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【ボクシング】井上尚弥が告白した ボクシング人生最大の苦悩

3/18(月) 17:34配信

ベースボール・マガジン社WEB

 WBA世界バンタム級チャンピオンの井上尚弥(大橋)が「ボクシングをやめようか」とまで落ち込んでいたと明かした。17日、WOWOWでIBF世界ウェルター級戦の解説と伊藤雅雪との対談収録を終えたあとの囲み会見で答えたものだ。

井上尚弥、伊藤雅雪の防衛戦を WOWOWが5月に生中継

「見ていたみなさんも、アレって思ったんじゃないですか」

 2月16日、横浜の大橋ジム。WBSS準決勝を5月18日、イギリスのグラスゴーで行うことを正式に発表した後、公開したスパーリングのことだった。スーパーフライ級の世界ランカー、石田匠(井岡)を相手に4ラウンド、井上は大振りのパンチで強引な攻めばかりにはやっていた。それでも、あちこちにその強さは見えたが、試合まで3ヵ月もあるというのに、井上には満足どころか、救いの一片さえも見えていなかったという。

「自分がやりたいこと、その気持ちに体が全然ついていかなくて。ぐちゃぐちゃでした。あのあと、これまでで一番にへこんで。ボクシングをやめようかなと思ったりしていました」

 もしかすると、焦りがあったのかもしれない。昨年、ジェイミー・マクドネル(イギリス)を初回KOで破って3階級制覇を成し遂げた。初防衛戦戦で手練れのベテラン、ファン・カルロス・パヤノ(ドミニカ共和国)を倒すのにやはり3分とかからなかった。日本国内のみならず、世界的にも爆発的な評価を勝ち取ったと同時に、練習で体得したものを実地でごく一部しか試せなかったのだ。慢心に走ることなく、強くなることに誠実に向き合っているからこその苦悩である。大チャンピオンがさらなる大チャンピオンになる。そういう道程に出くわしたスランプは、あるいは必然だった。

 ただ、井上は井上だった、もっとも賢明な方法で、迷いのるつぼから抜け出したという。

「スパーリングをやめました。グアムでの走り込みキャンプがあったり、気分も変わってきました。ジムにもなるべく行かないようにして、ボクシングから離れたんです」

 心のオーバーワークを、現実から一歩退くことで解消する。できるようで、なかなかできない。「うまくいかない」思いばかりが積もり積もって、いよいよ気持ちをゆがめていく。なおさら練習、スパーリングこそが、育まれていく自らの強さのただひとつのかすがいと思い詰めた男である。そこまで思い切れたことが素晴らしい。集中力に長けた人間ほど、解放と発散も同時にうまく使い分けられる。

「1週間前くらいからスパーリングも再開しています。調子? 相当上がっています」

 井上尚弥の言う『相当』だ。ただごとじゃない。誰もがそう信じられる。5・18、グラスゴー。世界が新たに驚嘆する日は、そうやって刻一刻と迫っている。

ボクシング・マガジン編集部

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