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東野幸治が描く“トミーズ健伝説”「中1まで家の前で行水していた男」

3/21(木) 8:10配信

デイリー新潮

 東野幸治が仲間たちの秘話をつづる連載「この素晴らしき世界」。今週のタイトルは「元気が出る男、トミーズ健(1)」。

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 奇人変人だらけの吉本芸人の中でも、特に信じられないエピソードの持ち主がトミーズの健さんです。私の大好きな先輩です。

 1959年生まれの59歳。相方の雅さんと幼稚園からの幼馴染。大阪市の生野区出身でダウンタウン、ハイヒールさんと同期で、華のNSC1期生です。

 健さんは漫才ではツッコミ役ですが、テレビ出演の時は完全にボケ役(不思議なものでコンビのボケの人は普段はツッコミで、ツッコミの人は普段はボケということが多く、その典型が健ちゃん)。先輩からは「健」と呼ばれ、我々後輩からは「健ちゃん」と親しみを込めて呼ばれる愛されキャラ。先輩後輩みんなからイジられています。

 健ちゃんが一人でテレビに出る時、いつも使うギャグがいくつかあって、「キンコンカンコン健ちゃ~ん!」「う~ん、健ちゃんパウダー、おもろなくなれー」。どちらも爆笑を取っているのはあまり見たことがありません。でも、なぜだかみんな嬉しくなります。スタジオのみんながニヤニヤしています。愛されていますねぇ。西のトミーズ健ちゃん、東のダチョウ倶楽部上島さんといえば、わかりやすいでしょうか。

 健ちゃんは決して裕福とはいえない長屋育ち。お父さんは工場で、お母さんは水商売で働く共働き夫婦でした。2人兄弟の長男でしたが、中学生の時にお父さんからいきなり「一番下に弟がまだいてる」と言われ、途中から3人兄弟になりました(末っ子を養える経済力が当時ご両親になく、施設に預けていたそうです)。

 そんな貧しい境遇で育った健ちゃんの貧乏話は特別面白くて、申し訳ないけれど、私はいつも腹を抱えて笑い、元気をもらっています。悲しい話もなぜか健ちゃんが話すと笑えるのです。これは一種の才能です。

 例えば「中1まで家の前で行水」話。何度も言って申し訳ないですが、健ちゃんの実家は貧しい長屋でしたから、当たり前のように家にお風呂がない。毎日の銭湯代がもったいないので、子供達は家の前で行水をして体を洗っていたそうです。

 行水……とは、桶や盥(たらい)にお湯や水を溜めて、それを浴びて体を洗うことです。ドラマや映画で見たことのある方もいると思いますが、健ちゃんの家もまさにそれでした。まぁ、3、4歳の頃ならまだいいです。近所のオッチャンオバチャンが、

「何や、健ちゃん行水してんのんか。エエなぁオバチャンも入りたいわ」「オバチャンも入ったらエエやん」

「何言ってんの、オバチャン裸で入ったらみんな逃げ出すで」「そやな~!」

 そんな会話が飛び交っていたでしょう。微笑ましい話ですが、この行水は健ちゃんが13歳になるまで続きました。思春期になり、体も少年から青年に変化する、そんな年頃の行水。チンチンの毛が生えてくる頃でもあります。

 そんな繊細な時期、近所に住む同級生の女子が、銭湯に行くのにどうしても健ちゃんの家の前を毎日通らなければならなかったから、さあ大変。いつもそこにはクラスメートの男子がスッポンポンで、盥の中に入り体を洗っているのです。もちろん、健ちゃんも健ちゃんで辛い。

 結果、女子は出来るだけ道の反対側を下を向いて歩き、健ちゃんは女子に気がついてないフリをして、なおかつ白のブリーフを穿いて体を洗うようになったそうです。白ブリーフの上からオチンチンを洗い、女子が去ったらブリーフの中のオチンチンを洗う。とても切ない話ですが、私はその話に腹を抱えて笑いました。(続く)

東野幸治(ひがしの・こうじ)
1967年生まれ。兵庫県出身。東西問わずテレビを中心に活躍中。著書に『泥の家族』『この間。』がある。

「週刊新潮」2019年3月14日号 掲載

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最終更新:3/21(木) 8:10
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