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ピエール瀧逮捕にファン騒然。議論を呼ぶ「作品封印」。有名人の不祥事にはどう反応するべきなのか?

3/14(木) 15:30配信

HARBOR BUSINESS Online

 お気に入りのアーティストやクリエイターに不祥事が発覚した……。そんなとき、受け手側のファンはいったいどのように彼らの作品と付き合っていけばいいのだろう?

◆ファンを困惑させるアーティストの不祥事

 3月12日深夜、ミュージシャンで俳優のピエール瀧が薬物の使用容疑で逮捕されると、インターネット上は騒然とした。

「ショック……」

「出演作はお蔵入り?」

「電気グルーヴの夏フェス出演はどうなる?」

 薬物使用への憤りを発散させるコメントや、エキセントリックなキャラクターで知られるミュージシャンなのだから驚かないといったものまで、意見はさまざま。

 こうした薬物使用だけでなく、近年はエンタメ界での不祥事に対して、厳しい視線が向けられている。「#MeToo」がいい例だが、社会全体でポリティカル・コレクトネスが叫ばれているのも、その一因だろう。有名人の不祥事や失言はメディアで大きく取り上げられるだけでなく、SNSを通じてファンの間でも議論が巻き起こる。

 差別や偏見、格差が原因でなかなか声を上げることができなかったマイノリティを守るうえで、こういった社会的風潮は喜ばしいことだ。

 また、こうした流れを受けて、当時は表沙汰にならなかったり、問題とされていなかった行動や発言が、今になってあらためて注目されることも珍しくない。

◆ファンはどう受け止めるべきなのか?

 しかし、それは同時に今まで闇に埋もれていた事実に光が当たることを意味する。アーティストやクリエイターの知られざる闇が暴露されれば、それだけショックを受けるファンも増えているのだ。

 今回のピエール瀧容疑者のような、犯罪という事例であれば、司法によって裁かれて刑を終えればまだ気持ちの区切りはつけやすい。

 しかし、より難しくなってくるのは、人種差別的発言や児童虐待、未成年への性的暴行などのケースだろう。非倫理的な度合いが高かったり、ファン自身が「差別される側」の属性だった場合、ファンの“正しい”反応とは、いったいどのようなものなのか。それまでのように応援する? もう一切作品を鑑賞しない……? 過去の作品はお蔵入りにするべきなのか?

 たとえば、日本でも大ヒットを記録し、本年度のアカデミー賞を最多受賞した『ボヘミアン・ラプソディ』。監督のブライアン・シンガーには未成年への性的暴行疑惑が浮上しており、受賞スピーチでも彼の名前が挙がることは一切なかった。

 シンガー監督は撮影終了の数週間前に降板したものの、クレジットにはしっかり名前が載っており、作品も予定どおり公開された。しかし、ヒットの陰で複雑な思いを抱いているファンは少なくない。

 ただ、一方的に業界から抹殺されることで社会復帰や更生への道が閉ざされてしまう可能性は否めないのは間違いない。

◆人気R&Bミュージシャンが未成年を洗脳

 音楽業界では、人気R&Bミュージシャン、R・ケリーが性的暴行罪で起訴されたことが波紋を呼んでいる。過去にも未成年との淫行疑惑がささやかれてきたR・ケリーだが、決定打となったのは、今年1月に公開されたドキュメンタリー『SURVIVING R. KELLY』だ。

 その内容は未成年と結婚、性行為を無断で録画、少女たちを家族から引き離して寝泊まりさせていたといった衝撃的なもの。同番組での関係者たちの生々しい証言がキッカケとなり、R・ケリーは起訴されることとなった。その直後には、セリーヌ・ディオンやレディ・ガガ、チャンス・ザ・ラッパーといった過去にR・ケリーと共演したスターたちが、楽曲の取り下げを訴えている。

 R・ケリーに関しては、昨年、性的暴行疑惑に抗議する「#MuteRKelly」というハッシュタグも誕生していた。この抗議運動を受けて、大手ストリーミングサイトSpotifyはプレイリストからR・ケリーの楽曲を削除。しかし、それが検閲行為に当たるのではないかと批判が起こり、のちに「間違っていた」と謝意することとなった。

◆影響力の大きい人物の場合、存在を無視することは難しい

 日本国内でもファンの多いR・ケリー。ミュージシャンや音楽ライターからも失望や困惑の声が挙がっているが、数多くのミュージシャンに楽曲提供をしているだけでなく、ジャンルの歴史に大きな影響を与えているだけに、その存在を完全に無視することはできないという意見も出ている。

 ドキュメンタリーが公開されて、過去の疑惑が取りざたされているのはR・ケリーだけではない。今月3日と4日には、米ケーブルテレビ局HBOでマイケル・ジャクソンの児童虐待疑惑をテーマにした『Leaving Neverland 』なる番組が放送された。

 放送前から『ニューヨークタイムズ』が過去の児童虐待疑惑をまとめた記事を掲載、マイケルの遺産管理団体がHBOを訴えるなど話題を呼んでいたが、はたしてどのような決着を迎えるのだろう?

◆過去の人種差別行為で大炎上

 映画界では、先月ベテラン俳優のリーアム・ニーソンが大炎上した。ニーソンは最新作のプロモーションインタビューで、約40年前、友人女性が黒人にレイプされと知って、報復を試みたことがあると告白。事件が起きた直後、黒人が喧嘩を売ってくれば「殺してやれるのに」と、棍棒を持ってうろついていたと語ったのだ。

 ニーソンはその行為が間違っており、恥ずべきことだとして例に挙げたのだが、人種差別だと批判が殺到。レッドカーペットの出演もキャンセルされ、俳優としてのキャリアが終わったという意見も出ている。

 さらに、ニーソンの炎上事件に関連して、『ガーディアン』には「ジョン・ウェインの人種差別、同性愛嫌悪に驚くべき?」という記事も掲載された。

◆作品封印でも盲信的擁護でもなく……

 この記事によると、‘71年に行われたインタビューで、ウェインは「白人至上主義を信じている」「(同性愛者が主人公の)『真夜中のカーボーイ』は2人のホモの話だ」など、現在であれば考えられない暴言を発していたという。

“移りゆく社会情勢に照らし合わせて、映画のヒーローを変化させることは必須だ。ウェインが作った映画の多くは、完全に人種差別的な理念に則っており、非白人文化に汚名を着せ、アメリカは白人のものであると主張している”

 単に「そういう時代だったから」の一言で済ませてしまうは間違っているというわけだ。注目したいのは、この記事は決してウェインの出演作を発禁・検閲しろとは主張していないところだ。

 有名人の不祥事が起きたときは、作品を封印して「なかったこと」にしがちだ。また、「嫌なら観るな(聴くな)」と短絡的な結論に至る人も少なくない。しかし、それでは本当の意味で社会が、我々が前進しているとは言えないはずだ。

 居心地は悪いかもしれないが、少し立ち止まって、どう付き合っていけばいいのか、何が問題なのかを考えてみることが大切だ。

<取材・文/林 泰人 写真/時事通信社>

ハーバー・ビジネス・オンライン

最終更新:3/14(木) 15:30
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