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出生前診断で「判明」、それでも私が産んだ理由

3/21(木) 11:00配信

東洋経済オンライン

■「この子の将来を考えるためにも診ましょう」

 「正直、当時はお腹の子どもに聞きたかったですね。『お前は生まれてきたいのか?』って」

 お菓子を夢中で頬張る倖太くん(5歳)を見つめながら話すのは、父親の矢口貴史さん(44歳)だ。

 母親の紀子さん(41歳)が、36歳のとき、妊娠9週目の健診で医師から首のむくみを指摘され、精密検査を受けることになった。そこで胎児にはダウン症の多くの特徴が認められ、「ダウン症でほぼ間違いないだろう」と言われたという。

 確定させるために出生前診断を勧められたが、矢口さん夫婦は一度、その申し出を断っている。

 「最初から何があっても、産もうと話していました」と貴史さんは、すっきりとした表情で話し出した。

 「だから出生前診断を受ける意味はないのかなと思い、一度は断りました。でも先生に『ダウン症であれば、出産後に合併症が見つかる可能性が高いので、この子の将来を考えるためにも診ましょう』と言われ、受けることにしました。そうすると結果はやはりダウン症でした」

 ダウン症などの出生前診断が一般的になり、より確実に病気の有無がわかるようになっている。今から約6年前にスタートした新型出生前診断では、診断を受けたのが一部の妊婦に限られることを差し引いても、陽性となった約95%の妊婦が中絶を選択する事実も明らかになったところだ。ダウン症の「ある」「なし」によって決断する。そうした時代になっている。

 出生前診断の一歩手前、受精卵の段階で病気の有無がわかる着床前診断も広がりそうだ。日本産婦人科学会によって審査の迅速化、対象の拡大化が進められているからだ。

 私たちはいや応なく、こうした現実に直面せざるをえない状況に遭遇する。顔を背けることが厳しくなってきており、より真剣に向き合わなければいけない問題として、今後、私たちに降りかかってくることになるのは必至だ。

 胎児診断専門施設「クリフム夫律子マタニティクリニック臨床胎児医学研究所」(大阪市天王寺区)を開設した夫律子(ぷぅ・りつこ)医師に話を聞いた。

 「ここでは妊娠初期、中期、後期に分け、超音波画像による “胎児ドック”を行っています。赤ちゃんを診たうえで、妊婦の胎盤の一部を採取する絨毛検査や羊水検査を選択するかどうかも決めることができます」

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