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ロンドン在住のHIV患者、幹細胞移植成功で「治癒」

3/17(日) 11:30配信

Rolling Stone Japan

英在住の2人のHIV感染者が、遺伝子療法を促す骨髄移植後に体内からウイルスが消えたという。これは、ネイチャー誌に掲載されたHIV治療法だが、一般的な適用に警告を発する科学者もいる。

過去40年に渡り、研究者らは必死にHIVの治療法を模索してきた。今ではHIV感染者に抗レトロウイルス治療が施されているものの、高価な治療薬は多くの人にとって手が届かない。また今回新たな症例報告がネイチャー誌に掲載されるまでは、これまでウイルスを体内から完全に除去する方法は見つかっていなかった。

同症例報告によると、ロンドン在住のあるHIV感染者への「CCR5-delta 32」の幹細胞移植が成功したという。CCR5-delta 32は突然変異した珍しい遺伝子で、HIVによる免疫システムへの攻撃を妨げる場合もあるとされている。患者は2012年に非ホジキンリンパ腫と診断され、主治医らは、健康な血液細胞を生成するための遺伝子療法を勧めていた。幹細胞移植後、患者は抗レトロウイルス治療を中止しているが、18か月間に渡り体内にウイルスが見られないという。

患者の身元は明らかにされていないが、同様の治療を受け成功した2例目だった。1例目は、“ベルリンの患者”ことティモシー・ブラウン。彼は2008年に今回と同様の骨髄移植を受けて話題になった。以降彼は、HIVから解放された生活を送っている。

「同様の治療法を採用した2人目の患者にも寛解が見られたことで、ベルリンの患者が例外的なものでなかったことが証明された。この治療法が2人の患者からHIVを取り除いたのだ」と、ユニヴァーシティ・カレッジ・ロンドンの感染・免疫部門の教授で、本研究を主導するラヴィンドラ・グプタはCNNに語った。

幹細胞移植がHIV/AIDSの“治療”と報じている場合も多いが、完全に正確な表現とは言えない。今回の患者はわずか18か月の間、HIVが見られないというだけだ。患者が完治したと主張するには、グプタ教授の説明による期間では短かすぎる。さらに、骨髄移植には多くの合併症が伴うため、ほとんどのHIV/AIDS患者にはリスクの高い治療といえる。(事実、2度の骨髄移植を余儀なくされた前出のブラウンは、2度目の移植後、ほとんど麻痺状態になってしまった。)

それでも研究者たちは、特に抗レトロウイルス治療は高価で全てのHIV感染者に適用できないため、今回の治療法が世界中にいる3700万人のHIV感染者の先例となって欲しいと期待している。

「広く適用可能な治療法とはいえないが、HIVの治療法を探る上でとても重要な事実だ」と、国際エイズ学会のアントン・ポズニアク会長は言う。「これら新たな症例により、“HIVは治療可能”という我々の信念を再認識できた。最終的には、遺伝子技術や抗体法を使った安全で費用対効果が高く、かつ容易な治療法につながることを期待する。」

米国立衛生研究所の国立アレルギー・感染症研究所のアンソニー・フォーシ所長は今回の治療法を、一般に広く適用可能で手軽な治療法だと考えてはいけない、と警告している。「正直に言えば、皆に即適用可能な治療法だとは思わない」とフォーシ所長は、骨髄移植に5~10%の死亡率があることを指摘する。「実際的な適用可能性から言えば、今回の治療法を、毎日1錠の薬を飲み続けているHIV感染者の誰にも適用可能な一般的方法だと思って欲しくない。適用性は低く、リスクが高い。」

「今はとても効果的にウイルスの活動を抑圧し、感染者は普通の生活を送れている」とフォーシ所長は言う。「私に言わせれば、1日1錠の薬を飲み続ける方が、骨髄移植に比べてはるかに良い」

Translated by Smokva Tokyo

EJ Dickson

最終更新:3/17(日) 11:30
Rolling Stone Japan

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