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隕石衝突まで恐竜は減っていなかった、「衰退説」を全否定する新研究

3/11(月) 7:17配信

ナショナル ジオグラフィック日本版

大量の化石データを駆使、「恐竜がすむのに適した環境が豊富にあった」

 6600万年前のある日、地球に隕石が衝突したせいで、恐竜の時代は終わりを告げた。恐竜の仲間の中で、この試練を生き延びたのは鳥類だけだった。その鳥類と、私たちの祖先にあたる初期の哺乳類が、恐竜に代わって主役の座に就いた。

ギャラリー:決定版!奇跡の恐竜化石たち 写真23点

 だが、もしこの大災害が恐竜に降りかからなかったらどうなっていたのだろうか? それでもやはり自然に衰退し、絶滅していただろうか?

 たぶん、そうはならなかった。隕石の衝突がなかったら、恐竜は絶滅していなかったかもしれない。3月6日付けで学術誌「Nature Communications」に発表された論文によると、白亜紀が終わった6600万年前の大量絶滅のときまで、恐竜が衰退する兆しは全くなかったという。この研究結果は、隕石衝突の時点で恐竜がすでに「末期的衰退」の状態にあったかどうかをめぐる論争に新たな一石を投じるものだ。

 この研究では、大規模シミュレーションという、古生物学の分野では新しい手法が用いられた。こうした最先端のアプローチによって、過去の環境の大変動に関する理解が深まるとともに、今日の気候変動がもたらしうるものを詳細に予測できるようになるかもしれない。

「今回の結果は非常に重要です。恐竜衰退の物語がまるごと否定されましたが、新しい手法を考案できてとてもよかったです。いろいろな可能性を秘めています」。今回の研究を率いた古生物学者で、英インペリアル・カレッジ・ロンドンの博士課程学生であるアルフィオ・アレッサンドロ・キアレンツァ氏はそう語る。

もしも隕石が衝突しなかったら

 1940年のディズニー映画『ファンタジア』を観ると、当時の古生物学者が恐竜絶滅の原因をどのように考えていたかがよくわかる。映画では、緑豊かな沼地で繁栄をきわめたお馴染みの恐竜たちが、気候変動に伴う砂漠化により絶滅する様子が描かれている。この考え方は1980年代に大きく変化した。地質と化石の証拠を検証したルイスとウォルターのアルバレス父子が、恐竜が絶滅したのは砂漠化のせいではなく、隕石の衝突による大災害のせいではないかと主張したのだ。

 その後、科学者たちは決定的な証拠を見つけた。メキシコ沖で、この衝突によってできたと思われるクレーターの痕跡を発見したのだ。それ以来、ほとんどの古生物学者が、恐竜を絶滅に追い込んだ主要な原因は隕石の衝突であると考えている(ただし、この説にもまだ異論はある)。

 その一方で、古生物学者の間では、隕石が衝突しなかったら恐竜たちはどうなっていたかという議論が続いている。この問題に答えを出すのが難しいのは、化石の性質上、どうしても記録が断片的になるからだ。生物の死骸が土に埋もれて化石になるには、多くの環境条件が整っている必要がある。結果的に、化石によって生命の歴史を語ることは、ボロボロの写本1冊から物語全体を再構成するような作業になる。もしページがばらばらになっていたり、インクが消えかかっていたりしたら、どうすればよいだろう?

 そのため、古代の生物種を数えるときには、化石記録の偏りを考慮する必要がある。単純に化石記録の数だけを見るならば、白亜紀の終わりの1700万年間に北米西部の恐竜の種類は減少しているように思われる。つまり、隕石が衝突したときにはすでに恐竜の時代が黄昏を迎えていたことになる。

 しかし、いよいよ大量絶滅が近づいた白亜紀最後のマーストリヒト期(Maastrichtian)については、詳しい状況がわかるほど化石が見つかっていない。この偏りを説明するために多くの研究が行われた結果、北米西部では、恐竜の多様性が絶滅直前まで保たれていたか、むしろ増えてすらいたことが明らかになった。このシナリオでは、恐竜たちは最後まで繁栄していて、唐突に絶滅したことになる。

 それが新たな定説になりかけていたところ、反論の一撃が飛んだ。2016年、英レディング大学の生物学者、坂本学氏が論文を発表し、恐竜が絶滅するまでの数千万年間は、新たな種が出現するペースよりも絶滅するペースの方が速かったと主張した。世界中の恐竜の系統樹を基に坂本氏が描いた図式にしたがえば、恐竜のグループの一部は隕石が衝突するより前に最盛期を過ぎていたことになる。

 坂本氏の研究は、他と比べて長い時間的スケールで検討しているため、両者を直接比較することはできない。それでも、彼の研究をきっかけに恐竜の衰退をめぐる論争が再燃した。

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