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北朝鮮は韓国の仲介にもはや期待していない

3/21(木) 6:15配信

JBpress

 (武藤正敏・元在韓国特命全権大使)

 北朝鮮の崔善姫(チェ・ソンヒ)外務次官は3月15日、一部の海外メディアや外交官を集めた会見で、「われわれはいかなる形でも米国の要求に譲歩する気はないし、そのような交渉には関わりたくない」と述べた。さらに、ミサイルや「人工衛星」を再び発射する可能性について、「実験の猶予を続けるかどうかは金委員長の判断次第。近く決定するであろう」と述べ、非核化交渉に関する声明を近く発表すると明らかにした。

崔善姫外務次官はハノイで開かれた米朝首脳会談の際にも緊急記者会見を行った

 北朝鮮は中、ロ、国連大使を急きょ平壌に呼び戻しているので、今後の交渉への対応ぶりについて真剣に検討していることは間違いないであろう。

■ 文在寅大統領の「勘違い」

 文大統領が、この会見のニュースを聞いたのは、東南アジアを歴訪し、カンボディア首相との首脳会談中であった。文大統領は北朝鮮とも国交のある東南アジア諸国を回り、北朝鮮への働きかけを促していたのであろう。帰国後、文大統領は国家安保室から報告を受け、協議を行ったが、これを踏まえた大統領府関係者の反応は、「今度は南北間で対話する順番」であり、「われわれに渡されたバトンをどう活用するか悩んでいる」と述べ、あくまでも北朝鮮との仲介役にこだわる姿勢を示している。

 しかし、冒頭の会見で崔次官は、「文大統領は朝米対話のため苦労しているが、南朝鮮は米国の同盟者であって、『仲裁者』ではない」と語り、文政権が仲介役を果たすことに否定的な立場を示しており、韓国の片思いぶりが鮮明になっている。

 南北朝鮮の考えに溝が生じている最大の原因は、文大統領の「勘違い」にある。文大統領は、金正恩国務委員長の味方をし、代弁をすれば、米朝間の仲介者となって、「新朝鮮半島体制」の主役になれると考えている節がある。

 しかし、金委員長にとって文大統領と対話を行う意味は、文大統領を通じトランプ大統領に北朝鮮の意向を説得してもらうことである。それにはトランプ大統領が文大統領を信頼していることが不可欠である。なのに、文大統領は「金委員長と連携すればトランプを動かせる」と勘違いしている。一方のトランプ大統領は、文大統領が北朝鮮の非核化の意思を強調するのとは裏腹に、「北朝鮮は非核化に前向きに取り組んでいない」と疑っている筈である。

■ 北朝鮮の非核化意思は固いと思いこませようとした文大統領

 そもそも、米国が米朝首脳会談に応じるようになったのは、昨年3月、南北首脳会談の結果を報告するため鄭義溶国家安保室長が訪米し、トランプ大統領に金正恩氏の非核化への強い決意を伝達し、「金委員長はできるだけ早くトランプ大統領に会いたがっている」と伝えたのが発端である。トランプ大統領は、その場で米朝首脳会談開催を決意した。

 しかし、トランプ大統領が米朝会談の開催を即断した意図は、米国の中間選挙に向けて手柄を立てたいからであった。その後の交渉で北朝鮮は非核化に消極的なのが明らかになり、ハノイでの首脳会談で、北朝鮮が老朽化した寧辺の一部の施設の廃棄の代わりに制裁の主要な部分の解除を求めてきたことが「北朝鮮に非核化意思がない」と判断する決め手になった。こうした状況では、北朝鮮に挑発を再開させないことが重要であり、制裁緩和を急ぐ必要はない。韓国の説明が誤りであったことは明らかである。米国が、北朝鮮に対し、一切譲歩することなく会談を切り上げてきたのはこのためである。

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最終更新:4/13(土) 1:25
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