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違法薬物事案で逮捕、作品出荷停止を経験した電グルファンのミュージシャン、ピエール瀧逮捕への思いを語る

3/20(水) 15:32配信

HARBOR BUSINESS Online

 電気グルーヴのピエール瀧逮捕からはや一週間。依然としてワイドショーなどはその話題で盛り上がっている。

 電気グルーヴといえば、ある年代の人間には大きな影響を与えたミュージシャンであり、SNSでもショックを受けた人、悲しみにくれた人、はたまた電気グルーヴファンならではの「ネタ」にする人など反応はさまざまだった。

 そんな中、電気グルーヴに強く影響を受けて音楽の道に進み、メジャーレーベルからデビューしたというタイミングで大麻所持で逮捕され、作品が販売中止になった経験を持つ人はそう多くはないだろう。

 今回はそんな経験を持つ、ミュージシャンの高野政所氏に、ファンとして、逮捕経験者として、作品販売中止を経験したものとしての「ピエール瀧逮捕」についての思いを寄稿してもらった。

◆面白くてかっこよくて成功してるアニキ達だった

 3月13日にピエール瀧容疑者がコカインの使用の疑いで逮捕された。

 電気グルーヴのメンバーとしてだけではなく、ラジオパーソナリティ、俳優、声優など非常に活動は多岐に渡っており、いずれも高い評価を得ていた。

 そういう自分も電気グルーヴのラジオを聴き、電気グルーヴの音楽を聴き、電気グルーヴに憧れて音楽をはじめたクチである。

 近年は瀧さんのラジオやテレビ、スクリーンでの活躍を見て、本当にすごいなーと変わらぬ尊敬をしていた。

 面白くてカッコいい音楽をやる面白くてカッコよくて、おまけに人生にも成功しているアニキ達。そう、僕にとって電気グルーヴは神様みたいな存在の一つだ。

 そういうわけで、この文章にはだいぶ私情が加味されるということをご理解頂きたいし、瀧容疑者なんて呼びたくない。だから文中では瀧さんと呼ばせて頂きたいと思います。

 また、この文章を読む中で僕の考え方とは正反対の方ももちろんいると思いますし、不快になる方もいると思いますが、「考え方は人それぞれ」という言葉の意味を深く噛み締めて頂くと同時に共感はしなくても理解はしようって感じで、温かい目で読み進めて頂くか、また薬物の話題が出てきて、不快に感じるようであれば、ますます不快になること間違いなしなので、すぐに読むのをやめる事をお勧めします。

◆「そうか、僕のときもこうだったのか!」

 僕は電気グルーヴのいちファンであり、瀧さん自身とプライベートな交流は全くなく、5年くらい前に自身がTBSラジオでやっていた「ザ・トップ5」というラジオ番組に一度ゲストで来ていただいた以来お会いした事はない。

 瀧さんの逮捕は何の気なしに見たツイッターで知った。知った瞬間に驚きで思わず声が出た。

 そして、何人かの友達にLINEで衝撃と驚きを伝える旨のメッセージを送った。深夜だったが、その日は全く眠れなかった。

 SNSに張り付いて瀧さん逮捕に衝撃を受ける人達のツイートを眺めなていた。

 自己紹介が遅れましたが、自分は高野政所という者で、クラブDJやダンスミュージックなどの音楽制作、今はステッカー屋をやっている者です。TBSラジオでパーソナリティをした時期もありますし、渋谷の道玄坂でアシッドパンダカフェというクラブの店長をしていたのですが、今から約四年前、2015年の3月に大麻所持で逮捕されて、懲役半年、執行猶予三年という裁きを受けました。

 ニュースにもなりましたので、もしかしたらご存知の方もいるかも知れません。

 SNS上ではすでに「驚いた」という意見や、落胆する意見、電気グルーヴのファンらしい一捻りある意見や、早くも復帰を望む人、薬物解禁派の擁護意見、完全に第三者の謎の上から目線で批判する人、瀧さんの何を知ってたんだか知らないけど、やたらに知った風な口調で偉そうな事をつぶやくアカウント、とくに関わりもないミュージシャンの「ダサい!ダサ過ぎる!」みたいな思考停止したバカバカしい批判など…とにかくタイムラインの全てがこの「ピエール瀧コカインで逮捕」関連で一色だった。特に僕がフォローしている人の属性もあるだろうけど、ほとんどの人がこの事について発言していた。

