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ネット炎上と同じ構造? あなたの会社の役員会議で「愚かな判断」が下されるワケ

3/20(水) 6:21配信

NIKKEI STYLE

■ありえない結論になった役員会

「そんなの、ありえないですよ!」。上司から役員会の報告を聞いて、思わず口走ってしまいました。私がある企業で経営企画部門のマネジャーをしていたときの出来事です。

業績悪化に伴い、社長からコストダウンの指示が出され、そのとりまとめを担当することになりました。2週間かけて各部門と折衝を重ね、ようやく7%のコストダウン計画ができました。その資料を上司の取締役に渡して、役員会に諮ってもらったのです。

ところが、役員会の結論は、「15%のコストダウンを目指す」というものでした。こうなってくると無理を通りこしてムチャです。品質基準を緩めるなど、不正まがいのことをやらないと、到底達成できません。一体、役員会でどんな議論をしたのか、上司に尋ねてみました。

各部門の担当役員には根回し済みなので、滞りなくプレゼンは進み、特に意見も出なかったそうです。ところが、社長の「この程度で会社の危機が乗り切れると、君たちは本当に思っているのか?」という一言で、空気が一変してしまいました。

「そうは言っても……」と誰かが弁解しようものなら、「できない理由ではなく、できることを考えろ」と言われ、黙らざるをえません。そのうちに、「だったら、ウチはさらに1%上積みします」と威勢のよい役員が現れ出し、列車に乗り遅れまいと次々と他の人も……。

そうやって、根拠のない数字を足し合わせると、提案の2倍以上の15%に積み上がった、というのが事の顛末(てんまつ)でした。「みんながやるというのを、止めることなんかできないだろう」「ああするしか、重苦しい雰囲気から逃げる手はなかったんだ」というのが上司の言い訳でした。

■有能な人たちが愚かな決定をしてしまう

会議とは、多様な意見を持った人が集い、いろんな角度から問題を検討し、よりよい意思決定をするためのものです。ところが、会議にかけることで、個人では到底ありえない結論を導いてしまうことがあります。「集団浅慮」(グループシンク)と呼ばれる現象です。

心理学者I・ジャニスは、太平洋戦争、朝鮮戦争、ベトナム戦争、キューバ危機など、米国が直面した危機的な状況における政策決定の経緯を調査しました。そのなかで、判断の誤りや意思決定の失敗などが、なぜ起こるかを分析してこの現象に行き当たりました。

興味深いのは、当時の米国の最も有能(ベスト&ブライテスト)な人たちの集団で、集団浅慮が起こったことです。「自分達は失敗しない」という過信が生まれ、外部からの忠告や都合の悪い情報を軽視しがちになるのが原因だといわれています。

集団浅慮は、冒頭のケースのように、場を支配する強いリーダーがいるときに、起こりやすくなることが知られています。リーダーによい印象を持ってもらいたくて、ご意向と異なる方向の意見が出しにくくなるからです。

加えて、集団が一つにまとまろうとする力(集団凝集性)が高いときが危険です。正しい答えを選び取るより、合意形成することが目的になり、和を乱す意見が出しづらくなるからです。「全員の意見が同じ」と思いこんで、深く議論しなくなってしまいます。

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最終更新:3/20(水) 10:07
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