ここから本文です

【月刊『WiLL』(4月号)より】NHKへの公開状 ―― 「NHKサン、ソレハトーサク、トーヨーデス」

3/14(木) 11:34配信

WiLL

類似度判定

 現在、大学では、論文や報告書の盗作・盗用を防止し、摘発するため「類似度」判定を行っている。つまり、教員や研究員の論文などをデータとして入力し、コンピュータ・プログラムで解析して類似度を判定し、盗作・盗用があるかどうか客観的に判断するのだ。
 出典を明記しているのなら、それに基づいている部分は、類似度が高くても許される。だが、いろいろ枝葉をつけてごまかしても、根幹の部分が他の研究者の研究に依拠しているものなら、それはアウトだ。また、出典を明示したうえで他の研究者の著作を参照し、引用することはできるが、その部分はあくまで“従”、その研究者独自の主張が“主”でなければならない。
 盗作・盗用と判定された場合、教員や研究員は、よくて停職、だいたい懲戒免職となる。マスコミにもよく取り上げられるが「罰が厳しすぎる」という反応はあまり聞かない。以上のことを前置きして本題に入ろう。

「暗号名チューブ・アロイズ~原爆投下・秘められたチャーチルの戦略」が、NHKBS1スペシャルで今年の一月二十七日に放送された。
 これは、その二年半前の二〇一六年七月から七回に分けて私が『新潮45』に連載し、去年の九月に本の形でまとめた『原爆 私たちは何も知らなかった』(新潮新書)が存在するために、類似度において「アウト」判定を下すだろう。「だろう」というのは、NHKのほうは映像と音声で、私のほうは文字情報という違いがあるからだ。
「ルドルフ・パイエルスとオットー・フリッシュによる原爆原理の発見」「イギリスの原爆開発」「イギリスの原爆開発ノウハウのアメリカへの移転」「カナダの原爆開発への参加」「ケベック協定」「ハイドパークメモ」「チャーチルの原爆投下への同意」「ニールス・ボーアの原爆の国際管理の提唱」「チャーチルの合意のもとのハリー・S・トルーマン大統領の原爆投下決定」……その他のキーワード、キーコンセプトを類似度判定プログラムに入力していくならば、完全に「アウト」の類似度を示す。
 番組は拙著の枠組みとアイデアを実に忠実にたどっている。しかも、これまでNHKの原爆番組がこれらに触れたことは、記憶する限りでは、ない。
 この番組には英米の研究者が出演しているが、この番組に登場する研究者が語っていることは、彼らオリジナルの知見ではなく、私を含め、別の研究者がすでに論文や著書で書いたことを彼らに語らせているにすぎない。
 英米の歴史ドキュメンタリーでは、登場する研究者は彼らオリジナルの知見を述べ、他の研究者の知見を述べることはない。番組の視聴者は、それを出演者独自の知見だと思うので一種の盗作になってしまうからだ。
 したがって、NHKのこのやり方は、他の著作物を引用することなく、いかにも番組独自のものと見せかけるために開発した「独自技術」だといえる。

《続きは本誌にて》

有馬哲夫(早稲田大学教授)

最終更新:3/14(木) 11:34
WiLL

記事提供社からのご案内(外部サイト)

WiLL

ワック

2019年08月号
6月26日発売

定価900円(税込)

こんな記事も読まれています

あなたにおすすめの記事

Yahoo!ニュースからのお知らせ