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米国の金融政策姿勢が豹変した背景は何か

3/22(金) 9:22配信

NRI研究員の時事解説

FRBの政策方針は一段とハト派にシフト

20日の米連邦公開市場委員会(FOMC)では、市場の予想を上回るハト派的な決定がなされた。参加メンバーの政策金利見通しの中心的傾向は、2019年には現状維持、つまり、政策金利引き上げなし、となった。前回昨年12月に示された2回分の引き上げから、一気に下方修正されたのである。さらに、2020年には1回分の政策金利引き上げ、2021年にはゼロ回となっており、2015年以来の政策金利引き上げ局面が終了した、との見方が示された。

一方、月間500億ドルペースで進めている米連邦準備制度理事会(FRB)の保有資産縮小策は、2019年9月末に停止することが決まった。このうち米国債は現在の月間300億ドルの削減ペースを5月から150億ドルペースに半減し、9月末で終了させる。住宅ローン担保証券(MBS)など他の資産については、月間200億ドルの縮小ペースを維持するものの、10月からは縮小分を米国債の購入に回す。つまり、保有資産に占める国債の比率を高めていくことになる。

年内の政策金利引き上げは1回程度、資産縮小策については年末時点で停止、というのが事前の市場のコンセンサスであったと思われる。これに照らせば、予想外にハト派的な決定がなされたと言えるだろう。

FRB内で勢力図に変化か

昨年末以降、FRBの金融政策は驚くほど急速に、ハト派方向へと修正されてきた。これを受けて、パウエル議長の政策運営に対する不信感も一部には広がっている。世界経済の減速、年末の株価急落などが、この「豹変」とも言えるFRBの急速な政策方針変更の背景にあることは間違いない。しかし、前回会合以降、総じてみれば、経済情勢に特段大きな変化はないように思える。また、株式市場は一時期よりも安定を回復している。

こうした点も踏まえると、FRBの豹変ぶりの背景には、FRB内でパウエル議長のリーダーシップが低下する中、ハト派を主張するグループの影響力が高まるといった、勢力図の構造変化があるのではないか。FRBは現在、2%の物価目標をより柔軟に運用することなどを含む、金融政策の枠組みの見直しを検討している。その結果は、2020年上期に公表する予定だ。これを主導するのは、クラリダ副議長だ。同氏によると、FRBは年内に開く地域会合や学会を通じて、現在の柔軟な物価目標政策の見直しを検討し、また、2重責務(デュアル・マンデート)である物価安定と完全雇用の達成に向けた戦略や手法、コミュニケーションの調整を検討するという。その結果、FRBの政策方針の枠組みは、かなりハト派方向に修正されるだろう。

昨年4月にハト派の代表格であったウイリアムズ・サンフランシスコ連銀総裁が、要職のニューヨーク連銀総裁に就任し、また9月にはハト派のクラリダ氏が副議長に就任したといった人事の変化が、FRB内での金融政策の重心を、ハト派方向へと大きく修正させるきっかけとなったとも考えられる。

こうした点を考えれば、FRBの政策方針がハト派に修正されたのは、経済・金融情勢の変化を受けた一時的なものではなく、より構造的なものと考えられるのではないか。

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