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迫りくる台湾をめぐる米中危機

3/13(水) 12:15配信

Wedge

 台湾をめぐる米中の対立は、本欄でも何度も指摘してきた通り、高まる一方である。こうした事態に懸念を示す、最近の論説、社説の中から、米外交問題評議会のリチャード・ハースによる2月15日付け論説を中心にご紹介する。同論説の要旨は、以下の通り。

 米中外交は、米国は「中国は一つであり台湾は中国の一部であるという中国の立場」を認識する(acknowledge)とする、3つのコミュニケ(1972年、1978年、1982年)を基礎としている。1979年の台湾関係法には、米国の台湾へのコミットメントが明記されている。3つのコミュニケと台湾関係法が相まって、米国の「一つの中国政策」の基礎をなしている。

 この構造は、勝利の方程式となってきた。中国は世界第二の経済大国にまで発展し、台湾も経済発展と民主化を遂げた。米国は、地域の安定、中台双方との緊密な経済関係により利益を得ている。

 問題は、時間が尽きつつあるのではないかということだ。長年、米国の政策立案者は、台湾が独立その他、中国に受け入れられないことをしないか、懸念してきた。台湾の指導者は理解しているように見える。ただ、彼らは「一国二制度」による統一を拒否している。

 しかし、今や、安定は米中双方により危機にさらされている。中国経済の鈍化は習近平を脆弱な立場に置き得る。習が、国民の目を経済成長の鈍化から逸らすために外交政策、とりわけ台湾問題を使うことが懸念される。習は今年1月、台湾併合を目指す考えを繰り返し、そのために武力行使を排除しないと述べた。

 米国も、過去40年間機能し続けた外交的枠組みを守らないようになってきている。ジョン・ボルトン安全保障担当補佐官は、就任前、ウォール・ストリート・ジャーナル紙に、「一つの中国政策を見直す時だ」とする論説を寄稿している。トランプも、米大統領(あるいは同当選者)として、1979年以来初めて台湾の総統と直接話をした。

 最近、5人の共和党上院議員が、ナンシー・ペロシ下院議長に、蔡英文総統を米議会に招くよう求める書簡を送った。そんなことをすれば、米台間の非公式の関係と矛盾し、中国の強い反応を招く。

 政府内外の多くの米国人が中国に強いメッセージを送ることを望み、そうすることで失われるものはほとんどない、と信じている。

 この計算が正しいかどうか、全く明確ではない。中国の経済制裁、軍事力行使が行われるような危機が起これば、2300万の台湾人の自治、安全、経済的繁栄が危機に瀕する。中国にとり、台湾危機は米国および多くの近隣諸国との関係を破壊し、中国経済にダメージを与えるだろう。

 危機により、米国は台湾への支援を求められ、それは新冷戦あるいは中国との紛争に繋がり得る。といって、台湾の自助努力に全て任せるという判断は、米国の信用を損ね、日本の核武装、日米同盟の再考に繋がりかねない。

 関係者全てにとり、リスクが高くなっている。相手にとって受け入れられないような象徴的な一歩を避けるのが最善だ。現状維持には欠点があるが、一方的な行動、きちんとした解決策の伴わない状況打破の企てよりは、はるかにマシである。

出典:Richard N. Haass,‘The Looming Taiwan Crisis’(Project Syndicate, February 15, 2019)

 上記論説でハースが言っていることは、3つのコミュニケと台湾関係法に基づく「一つの中国政策」が40年間機能してきたのだから、今後ともそれに従って各当事者が自制すべきである、ということである。

 フィナンシャル・タイムズ紙も、2月19日付け社説‘Taiwan tensions call for restraint from big powers’において、米国による台湾への武器売却、米海軍艦艇による台湾海峡の通過、台湾への武器売却の継続と当局者の交流を求める「アジア再保証イニシアティヴ法」など一連の米国の動きを「中国は刺激的だと見ている」とする一方、中国の台湾併合への熱意はこれまでになく高まっている、として各当事者に自制を呼びかけている。

 自制は重要だが、米国の「一つの中国政策」の枠組みが今後も有効であるのかは、検討を要する。中国が台湾を併合する意思は一貫しているが、今や、中国は軍事大国であり、台湾併合のために武力行使を排除しない、と明言している。米中双方が危機を作り出しているというが、やはり中国の責任が重いのではないか。米国が強い態度をとり中国を抑止することの方が「現状維持」に資すると思われる。米国の最近の対中強硬姿勢は止むを得ないと言うべきであろう。上記フィナンシャル・タイムズ社説が挙げているような、米国による台湾支援強化の措置は、ますます強化されると考えられる。ちょうど、2月下旬にも米海軍の艦艇が台湾海峡を通過したばかりである。

 蔡英文の米議会への招聘については、ワシントン・ポスト紙のジョン・ポンフレット元北京支局長が2月18日付の論説‘China’s Xi Jinping is growing impatient with Taiwan, adding to tensions with U.S.’で、中国を怒らせるとする専門家の見解と、それほどでもないとする専門家の見解を紹介している。

 米国の対応で、むしろ最も心配すべき点は、トランプ大統領が、台湾問題が米中の間でカードとなり得ると解釈され得るような発言をしてしまうことであろう。トランプは、そういう不用意な発言をする傾向があるので、注意を要する。

岡崎研究所

最終更新:3/13(水) 12:15
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