 とにかくみんながみんな瀧さんのこの逮捕について何かしら好き勝手にTwitterに書き散らしていた。

 昔は、世間では大事件があった時、テレビや新聞でその事件を知って、せいぜい知人や友人と好き勝手な意見を言い合うくらいが関の山だったんだけど、ネットの普及で全ての人達の街中での会話程度の意見が文字として可視化されるのが今の時代だ。憶測やデマや批判や悲しみ、怒り、単なる野次馬根性などが、ごちゃ混ぜになった壮大な井戸端会議が日本中で、しかも無数に起きて、それが目に見える形になっている。

 知人から「政所くんの逮捕の時も、そっくりな状況だったのを思い出した。」とメッセージが来たところでハッとした。

「そうか、僕の時もこうだったのか」と。

◆SNSで好きなように書かれるショック

 自分の時は怖くてSNSなんか見られなかったけど、実際これを体験したら気でも狂っていたかも知れない。

今の所、瀧さん本人は弁護士との接見や、面会者からの伝聞でしか、外界の情報が入らないはずなので、目に入る事はないだろう。もちろんぼくが今書いているこの記事も。

 これは経験から言うけども、ある程度知名度のある人が不祥事をやらかした直後は絶対エゴサーチとかしちゃダメ、絶対!

 特に初犯の場合は「そんな事する人だと思わなかった」系の勝手な人物像を作られて勝手に落胆され悪意をぶつけられるパターンも多発するので精神健康を保つためにはSNSは見ない事。

 そうしたら案の定、瀧さんの逮捕の話がTwitter上で拡散していく中で、僕の名前も引き合いに出されてはじめた。

 僕もテクノ的な音楽をやっていて、クラブDJで、同じラジオ局で番組に出ていたということで、規模と知名度は天と地との差ながらも、割と似たような方向にいたわけで、当然、引き合いに出されてもおかしくない。

 同業のDJ達やアーティスト達もTwitterでそれぞれの意見を発する中で、僕も何か書くべきなのだろうか、と考えあぐねた挙句、逮捕後に自分が作った「前科おじさん」(”変なおじさん”の抑揚で発音)という逮捕後にヤケクソになって作った楽曲のPVのURLを貼り、「シャバからは以上です」とだけ呟いた。

 そしてそれは、それなりな拡散をした。

◆逮捕後、当たり前にあったものが一気になくなった

 下手な事を言いたく無かったし、あんまり蒸し返されるのもなぁ、という気持ちもあった。

 逮捕後、店長をしてたクラブも閉鎖、仕事が減り、メジャーで出していたアルバムも速攻で出荷、配信停止。収入なし。

 当たり前にあったものが一気になくなった。

 いまや部屋の更新費用に窮している状況の我が身からすると、もしかしたらこれで多少は仕事のオファーがあるんじゃないかな?なんて、邪な気持ちもないわけでは無かった。

 でも実際にそれで生きている身には切実だ。

 人に知って、気にしてもらえないと、我々みたいな人間には仕事がないからだ。とはいえ、今の日本では「僕は大麻の経験がある前科持ちのミュージシャン/DJです!仕事ください!」で仕事が来る場合なんてない。

 過去に俺の人柄を知っている人からくる仕事や、純粋に音楽に関する技術的な部分で評価してくれる人からのオファーで細々とやっているし、それだけじゃ食えないからステッカー屋をやったりして、なんとかして生きている。

 で、この原稿依頼は数少ない「前科者だから来る」仕事の一つというわけだ。

◆違法薬物をやって逮捕されるのは割に合わない

 とにかく逮捕される事は今の日本社会においてデメリットが多過ぎて、ぼくは今まで大麻や違法薬物について聞かれると「割に合わない」とだけ答えてきた。

 どっちにしても、薬物事犯での前科持ちなんて、どこの誰にも歓迎されない。

 それだけ逮捕されると人生は変わってしまうのだ。

 逮捕されてからその手の噂はやたら耳に入ってくるようになった。

 ぶっちゃけて言えば、各業界で表向きは「ぼくは薬物とかは無縁」と言ってる人も大麻や薬物を割とカジュアルにやりながら、ちゃんと普通に仕事をして社会生活を送ってる人がいるのも知ってるし、「くそー!俺と同じ大麻吸ってたのに、順調にやりやがって!こいつ一回逮捕されりゃーいいのに!」みたいなのもいないわけではない。

