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「ウンチのお団子」差し出されたら? 認知症500万人、過度に恐れず共生する方法

3/21(木) 11:11配信

NIKKEI STYLE

私たちは「認知症」を過度に恐れてはいまいか。

最近のニュースでも、高齢ドライバーによる交通事故と認知症との関わりが、しばしば取り沙汰される。ところが、80代のドライバーが引き起こした事故の発生率は、20代前半のそれとほとんど変わらない。実際には10代のほうが、80代の2倍近くも交通事故の加害者になっている。

私は1980年代末から断続的に認知症の取材をつづけてきて、はっきりいえることがふたつある。第1に、認知症患者をとりまく環境は、以前に比べてはるかによくなっている。第2に、認知症のほぼ8割を占めるアルツハイマー病の解明や治療への道も、徐々に展望が開けてきた。

とはいえ、認知症の一般的なイメージは、相変わらず“恐怖”や“絶望”に覆われていよう。現在、国内に500万人いるとされる認知症の人々にどう向き合うか。かくいう私自身、認知症で我が子の名前さえすっかり忘れてしまった母を看取(みと)った経験がある。

■軋轢受け入れる

身近な認知症患者への接し方をわかりやすく説いた本を、まず2冊あげよう。平松類著『認知症の取扱説明書』(2018年、SB新書)は、タイトルに違和感を持つ方もおられようが、「暴力」や「失禁」「徘徊(はいかい)」など「よくある困った行動」への対処法を、事細やかに述べた良書である。高齢者から急に免許証を取り上げると、認知症の発症率が上がるといったデータには、思わずはっとさせられる。

吉田勝明著『認知症は接し方で100%変わる!』(17年、IDP出版)も、よく読まれている近刊書である。たとえば「いいものがあるから、あなたにあげる」といわれて、「ウンチのお団子」を差し出されたらどうするか。それは認知症の人が「自分一人でつくりだした宝物」なのかもしれない。だから「ありがとう」と受け取るのがよいという。

ここに典型的に表れているのは、認知症の人の側に徹頭徹尾寄り添おうとする立場である。これこそ私が認知症の取材を始めた30年ほど前には欠けていた姿勢だ。

社会学者の木下衆氏は、『家族はなぜ介護してしまうのか』(19年、世界思想社)で、現在を「新しい認知症ケア時代」と位置づける。その特徴は、「患者の過去」がその人らしさを保つ上で重視される点や、「真面目で、意識の高い介護家族」の存在である。

それゆえ家族がよりよい介護を目指すと、患者の過去、つまりその人の人生を自分は本当に知っていたのかと反省を迫られるメカニズムに組み込まれてしまう。あるいは、自分が患者を一番よく知っているとみなし、他の介護者との軋轢(あつれき)が生じがちになる。だが、それらを「当たり前」かつ「仕方がない」と受け入れよう。こうした著者の精緻な論考に頷(うなず)く読者は多いはずだ。

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最終更新:3/21(木) 18:55
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