬の「会津山塩あん入り」「柚子入りあん」などバリエーションが豊かである。

文 紀行作家・中尾隆之

なかお たかゆき●北海道生まれ。高校教師、出版社勤務を経て独立。土産銘菓に詳しく、全国お土産銘菓通選手権でテレビチャンピオンに。著書多数、近著に「日本百銘菓」(NHK出版)。

かんのや本店文助
郡山市西田町大田宮木田39/電話0247・62・2016/9時~18時/無休/磐越東線三春駅からタクシー5分。磐越道郡山東ICから5キロ

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フリーダイヤル0120・040・141

最終更新:3/8(金) 18:18
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