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投了は近い!?「米中のAI技術」に支配されかねない日本の未来

3/19(火) 7:00配信

幻冬舎ゴールドオンライン

世界的に過熱するAI開発競争。そのなかで日本のAI開発が周回遅れになっていると、度々指摘されてきました。本連載は、囲碁AIの研究開発を行う福原智氏の著書『テクノロジー・ファースト』(朝日新聞出版)のなかから一部を抜粋し、筆者が囲碁AIの開発を続けるのなかでわかった日本のAI業界が抱える問題点について紹介していきます。今回は筆者が囲碁AI大会を通じて感じた、AI開発に遅れをとっている日本企業への危機感に迫っていきます。

世界6位に終わるも「独創賞」を受賞

2017年12月、AI竜星戦

運命の2017年12月。囲碁AI同士が戦う世界大会・AI竜星戦の幕が切って落とされた。開催場所は東京・秋葉原である。

決勝ト―ナメントに進出した15チームのなかには、私たちトリプルアイズと「レイン」開発チームが共同開発した「レインズ(Raynz)」も名を連ねている。「Rayn」に私たちの会社名「トリプルアイズ(TRIPLEIZE)」の「Z」を合体させたのが名前の由来だ。

目指すは優勝と言いたいところだが、正直そこまでは難しい。

3月の大会で2位に甘んじたドワンゴのバックアップを得ている、「ディープゼンゴ」。そして3月の覇者であり、世界企業の時価総額ランキング5位を誇る、中国・テンセントの「絶芸―ファインアート」。両者は、潤沢な予算を背景に、しっかりと開発に人員を使い、おそらくものすごい数のGPUサーバを連結することで、私たち中小企業からすれば化け物のように強い囲碁AIをつくりあげている。

大会1日目の予選では、8月の内モンゴルで破れた「ティアラン」との対決もあった。リベンジを果たしたいところであったが、またもや微妙な差で負けてしまう。「ティアラン」は結局、大会3位という結果を残したが、そんな相手に私たちは善戦したというべきか、あるいはさらに差を広げられたというべきか。答えは今後さらなる対戦をして、その結果から判断したい。私たちは「ティアラン」にこそ負けたが、他の相手には勝利を収め、危なげなく予選を突破した。

そして大会2日目の本戦。私たち「レインズ」は、決勝トーナメントで2勝し、ベスト4入りを現実的な目標にした。初戦の相手は奇しくも東北学院大学の武田先生が個人で開発した「マル(Maru)」だ。先に述べたように、武田先生は私たちの囲碁AI開発の恩人だ。

審判を務める酒井猛九段による「始め」の合図で勝負がスタートした。

「レインズ」は危なげなく初戦を突破した。

続く第2戦、勝てばベスト4という天王山の相手は、あの「絶芸―ファインアート」だった。ここでは当たりたくない相手だった。

勝負は静かに始まった。

序盤は悪くなさそうである。

だが中盤になるにつれてPCモニタに表示される勝率予測の数値が下がっていく。それから盤面が進むごとに形勢は悪化した。残念ながら逆転することは叶わなかった――。

2017年の挑戦はそうして終わった。

最終的に6位だった私たちだが、複数のGPUを効率的に利用する分散技術と学習手法が評価され、独創賞を獲得した。私たちは、12コアのGPUを2つ搭載したサーバに、12台のGPUサーバをぶら下げるかたちで、合計13台のサーバを、「NUMAプログラム」を主とする分散処理技術を用いて制御していた。8月の内モンゴル大会で感じた、6台しか制御できなかったという事態の雪辱を無事に果たし、それが評価されたわけである。

[図表]AI竜星戦2017の模様

大会結果は次のようになった。

優勝「絶芸―ファインアート(Fine Art)」テンセント・中国

2位「ディープゼンゴ(DeepZenGo)」ディープゼンゴ・プロジェクト・日本

3位「ティアラン(Tianrang)」Tianrang・中国

4位「AQ」山口祐・日本

5位「アバカス(Abacus)」清華大学・中国

6位「レインズ(Raynz)」Rayn×トリプルアイズ研究開発チーム

7位「アヤ(Aya)」山下宏・日本

8位「きのあ囲碁」Qinoa・日本

9位「ディープアーク(Deep_ark)」HEROZ囲碁チーム・日本

10位「マル(Maru)」武田敦志・日本

なお世界最強と目される「アルファ碁」は、この大会には不出場だった。2017年5月、世界最強の棋士である柯潔(カケツ)九段に3連勝し、開発者のデミス・ハサビス氏は「人間との対局はこれが最後」と宣言していた。

そして、すでに「アルファ碁」は最強の囲碁AIでさえなくなっていた。このAI竜星戦が行われる2カ月前、人を介した学習を一切おこなわずに自力で強化学習して進化し、「アルファ碁」と100戦して100勝を果たした「アルファ碁ゼロ」が登場していたのだ。ディープマインド社が、世界の向こうでまた一つブレイクスルーを果たしていた。

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最終更新:3/19(火) 7:00
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