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地球温暖化、目標達成に残された道はギャンブル

3/22(金) 7:11配信

ナショナル ジオグラフィック日本版

520万通りをシミュレーション、望みは一発逆転の技術、研究

 将来の気候について、無数のパターンを科学的に分析したところ、地球温暖化を安全とみなせるレベルに抑えられる可能性は、ほとんど残されていないことが明らかになった。

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 この研究で想定された将来の気候パターンは520万通り。2100年までに世界の平均気温の上昇を2℃未満にとどめるには、2030年までに世界中のすべての国で二酸化炭素の排出量をゼロにしなければならないという。2℃という目標は、海面上昇や猛暑といった、最悪の気候変動を避けるために、国連が定めたものだ。

 国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が2018年秋にまとめた『1.5℃の地球温暖化に関する特別報告書』では、世界的な気温上昇を1.5℃未満にとどめられる可能性がまだ残っているとされていた。

 3月11日に学術誌「Nature Climate Change」に発表された新しい論文では、3つの前提条件のもとにシミュレーションを行った。一つは、二酸化炭素の排出量削減のために投じられる資金は、世界の年間GDPの3%未満であること。もう一つは、炭素を除去するために「ジオエンジニアリング(地球の気候システムを工学的に改変する技術)」などを使わないこと。そして、大気中の二酸化炭素濃度が倍増した場合の気候への影響度は、中央値以上を想定するということだ。最後の前提は、「気候感度」と呼ばれている。大気中の二酸化炭素濃度が倍増した際に、気温が何度上昇するかを表すものだ。

 論文はこう結論づける。「将来の世代に許容できる未来を残すために、我々の世代には重大な責任があることが実証されている」

 一方で、2015年に採択されたパリ協定の締約国が協定内容を遵守した場合でも、二酸化炭素排出量は増加を続けて2030年にピークを迎え、世界の気温は3.0℃から3.5℃上昇に向かうという。

炭素除去技術はギャンブル?

 現在、世界の二酸化炭素排出量は年間400億トンを超えており、ここ2年間は増加している。一方で、国際エネルギー機関(IEA)は、3月11日、ジェット燃料や石油化学製品の需要増加に伴い、今後5年間、石油消費量は増え続けるという見通しを発表している。

 今回の論文の筆頭著者である米タフツ大学のジョナサン・ラモンターニュ氏は、2030年までに排出量をゼロにし、気温上昇を2℃未満に抑える目標を達成するのは非常に難しいと述べている。また、論文で使われている条件を前提とする場合、温度上昇を1.5℃未満に抑えられる方法はないという。

 IPCCの特別報告書も、世界の気温上昇を1.5℃未満に収めるには、工学的な炭素除去を大規模に行う以外にはないとしている。ノルウェー国際気候研究センターの研究責任者グレン・ピーターズ氏によると、大規模な二酸化炭素除去技術には、空気中から二酸化炭素を直接回収するDAC法や、バイオマスエネルギーを使って二酸化炭素を回収・分離する方法、植林などの自然を利用した方法がある。気温上昇を2℃に収めれられるシナリオは、ほぼこうした技術を使う場合だった、とピーターズ氏は電子メールで述べている。

 ラモンターニュ氏らは、「実績のない新しい二酸化炭素除去技術を大規模に導入するというのはギャンブルと同じです。失敗したら、とりかえしのつかない結果を生むことになります」と警告する。

 大規模な除去技術の実現性は低いかもしれませんが、2030年までに世界の排出量をゼロにするというのは、それ以上に難しいことではないでしょうかと、ピーターズ氏は疑問を投げかけた。そして、「あらゆる選択肢を掘り下げる必要があります、そうすれば、どれがよりよい手法であるかを判断することができるでしょう」と語った。

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