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大手テクノロジー企業が打ち出した「有意義な時間」の“罠”

3/15(金) 19:11配信

WIRED.jp

2018年2月上旬に開催された、あるテクノロジー・カンファレンスでのこと。聴衆の前に立ったテクノロジストのトリスタン・ハリスは、「95カ条の論題」を発表するマルティン・ルターのごとく、iPhoneを掲げてみせた。

デジタル機器の利用は、ウェルビーイングにとって本当に「悪」なのか?

壇上のハリスは、スロットマシンやカルト教団を引き合いに出しながら、スマートフォンの危険性を警告した。そして、そうした危険からわれわれを解放するための団体「Center for Humane Technology」の設立を発表したのだった。

メインストリームとなった「有意義な時間」

ハリスがこの運動を始めたのは数年前のことだった。元グーグル社員だった彼は、テック企業の製品設計が、わたしたちをデヴァイスにくぎ付けにし、そこから利益を得ることを目的にしていると気づいたのだ。

ハリスに言わせれば、それは「注意関心の危機」だった。

彼はいま、われわれ全員の目を覚まし、テック業界の支配者たちに対策を講じさせたいと考えている。彼は自身の急進的な運動に「Time Well Spent(有意義な時間)」という名前までつけた。

それから約1年が経ったいま、ハリスが掲げる価値観はメインストリームとなった。

アップルは、iPhoneという罠から人々を解放したいと考えている。グーグルは「JOMO(Joy of missing out)」、つまり「見逃すことの喜び」を感じてもらいたいと願っている。

フェイスブックですら、画面を見て過ごす時間を管理できる独自ツールを開発している。マーク・ザッカーバーグは18年の自己目標にハリスの運動とまったく同じ「有意義な時間」を掲げた。

スマートフォンを見ながら過ごす時間を減らすべきだというのが、シリコンヴァレーの総意になったのだ。

マーケティング要素となった「デジタルウェルネス」

しかし、だまされてはいけない。

一見すると、革命は勝利に終わったように見える。だが、これはスマートフォンの画面を植民地化するための戦争の始まりにすぎない。

グーグルやアップル、フェイスブックといった企業たちは、注意散漫を誘うデヴァイスからユーザーを解放する鍵を引き渡したように見える。しかし、これらの企業は実際にはもっと重要な何かを勝ち取った。テック企業はこのムーヴメントを取り込み、「デジタルウェルネス」をトレンドに変え、マーケティングとして機能させているのだ。

フリーダム(Freedom)のCEOフレッド・スタッツマンは、「運動はこの1年で大きく前進しましたが、どれだけやるべきことがあるかも教えてくれました」と話す。同社は、アプリやウェブサイトをブロックすることで、画面を見る時間を管理する手助けをしている。

「わたしたちはいま、デジタルウェルビーイングがマーケティングに利用されるという厄介な状況にあります。企業が開発するツールは、ブランドイメージを向上させ、過去の罪を償うための手段に見えるのです」

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最終更新:3/15(金) 19:11
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