 でも誰かは絶対に言わない。

 俺が逮捕された時にボロクソに批判してた奴ですら薬物経験はある。

 逮捕されたらその人達の人生が一変してしまうからだ。しかも確実に悲惨な方向に。

◆禁止されていようがやる人はやる

 薬物は禁止されてようが、されてなかろうがやる人はやるもんだと思っている。

 信じられないかもしれないがそういうものだし、あなたがファンのミュージシャンや俳優もやってる可能性なんてゴマンとある。

 薬物系の犯罪は留置場の中であった「本職」のおじさんも割りに合わないと言っていた。

「コッチ系(薬物系)の逮捕は被害者がいないから、一番馬鹿馬鹿しいし、割りに合わないんだよ。俺らは人を傷つけたり、騙したり、悪い事やるつもりで悪いことやってるから、捕まってもそれ相応の覚悟ができてるんだ」という話を聞いてなるほど、と思ったものだ。

 瀧さんの逮捕の翌日、ぼくがさらに驚いたことがあった。

 瀧さんが取り調べで「コカインや大麻を20代からやっていた」と供述したらしい。

 これはすごい事だと思う。

 逮捕されたら当然、できるだけ印象をよくして、罪を軽く済ませてもらいたいから、動かぬ証拠がない以上は、わざわざ自分が不利になるような事は言わないのが普通である。

 しかも、コカインだけでなく、大麻も!

 変な話、ここでまた瀧さんに勝手に親近感を感じたというのも事実だ。

◆大麻や違法薬物について改めて考えたこと

 しかし、このニュースが出回って思わぬ方向に話が展開した。

 今までの世の中なら「瀧の野郎、若い頃から薬やりまくってたのか!とんでもねえ悪人だ!」となる所が、「え!そんなに若い頃から長いことやってたのに、ちゃんと社会生活を送ってて、しかも、アカデミー賞とかNHKのドラマに出演するような立派な俳優をやれてたの? 実は違法薬物も用法、容量を守っていれば別に問題ないんじゃね? それに瀧さん、直接人に危害加えてるわけじゃないし、迷惑かけてたわけじゃないし別に悪くなくね?」という論調が現れたのだ。

 まさに似たような疑問を僕も抱いていたことがあって、何年か前に俳優の高知東生さんが覚せい剤で逮捕された時にやはり、20年近くやっていたという話を聞いて、その時に「え?20年シャブやってて、普通に生活して俳優として仕事してたってマジ?別に大丈夫な人は大丈夫なんじゃね?」と思ったことがあったのだ。

 で、このタイミングだから、ぶっちゃけていってしまうが、拙書「前科おじさん」の中ですら書かず、警察の取り調べでも言わなかったことだ。

 正直、僕も20代から大麻を使用していた。

 辞めていた時期もあったんだけど。

 で、その後にやっぱり違法なことはよくないよな、捕まらない方がいいよな、と思って当時、市場に流行りはじめた合法ハーブと言われていた脱法ドラッグにハマっていた時期があった。

 脱法ハーブも出始めの頃は、本物の大麻と同じような感覚の効き目で、これで捕まらないなら安心だなー、なんて思っていたのだけど、規制がどんどん入って、その規制を逃れるために成分が変わっていって、訳の分からないモノが混入していたりとかで、「捕まらないのはいいけど、なんかこれ、体に悪くねえ?やばくね?」という感じになっていった。

 割と死ぬかも?と思う体験もして、こりゃマジでやめとこう、と、脱法ドラッグもやめた。

 これは30歳半ばの話。

 その後に脱法ドラッグは規制とのイタチごっこに突入して、第五世代とかになって人が死んだり、マジで頭おかしくなっちゃう奴があらわれて、殺人事件や交通事故が起き、「危険ドラッグ」という呼称に変わって厳しく取り締まられ、今ではこっちの方が入手が難しいらしい。その頃の脱法ドラッグの成分はほとんど覚せい剤だったらしい。

 そして、その頃、吸うものがなかった僕はなんとタバコを吸い始めた。

 30にしてたばこデビュー。

 実は20代は僕は酒もタバコもやらなかった。たまに大麻をやる程度だった。タバコは結局今もやめられていない。

 そして、脱法ドラッグをやめた僕は体の事を考えた末に、また違法であるところの大麻を使うようになったのだった。

 酒が飲めなかった僕にとっては非常に重要なストレス解消の手段でもあり、音楽に対する感覚があがることも良かった。

 やはり脱法ドラッグよりも大麻を吸ってる時期のが体調も悪くならないし、調子が良かった気がする。

 大麻を使っていること自体で、特に誰にも迷惑をかけて無かったし、仕事もきっちりやっていたはずだ。いろいろ順調だった。

 でもあの日を境に変わってしまった。

◆逮捕ですべて変わった。でも僕の人格は変わっていない

 2015年、3月5日、渋谷道玄坂で僕は大麻所持で逮捕された。

 ああ!しまった!と後悔しても遅かった。

 仕事は失うし、収入ないし、腫れ物に触るような感覚で接せられるし。

 会ったこともない顔も知らない人にSNSで罵られるし。

 大麻が違法じゃ無かったら、また今は違う人生になってたかもなぁ、と今でも良く思う。

 それでも、別に逮捕前も逮捕後も僕の人格には一切変わりがない。それでもそのレッテルはついて回るのだ。僕が良い人かどうかは別としても、それは瀧さんも同じで、逮捕される前もされた後も瀧さんは瀧さんだと思う。

