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韓国で兵役逃れの国籍離脱も発生 徴兵制の“抑制効果”

3/12(火) 11:54配信

PHP Online 衆知(Voice)

徴兵制というと、好戦的で時代遅れなイメージがもたれがちである。しかし国際政治学者の三浦瑠麗氏は、韓国が李明博政権下で戦争を思いとどまることができた背景には、同国が採用する徴兵制の“抑制効果”があったという。戦争を「我が事」と考える重要性を説く。

※本稿は『Voice』4月号、三浦瑠麗氏の「戦争と平和のコストを認識しているか」を一部抜粋、編集したものです。

韓国の世論を変えた南北融和

ガラパゴス化した日本に比して、韓国は最前線で冷戦を戦ってきた身として、それ相応の危機感はもっているようです。とりわけ、左派の進歩派政権であっても米韓同盟を重視するという姿勢は揺らがないものでした。

イラク戦争に派兵したのは盧武鉉大統領ですし、強硬な通商政策を進めるトランプ政権の誕生を受け、韓国の文在寅政権は各国に先駆けて早々に米韓FTA(自由貿易協定)の再交渉を終わらせたことにも明らかです。

米韓同盟に対する依存は変わらないものの、ここへきて徐々に変わりつつあるのが、先ほども述べた韓国における徴兵制の問題です。

2018年7月の「国防改革2.0」で、国防軍の定員は大幅に減少する見通しとなりました。

もともと、韓国の兵役は陸軍と海兵隊が21カ月、海軍は23カ月、空軍は24カ月でした。それを、陸海軍と海兵隊は3カ月短縮し、空軍は2カ月短縮することになりました。

徴兵年限の短縮は積年の課題でした。しかし、大統領候補が選挙の際に民意に圧されて短縮を宣言しても、実際には実現してこなかったのです。

そこへ転機となったのが、2018年4月の南北首脳会談での融和でした。世論の影響を考えると、だんだん兵役期間が短くなっていくことは必至だと思われます。

「血のコスト」と国防への意識が高い韓国

ここで、韓国政治が保守にまたブレたりはしないか、という疑問について答えておくと、私は今後保守が単独で政権を取るというのは難しいのではないかと思っています。

というのも、保守には確固とした経済政策があるわけでもなく、南北融和が進んだいまとなっては、進歩派に勝てる見込みが見当たらないからです。

兵役の短縮、年金改革、若年世代への配分強化、社会福祉の拡充、経済の民主化、言論の自由、MeToo運動、どれをとっても目標は進歩派の側に分があります。

文在寅大統領が人気を下げたのは、ひとえに経済政策において失敗したからであり、それは手段をめぐる大失敗ではありましたが、目標の正しさを疑わせるものではなかったからです。

進歩派が北に融和的であることは確かです。兵役を短縮して陸軍の規模を縮小しようとしていることも確かです。

でも同時に、進歩派は負担の不均衡にも敏感です。文在寅大統領は兵役経験を強調していますし、盧武鉉元大統領は兵卒から兵役を勤めた初の大統領として脚光を浴びました。

現状、それでもエリートが集う高官のあいだでの兵役逃れ率は高いのですが、そうした特別扱いに対して世間の目が厳しいことも十分理解しています。

韓国の徴兵制は、先進各国に比べて実戦を経験する可能性が高く、免除率が際立って低い(約2.4%)ことが特徴です。

つまり、韓国においてはいわば「血のコスト」(経済コストに還元できない兵士の労力や犠牲)を平等に負担すべきだという意識がきわめて高く、国防意識も日本に比べればはるかに高いということです。

その副作用はもちろん存在します。韓国では徴兵した人員をそのまま前線に張り付けるためストレスも高く、さまざまな問題が指摘されてきました。

その一つが、軍のなかの凄惨ないじめや体罰、精神的負担、そしてその隠蔽体質です。2014年には自殺問題が脚光を浴び、多くの報道が集中しました。

また、兵役を逃れたいということも1つの動機となって、2016年の統計では1年あたり4000人程度が国籍を離脱しています。

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