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<WSBK> タイ、灼熱の後日談

3/21(木) 3:30配信

webオートバイ

プールの中のファン・デル・マーク

 古くは「コンチネンタルサーカス」なんて呼ばれたレース活動。正式にはワールドグランプリ(今でいうMotoGPですね)転戦を指す言葉だったけれど、今ではもちろんMotoGPだけでなく、ワールドスーパーバイク(=WSBK)も同じこと。GPと同じく、ヨーロッパだけでなく、アジアやアメリカも含めて転戦するのは、ヨーロッパだけでなく、アルゼンチンやインドネシア、中国も転戦するモトクロスの世界グランプリにも当てはまりますね。
 そのWSBK、今週末に灼熱のタイ・ブリラム大会を終えています。現在、レースの各ラウンドを終えて、メーカーやチームからオフィシャルのニュースリリースが出されるのは当たり前ですが、ヤマハのWSBKチームから一風変わったレポートが出されたのでご紹介。タイトルは「サウナで生き残るために」。サウナとはもちろん、高温に悩まされたタイ・チャーンサーキットのことです。

 タイ・ブリラムでのレースは、いまのWSBKのカレンダーの中でも、ほかの大会とは違う課題を突き付けてきます。気温は40℃に迫り、路面温度は60℃にまで達します。ピットからレースを見ているだけでも、たくさん水分を摂らなきゃいけないし、たくさんの着替えも必要。ではヤマハのライダーとヤマハYZF-R1は、この過酷な状況での20周のレース、しかもそれを2回、それに10周のスプリントレースを、どうやって生き残ったのか、紹介しましょう。

ブレーキとエンジンが重要。マシンの熱対策

 一般的に、レーシングマシンは熱に弱いものです。これがタイ大会での一番大きな問題ですね。いくつか問題があって、それを調整するのが難しいんです。
 まずはブレーキ。高い気温と、2本のストレートからのハードブレーキングを要求されるチャーンサーキットは、フロントブレーキの限界を超えて攻めたててきます。そこで我々は、この過酷な状況でブレーキングパフォーマンスをきちんと発揮させるべく、タイではいくつかの変更を施しています。
 アレックス・ロウズとマイケル・ファン・デル・マークは、フロントフォークのボトムケースに、カーボンファイバー製のエアダクトを取り付けています。これにより、いつもはフォークの陰に隠れて走行風を受けにくいキャリパーに、圧のかかった走行風を導入します。
 他チームは過去にこのシステムを使用していますが、うちのチームは以前は使用していなかったものの、ブレーキングはどんどんハードになり、ラップタイムも上がっている今、必要なものになりました。今では、うちのシステムが全チーム中いちばんエレガントなんじゃないかな、と思います。エレガントなYZF-R1に合わせてね。
 さらに、通常より厚いブレンボ製ディスクローターも使用しています。厚くなる=体積が増えると、温度上昇も穏やかになりますからね。厚くなることで重量が増えるのはネガティブポイントですが、このコースではブレーキ性能が一定であることの方が優先されますから。
 スチール製のディスクローターの温度は、円周部分に塗った感温ペイントでモニターしています。3色のペイントを使用して、グリーンなら430℃、オレンジなら560℃、そして赤だと610℃まで退色しない。でも、レース後には、その赤さえ完全に褪せてしまいます。つまり我々は、このローターを600℃オーバーで運用しているんですね。ピットにマシンが入って来た時には、メカニックたちはすごく注意しないと!
 このコースでは、ブレーキ管理は本当に重要なんです。走行セッションが終わるたび、メカニックたちはキャリパーをチェックし、ブレーキフルードは変更、あとはブレーキパッドやディスクローターが完全な状態であることをチェックしないとね。
 エンジンはもっと厳しい熱管理を必要とします。冷却水とエンジンオイルをきちんと管理しておかないと、エンジンパワーも失われるし、耐久性にも問題が及ぶことになります。冷却水が高温になるのがひとつの大きな問題ですが、これはライイダーたちが走行中に頻繁に使用する「スリップストリーム」が引き起こすこともあります。他のライダーの背後について走行風を避けることは、空気抵抗を減らしてトップスピードは上がりますが、これはバイクにフレッシュエアが入ってこないことでもありますからね。
 我々のYZF-R1は、最高の冷却水とラジエター、オイルクーラーを使用していますが、この「熱対策」が完璧にできることは簡単ではありません。このレースでは、ラジエターコアガードを取り外すことで、エアフローが少し改善されましたが、これは飛び石でラジエターが破損する可能性も高くなるわけで、うちのライダーやライバルたちの安全性の観点からも、あくまでも最後の手段なんです。
 そのため、我々はラジエターにいかに空気を当て、上手くそのエアを抜くか、ということを重要視しています。カウルは、エアを取り入れる前面をタイトに密閉して、エンジン周辺にたくさんエアが流れるようにレギュレーションに沿ってモディファイ。これは、エアロダイナミクスという点ではベストではありませんが、冷却はもっと重要な優先事項ですからね。
 さらに冷却水も気泡がないように常に気を付け、エンジンオイルも定期的にフレッシュなMOTUL300Vに交換します。
 ここまでやって初めて、我々はヤマハYZF-R1表彰台に押し上げることができたのです。

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最終更新:3/21(木) 5:05
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