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ピューマの食べ残しに甲虫が215種も、生態系を構築

3/13(水) 18:15配信

ナショナル ジオグラフィック日本版

2万4000匹の昆虫を採集、生態系におけるピューマの役割を解明

 ピューマが、大きなエルク(アメリカアカシカ)を仕留めた。そこは「死」の現場であると同時に、多様な生命を育む場にもなる。

ギャラリー:危機からよみがえったピューマ 写真10点

 ピューマはおとなでも体重50キロほど。体重300キロにもなるエルクの肉をすべて平らげることなどできない。2018年11月に学術誌「Oecologia」に発表された研究によると、その食べ残しには、驚くほど多様な生物が集まってくるという。

 研究チームは2016年、米国イエローストーンで、ピューマが仕留めた獲物に集まってくる甲虫を調査した。食べ残しとなった18頭の死骸のそばに落とし穴式トラップをしかけ、集まってくる甲虫を採集。そこから20メートルほど離れた場所で集めた虫と比較した。

 わかったのは、驚くべき事実だ。

 死骸がない場所で集まった甲虫が4000匹強だったのに対し、死骸のそばでは合計2万匹を超える甲虫が集まった。その半数以上はシデムシ科の1種(northern carrion beetle)だったが、全部で8つの科にまたがる215種もの甲虫が見つかった。

 今回の論文の共著者であるマーク・エルブロック氏は、「こういった場所で、どれほど複雑なことが起こっているのかがよくわかります。まったく知らなかった種を含め、あらゆる虫が見つかりました」と語る。エルブロック氏は、野生のネコ科動物の保護団体「パンセラ」でピューマの保護を統括しており、ナショナル ジオグラフィックのエクスプローラーでもある。

意外な生物も

 ピューマの獲物をテーマにした研究では、昆虫より大きい動物が取り上げられることが多い。エルブロック氏による以前の研究も、39種の鳥類や哺乳類が死骸に群れていたことを明らかにしている。その中には、アメリカグマ、シロアシネズミ、ステラーカケスといった動物が含まれていた。

 科学者たちは今回の研究では、甲虫にスポットを当てることにした。小さな世界で何が起こっているのかを知るには、捕まえやすく特定もしやすい甲虫がちょうどいいからだ。

 興味深いのは、主に植物を食べると考えられているゾウムシ科の甲虫が見つかったことだ。エルクやシカの胃の中にあるものをあさるためにやってくるのかもしれない。

 ナメクジやカタツムリばかり食べる甲虫も見つかった。このような虫は、死骸の下から大量に見つかることが多い。それだけではない。エルブロック氏は、「暖かい時期なら、死骸がウジに埋もれていたかもしれません」と言う。

 こういったことはいずれも、死骸がたんなる食料ではないことを物語っている。そこには、無脊椎動物の生態系が丸ごとできているのだ。

「死骸は虫たちのすみかなのです。そこで繁殖相手を見つけたり、子どもを育てたり、捕食者から隠れたりしています」とエルブロック氏は話す。

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