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日本のホエールウォッチング産業が急成長、米報告

3/20(水) 11:32配信

ナショナル ジオグラフィック日本版

クジラに対する意識は「食べる」から「見る」へ、でも商業捕鯨も再開へ

 クジラに対する日本人の興味はどうやら、食べることよりも、見ることへと移りつつあるようだ。ナショナル ジオグラフィックは、米国の国際動物福祉基金(IFAW)が調査し、来年発表を予定している世界のホエールウォッチングに関する報告書の内容をいち早く入手した。

ギャラリー:世界のクジラの仲間たち 写真14点

 日本のホエールウォッチング産業は1980年代から存在するが、近年になって勢いを増している。IFAWの統計によると、2015年までの7年間で、ホエールウォッチングに参加する人の数は4万人以上増加している。IFAWは、参加者の3分の2は、外国人旅行者ではなく、日本の人々と推測している。

 新たな観光資源を得たことで、ツアー会社などの収入も増加した。IFAWによると、日本のホエールウォッチング産業の2015年の売上高は約9億円で、着々と成長しているという。

 IFAWで海洋保護を統括するパトリック・ラメージ氏はしかし、ホエールウォッチングの人気が高いからといって、反捕鯨運動が盛んになっているとはいえないと指摘する。日本人が突如としてクジラを愛し、保護を主張するようになった、と考えるのは「過大評価」だと、彼は言う。「しかし、日本の観光産業において、クジラおよびイルカウォッチングに焦点をあてた分野が大幅かつ着実に伸びているというのは、注目に値します」

日本の捕鯨は「調査」から「商業」へ

 日本は2018年12月、国際捕鯨委員会(IWC)からの脱退を発表している。1986年、同委員会は加盟88カ国に対し、商業捕鯨を禁じて、限定的な科学調査目的の捕鯨のみを許可することを決めた。IWCからの脱退は、日本が自国の沿岸水域で、監視されることなしに捕鯨を行えるようになることを意味する。

 1986年以降も、日本は科学調査という名目のもと、国際水域での捕鯨を続けていた。しかし2014年、国際司法裁判所は日本の調査捕鯨計画について、科学調査を目的とする捕鯨とは言えないとする判決を下した。

 それでも日本は、2016年に南極大陸沖で300頭以上のミンククジラを捕獲。2017~2018年の捕鯨シーズンにも、300頭以上のクジラを捕獲した。「日本は商業捕鯨の一時禁止の取り決めと、国際的な意思を長年にわたり軽んじてきたのです」と、ヒューメイン・ソサイエティー・インターナショナル会長のキティー・ブロック氏は述べている。

 一方で、日本の鯨肉産業は縮小を続けている。2012年にIFAWが行った世論調査によると、2011年には、日本人の88パーセントが鯨肉を購入していなかった。また『ジャパンタイムズ』紙は2014年、日本人1人の鯨肉消費は年間わずか約30グラムだと報じている。これは全員分を合わせると最大約5000トン、およそミンククジラ830頭分となる。国際自然保護連合(IUCN)は、ミンククジラを種として危機にあるとは認定していないが、IWCによると、「J-Stock」と呼ばれる、日本沿岸沖を含む北太平洋に生息するミンククジラの群れの個体数は懸念される状態にあるという。

 英国の保護団体「ホエール・アンド・ドルフィン・コンサベーション」の研究者で、2014年に設立されたホエールウォッチングツアーの業界団体「日本クジライルカウォッチング協議会」のアドバイザーでもあるエリック・ホイト氏は、鯨肉は現代の日本人の感性にぴったりフィットしているとは言えないと述べている。ただし、これは必ずしも日本人が道徳的観点から捕鯨や鯨肉食に反対しているからではない。「そう考えるのは的外れです」とホイト氏は言う。

 鯨肉への需要は低いにもかかわらず、日本は捕鯨産業に補助金を出し続けており、また日本の保護団体「イルカ&クジラ・アクション・ネットワーク」によると、鯨肉の貯蔵量は、競売で売却を図っていてもなお、増加を続けているという。

 ホエール・アンド・ドルフィン・コンサベーションの捕鯨プログラムマネージャー、アストリッド・フックス氏は、IWCを脱退すると日本が決めたのは、「主に政治的な理由」だと述べている。

「捕鯨をなんとしても守ろうとするごく一部の強硬な人々が、捕鯨を延命させてきました」とラメージ氏は言う。「一方で日本の人々の感覚は変化を続け、クジラを食べることにも興味を失っていったのです」

 菅義偉内閣官房長官は、日本の意図を持続可能な商業捕鯨の拡大であると説明している。「わが国は、古来、鯨を食料としてばかりでなくさまざまな用途に利用し、捕鯨に携わることによってそれぞれの地域が支えられ、また、そのことが鯨を利用する文化や生活を築いてきました」

 日本がIWC脱退を発表した後、ラメージ氏など一部の保護活動家は、この決定によって同国の捕鯨市場は消滅するだろうと期待を寄せた。「クジラにとってはすばらしいニュースです」とラメージ氏は言う。日本政府が調査捕鯨への補助金を終了させたなら、捕鯨産業は市場原理にさらされるようになると、ラメージ氏は考えている。

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