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寝ながらスマホで寄り目に? 若者に斜視急増

3/17(日) 10:12配信

NIKKEI STYLE

若者を中心に「急性内斜視」の患者が増えている。片方の黒目が内側に向き、物が二重に見えるようになる。スマートフォン(スマホ)の長時間使用による影響が懸念される。発症のしくみや治療法を知ろう。
一方の目の視線が鼻側に寄る「内斜視」のうち、生後6カ月以降に突然発症するものを急性内斜視と呼ぶ。これまでは症例が極めて少なく、大半が原因不明だった。
浜松医科大学医学部の佐藤美保教授によると、以前は年間2~3人だった同大学付属病院の急性内斜視の患者数が、3年ほど前から10人を超えている。患者の急増は全国各地の病院で見られ、学会でも急性内斜視に関する研究発表が目立ってきたという。
主な症状は物が二重に見える「複視」だ。急性内斜視に特有で、生まれながらの内斜視では見られない。他の人に寄り目を指摘されることで、初めて内斜視になっていると気付くケースもある。
斜視は、眼球を動かす働きを持つ筋肉と密接な関係がある。日ごろ物を見るときは、眼球を内側に向ける「内直筋」と外側に向ける「外直筋」などの筋肉が、左右の目の視線を合わせている。
近くを見るとき、通常は内直筋が縮んで眼球を内側に寄せ、「寄り目」の状態で焦点を合わせようとする。急性内斜視になると、内直筋が縮んだままとなり、遠くを見ても寄り目が戻らなくなる。すると両目の視線が一致しなくなり、物が二重に見える。片目を隠すと見え方のダブりはなくなるが、物の遠近感や立体感がつかみにくい。
発症の引き金とみられるのがスマホの使いすぎだ。スマホはパソコンよりも目に近い位置で画面を見るため、長時間凝視すると内直筋が収縮したままになりやすい。
患者のほとんどは10~20代。佐藤教授は「黒板の文字が二重に見えることで勉学に支障が出て、不登校になるケースもある」と話す。患者が若年層で増えたのは「大人に比べてスマホの連続使用時間が長いためと推測される」。

ただ、中高生へのスマホ普及と患者数増加の時期は重なるが、因果関係はまだはっきりしていないという。2016年には、スマホの長時間使用と急性内斜視の関連についての論文が韓国から発表された。国内では日本弱視斜視学会(大阪府茨木市)と日本小児眼科学会(同)が連携し、急性内斜視の患者とデジタル機器に関する調査を現在進めている。
梶田眼科(東京・港)の梶田雅義院長は「成人でも急性内斜視は発症する。特に近視の人がなりやすい」と注意を促す。近視だとスマホ画面を極端に顔に近づけがちで、寄り目になりやすい。裸眼だと視界がぼやけるため、複視を自覚しづらいという。
急性内斜視を発症した場合、複視の症状は特殊な屈折レンズを使ったプリズム眼鏡で矯正できる。「寄った目を休ませると、戻ることもある」と梶田院長は話す。ボツリヌス菌が作り出す成分を注射することで、内直筋をまひさせて緩める治療もある(保険適用)が、一度では治らない場合もあるという。「どうしても治らない際は、手術で内直筋の位置を変えることもある」
日ごろから気をつけたいのはスマホの使い方だ。スマホを見るときは、画面を目から30センチメートル以上は離す。使用中も「10分に1回は、3~4メートル離れたところを見るとよい」(梶田院長)。ベッドやソファで寝ながらスマホを見ていると、画面に目を近づけがちになるので避けたい。
多くの人にとってスマホは日常生活に欠かせないツール。何時間も続けて使うのを控えて、目にかかる負担を減らすよう心がけたい。
(ライター 仲尾匡代)
[NIKKEIプラス1 2019年3月9日付]

最終更新:3/17(日) 12:15
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