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中国全人代の報告で習近平が「危機」を認めた3つの狙い

3/22(金) 6:01配信

ダイヤモンド・オンライン

 中国の国会に相当する全国人民代表大会(全人代)が始まり、「政府活動報告」の内容に注目が集まった。習近平・国家主席はその中で「危機」を素直に認めた。その狙いは何だったのか。(フリーライター 吉田陽介)

● 習近平と李克強の 分業体制を示した「報告」

 中国の国会に相当する全国人民代表大会(全人代)は、米中貿易摩擦などの影響で中国経済の減速傾向がさらに強まったこともあり、開幕日である3月5日に李克強・国務院総理(首相)が読み上げる「政府活動報告」(以下、報告)がどのような内容になるかが注目された。

 結果、李克強は、「長年、ほとんど例がないほどの国内外の複雑で厳しい情勢に直面している」とした上で対処するための措置を述べ、全体として実務的な内容だった。

 中国の文書には、冒頭に必ずマルクス・レーニン主義、毛沢東思想、鄧小平理論、「3つの代表」重要思想、科学的発展観といった「指導思想」が書かれているが、今年はそれがなく、「習近平新時代中国特色社会主義思想」のみが書かれていた。これは、「指導思想」としての「習近平新時代中国特色社会主義思想」の権威が確立されていることを示している。

 このうち、「計画報告」(国民経済・社会発展計画)には、習近平・国家主席の「核心」としての地位を擁護するとともに、党中央の権威と集中的・統一的指導を断固として擁護するという「2つの擁護」という言葉が盛り込まれ、党中央の指導のもとに作成されたことが明らかとなった。

 一方で、昨年の実績を振り返る部分では、「経済成長率と電力消費量・貨物輸送量などの実物指標の伸びが釣り合った」と述べており、過去に李克強が経済の動きを見る上で重要な指数と述べていた「李克強指数」が登場。これは2014年に登場して以来のことで、李克強が「報告」の内容を決める過程で重要な役割を果たしているとみられた。

 「報告」はもともと国務院が作成するものだが、ここ数年は党の管理が強まり、政府の報告にもかかわらず党に関する事項が盛り込まれている。その理由として、李克強と習近平との間に確執があるからといった見方もあったが、それが一国の政策に影響を及ぼすとは考えにくい。

 中国はもともと党が政府よりも上に位置づけられ、党が司令塔の役割を、政府が具体的実務を担うという分業体制で、公式メディアが報じた「報告」の起草過程を報じた記事では、李克強が春節に一番残業し、先頭に立って報告の草稿を手直ししていたというエピソードが紹介されている。これは、党の構想にしたがって、具体的実務を担うという李克強の立ち位置を示しているものといえる。

● 「両会」は「ゴム印」ではないという メッセージを発した今年の「報告」

 「報告」は1万9300字で、昨年の報告に比べ600字ほど短くなった。「報告」の起草グループの1人である専門家が中国メディアに語ったところによると、報告自体は短いものの、人々が注目している問題が盛り込まれており、多くのネットユーザーの意見も反映させているという。これは、下々の人々の意見も重視するという中国共産党の「大衆路線」を体現しているといえるだろう。

 また、今年は議論が活発に行われたためか、「報告」の訂正は83ヵ所に上り、文字数も800字増えて最終的に2万200字となった。「財政報告」(予算案)、「計画報告」の修正箇所も60ヵ所以上に上った。

 これまで「両会」(全人代・全国政治協商会議)といえば、中央の決定事項をただ追認するだけの“ゴム印”のような存在と揶揄 されたが、ここ数年はきちんと職責を履行すべきだという声が出てきており、政権への監督、政策提言という「両会」本来の役割が果たされつつある。

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