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「メダルレスパチスロ」は本当に普及するか? パチンコ業界が考える次世代遊技機の正体

3/10(日) 8:33配信

HARBOR BUSINESS Online

 前回記事で、パチンコ業界が導入を計画している、管理遊技機とメダルレス遊技機がいかにしてギャンブル等依存症対策になるのかという点について書いた。本稿では、これらの遊技機が本当に、日本全国のパチンコホールに普及するのかという点について取り上げる。

◆業界団体は2020年の普及を目指すが……

 管理遊技機(パチンコ)、メダルレス遊技機(パチスロ)の普及を計画している、日本遊技機工業組合(日工組)と、日本電動式遊技機工業協同組合(日電協)の担当者によれば、同遊技機の本格的な導入は2020年を想定しているという。

 これは、平成30年2月に改正された遊技機規則等により、もともと設置されていた所謂「旧基準機」が完全に撤去される2021年1月を想定しているものと考えられる。

 そもそもパチンコ業界は、国のギャンブル等依存症対策の一環として、遊技機の射幸性を抑制した規則改正により、その当時ホールに設置されていた遊技機を、3年間掛けてすべて撤去しなくてはいけない。

 パチンコであれパチスロであれ、今、メーカーから販売される遊技機は、すべて新しいルールにそった「新基準機」であり、現状においてもホールは徐々に入替を進めているところなのだ。

 確かに管理遊技機やメダルレス遊技機は、次世代遊技機としてある程度のメリット性を持っているものの、果たしてそれを、パチンコホールが積極的に導入するかと言えば疑問符が残る。

◆ネックは導入のコスト

 その最大の理由は、導入費用である。

 現時点では、管理遊技機とメダルレス遊技機の導入価格は提示されていないが、同遊技機は遊技機本体とは別に、ユニットの交換も必要となり、現行の遊技機よりも高くなるのではと言われている。まして、ただ遊技機を入れ替えるだけではない。島全体の設備変更が必要となる。それだけの大きな設備投資を、年々業績が苦しくなる業界が、積極的に導入するとは考えにくい。

 さらには、遊技機規則等の改正により、全国のパチンコホールは2021年1月までに、すべての旧基準機をホールから撤去せねばならず、それだけでも多くの投資が必要となるのだ。ホール経営者にとっては、次世代遊技機よりも、今から約2年の間に、どうやって遊技機を入れ替えていくのか、どのように資金配分していくのかで手一杯な状況なのである。

◆CR機普及のようなホール側への「メリット」は?

 ホール側としてみれば、メーカーがいくら推奨しようとも、海の者とも山の者ともつかない「次世代遊技」にかまけている暇はない。

 管理遊技機、メダルレス遊技機を業界全体に普及させていくには、何かしらのアドバンテージが必ず必要になる。

 かつてパチンコ業界は、今回のような劇的な設備変更を行った経験がある。1980年代末から1990年初頭にかけて普及された、パチンコCR機の件だ。

 これも当時、日工組をはじめとするメーカー側は提案し普及に努めた。当初はホール側の強い反対もあったが、今では日本全国のほとんどのパチンコ機はCR機になっている。

 この普及の背景は複雑だ。すごく簡潔に説明するのであれば、CR機導入の最大の目的は、パチンコホールにおけるインのクリア(経理の透明化)を図る事である。「脱税天国」とまで言われたパチンコ業界の健全化を図る為、警察庁の積極的な後押しもあった。

 莫大な設備投資を強いられるホール側は、やはり頑強にCR機導入に反対したが、結局はCR機の導入は全国的な広がりを見せた。

 ただ、このCR機の普及には、分かりやすいアドバンテージが存在した。CR機に限り、行政側が射幸性を高める事を許し認めたのである。射幸性の高い遊技機は客に支持され、パチンコ店の売上向上へと繋がった。当初は設備投資に二の足を踏んだホールも、CR機の爆発的な人気に押され、導入に踏み切った。最終的には、当時のCR機の導入は、パチンコホールに莫大な利益をもたらしたのである。

 しかし、今回の管理遊技機、メダルレス遊技機の普及において、射幸性の引き上げは許されるのだろうか。

◆現行遊技機の射幸性のさらなる引き下げの可能性も……

 それはとうてい無理な話だと思う。そもそもが、ギャンブル等依存症対策に資するという文脈での普及だ。射幸性と依存症の因果関係については、いまだ不透明な点も多く疑義もあるが、少なくとも現時点において警察庁は、射幸性の抑制が依存症対策に資すると考えている。

そのような状況下において、次世代遊技機の普及のためだけに、その論理を覆す訳にはいかない。

 では、射幸性引き上げ以外に、何かしらのアドバンテージは考えられるか?

 遊技機価格の低減はどうか。しかし前述のとおり、その点においても希望的観測は得られない。遊技機本体の価格が安くなるという目算も低ければ、逆にシステム料等のランニングコストが掛かってくるという憂慮もある。よって金額面におけるアドバンテージも考えにくい。

 売上も上がらない。コストも下がらない。客側の視点においても、管理遊技機、メダルレス遊技機が、今の遊技機則下において爆発的な人気を得る根拠もない。今時点において、パチンコホール側に導入のメリットは皆無である。

 さて、メーカーがこの管理遊技機やメダルレス遊技機をどのように普及していくつもりなのか。パチンコ業界は今後、この次世代遊技機をどのように扱っていくのか。他方、監督官庁である警察庁は何かしらの導入の後押しを考えているのか。

 すべてが不透明ななか、筆者がもっとも憂慮しているのは、次世代遊技機以外の現行遊技機の射幸性のさらなる引き下げである。相対的に次世代遊技機の射幸性を「高める」ということだ。そんな事になれば、パチンコ業界はより一層の苦境に立たされる。

<文・安達 夕 @yuu_adachi>

ハーバー・ビジネス・オンライン

最終更新:3/10(日) 10:30
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