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EUは崩壊するのか?混在する悲観論と楽観論

3/20(水) 12:42配信

Wedge

 3月29日の英国のEUからの離脱、いわゆるBrexitを控え、欧州問題を考えてみたい。EUは、現在、Brexit以外にも様々な問題に直面していることは、ご存知の通りである。EU諸国がそれらの諸問題を解決し、新たな未来を開いて行くことができるのか。欧州の将来に関しては、悲観論と楽観論が混在する。

 悲観的な見通しについては、例えば、2月18日付のウォールストリート・ジャーナル紙に掲載された米国バード大学のウォルター・ラッセル・ミード教授の論説がある。彼は、「EUは、1991年の旧ソ連のように崩壊する」と警告するジョージ・ソロスの指摘を引用している。しかし、この予告は、悲観的に過ぎると思われる。

 EUが掲げてきた理想はすでに実現不可能になった、EUは失敗したプロジェクトであるなどと断言するのは、時期尚早であると思われる。

 人間が作った社会制度は、作った後は、壊すのもなかなか大変である。だから、崩壊もなかなかしないと見た方が良い。当初の目標が実現されなくなっても、なんとか続いていく例が多い。

 ましてEUは、既にその創設時にから拡大・深化し、巨大な官僚組織であるEU委員会、EU本部、EU議会、EU司法裁判所等を有す。これらに従事するヨーロッパ人は多く、EUの理念以上に、これらの組織を破壊する方が、ほぼ無理である。

 英国に関しては、EUから離脱するということで、メイ首相は頑張っているが、離脱協定は議会で通らず、合意なき離脱の経済的コストが明らかになる中、英国の離脱の行方も不透明になっている。2016年のBrexit派が勝利してから、この3月29日にBrexitの期限が来るが、英国とEUとの離脱交渉は、結局、民主主義の源の英国議会で否決され、合意なきまま、離脱延期がなされるだろう。英国の国境管理は既に始まっているが、EU諸国内の雇用は、3月29日以降もそのままの形態で継続することが決まっている。国民投票のやり直しの話も出ては消え、消えては出てくる。

 イタリアのポピュリスト政権も、EU離脱をほのめかしているが、英国の苦労を見て、躊躇するのではないか。何よりも、EUとの交渉の難しさよりも、経済的マイナス効果は、イタリアにとって、英国以上に受け入れられない状況であろう。イタリアの憂鬱は、頻繁にイタリアの沿岸にやってくる大勢の移民問題であり、イタリアが求めるように、EU全体でもっと負担をしてあげれば、その不満は緩和されるかもしれない。

 ハンガリーやポーランドの非民主主義的な対応は、EUの基本的理念に反するものであるが、だからと言って、EUがこれら諸国を追い出すことはないし、両国とも、EU加盟で得たものは多く、自らEUを離脱することはないであろう。英国には、EU内のこれら東欧諸国の「移民」が英国人の職を奪ってしまうのでBrexitに賛成だと言う人もいる。一方、英国人がやりたがらない職を、これら移民が支えていると言う人もいる。例えば、ハンガリーの問題は、多くのハンガリー人が他のEU諸国に移り住んでしまうという問題がある。それに対して、最近、ハンガリー政府は、人口減少を懸念して、出産・子育て支援政策を打ち出した。

 EUは、結局、移民への対応その他多くの問題を抱えつつも、存続して行くものと思われる。

 EU内の独仏連携は、EUの礎石であるが、今のところ、しっかりしているとみておいてよいであろう。マクロン大統領は、2017年に大統領に当選し任期は5年、「黄色いベスト運動」等、国内問題では悩まされているが、ドイツとの緊密な関係やEU重視の姿勢に関しては揺るぎなく支持者も多い。メルケル首相は、既に退陣の意志を明らかにしてソフト・ランディングできそうである。次期ドイツ首相も、EUやフランスとの連携重視は変わらないだろう。それは、ドイツが統一された時のドイツの生き残りの1つの道でもあった。そして、ドイツ自身、EUが拡大・深化する中で、多くの恩恵を得て来た国の1つでもある。

 EUは拡大を急ぎすぎ、異質な分子を入れすぎたきらいがある。が、それを逆転させる手立てはなく、このままで行くしかないであろう。そして、多くのヨーロッパ人は、それを受け入れている。

 欧州が世界の超大国になるというのはもともと無理な願望であったように思われるし、そう期待した人があったとしたら期待しすぎである。大きな期待を持ちすぎ、それが実現されないので、悲観的になりすぎるのは愚である。

岡崎研究所

最終更新:3/20(水) 12:42
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