 瀧さんの人柄がすごく良かったという話を一緒に仕事をしていた芸能人の方やスタッフが口々に言い始めている。それがニュースになっているのも見た。

◆世界の大麻合法化の流れに感じるもの

 話は大麻に戻ってしまうが、僕の逮捕経験から活動自粛期間を経て現在、カナダ全土や、アメリカの多くの州をはじめ、ヨーロッパや、南米、アジアといった日本以外の多くの国々で医療用大麻や嗜好大麻が解禁されていく。

 最近じゃお隣の韓国まで医療大麻が解禁である。

 複雑な気持ちだ。僕は法律を破って逮捕されたけど、ほんとに悪いことをしたのか、反省しようにも世界が「やっぱり大麻っていいものだから解禁しようや!」という流れが実際にある訳である。

 違法なものは割に合わない。

 でも大麻も悪いとは思わない。

 これが正直な気持ちだ。

 で、今はどうかというと、酒を飲むようになった。

 じつは逮捕後に酒が飲めるようになった。

 もちろん飲み過ぎれば頭が痛くなったり、体調を響くこともあるけど、なにしろ酒はいくら飲んでも逮捕されないのが良い。

 でも、あんまり身体には良くない気もする。

 僕の嗜好品の歴史は、20代で大麻、30代前半ででたばこ(と脱法ドラッグ)、40代で酒という流れで普通の人とは違う流れである。

 たまたまコカインなどのケミカルドラッグ系は僕の目の前に現れなかっただけかも知れないし、瀧さんに関しては、そういう意味でも大先輩だったのだなぁ、と思うと今回の逮捕は本当にいたたまれない気持ちでいっぱいだ。

 コカインをはじめとするケミカルドラッグ系については僕も不勉強でよく分からないので、「コカインは悪くない!」とは言えないのだが、似たようなもので、用法、容量を守ればあまり問題はないのかと思う。

 でも、今の日本では、ひとまず目の前にあり、合法である酒とたばこをやるしかないわけである。

 なんども言うけど、違法薬物での逮捕は割に合わない。

 ピエール瀧さんの事を書くつもりがほとんど自分語りになってしまい申し訳無いが、ダメ、絶対!麻薬は何が何でも絶対的に悪!という刷り込まれた考えから解放されることは、これからの世界においては結構重要な事だと思う。

 2020年の東京オリンピック、海外から沢山の人たちがやってくる。

 おそらく日本の法律を知らないで普通に大麻を持ち込んで日本で吸う人たちも沢山いるはずだ。そんな人達で日本の警察署の留置場に溢れかえる日が来るかもしれない。

 どうなるんでしょうね? 日本の違法薬物問題。

 とにかく、僕は昔からもこれからも電気グルーヴ、およびピエール瀧さんのファンであることは変わらない。

 出てきたら”逮捕されることがないハードドラッグ”である「お酒」で乾杯しましょうよ!(図々しい電気グルーヴファン、高野政所より)

 追伸、私事で申し訳ないのですが、ユニバーサルミュージック様、もう、4年経つのでそろそろ配信停止になっている僕のアルバムやミュージックビデオを配信再開を検討していただけませんでしょうか?

ご一考ください。

 DJ JET BARON こと 高野政所より。

たかのまんどころ●1977年生まれ。DJ。テクノユニット「LEOPALDON」のリーダー。別名「DJ JET BARON」。日本における、インドネシアのダンスミュージック「ファンコット」の伝道師としても知られる。またTBSラジオの番組『ザ・トップ5』でのレギュラーパーソナリティを3期に渡って担当。2014年12月にメジャー・ファーストアルバム『ENAK DEALER』をリリース。2004年から2015年まで、クラブ「ACID PANDA CAFE」の店長を務めた。2015年3月に大麻所持で逮捕。翌年8月、逮捕時の体験をまとめた手記『前科おじさん』(スモール出版)を上梓。

ハーバー・ビジネス・オンライン

最終更新:3/21(木) 1:58
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