ここから本文です

ファクトリエをちょっと厳しく応援する

3/23(土) 5:00配信

商業界オンライン

  圧倒的に海外からの輸入製品で占められているアパレル市場。国内生産率は2.4%と最早、存在自体が希少産業となりつつある国内アパレル製造業。そこに光を当てて話題を集めているお店がファクトリエだ。ライフスタイルアクセント株式会社が2012年に設立、運営し、Web販売をメインにフィッティングスペースを提供するスタイル。現在、本店的な位置付けの熊本の他に、名古屋、銀座に出店しており、海外も台北に2店舗。今回は、その銀座店をのぞいた。

 銀座といっても8丁目、新橋寄りで、しかも雑居ビルの3階。お世辞にも交通アクセスが良いとはいえない。あくまでフィッティングと来店者に向けた情報発信スペースといった印象だ。一歩足を踏み入れるとシンガー製のアンティークミシンと男女のマネキンに出迎えられる。白を基調とした壁面をベースにどこかのセレクトショップのように、取扱商品が陳列されている。お店のような感覚で商品に触れたり、フィッティングできたりとWebでは得られないことがここでは体験できる。

エレガントな靴をイメージしてしまうマドラスが手掛けたスニーカー。質実剛健な作りが伝わってくるようだ。 「永久交換保証」付きのソックスはLIFE LONG by GLEN CLYDE。条件を満たし穴が空いたら新品と交換してくるそうだ。 このファクトリエが主題とするテーマだが、「日本の工場を元気にすること」から始まって「アパレル業界の構造改革」までうたっている。これは工場の利益を確保して中間業者を介さない=適正価格を実現とのことだが、米国のエバーレーンのように、商品ごとにコスト構造がオープンになっていれば別だが、そこまでの分かりやすさはない。

 もう1つのテーマ「日本の工場を元気にしたい」の意味は何だろう。単純に精いっぱい仕事に取り組んでいる人を応援したいからか、それとも愛国心に訴えたものなのか。そのあたりにコンセプト自体に希薄さを感じてしまう。

 日本は先の敗戦を乗り越えた戦後も繊維産業が旺盛だった過去がある。それが1985年のプラザ合意を境に、そしてバブル景気がはじけてデフレ経済のスタートともに、旺盛だった国内繊維産業が、安価な海外工場へ移ってしまって今日の状況があると思う。

 これを何人の生活者が問題視しているのだろうか。食の生産地は気にするものの、服の産地を気にする人はいない。食の安全は気にしても服に対しての安全を考える人が少ないからだろう。食べ物は直接口から体内に取り込んでしまうのに、服は肌を通したところからしか感じられないからか。

 実際、服による健康被害もあまり耳にしない。せいぜい化学繊維が引き起こす皮膚アレルギーなど直接生命に関わることがないからだろう。いずれにせよ生活者が着用してみて「日本製だからこんなに心地よいのだ」というレビュー数が増えて、口コミとして広がっていくくらいになれば面白い。そうやって服の産地に対する生活者の意識が変わるところまでくれば本物だ。しかし、サイトには商品レビューの投稿項目も無くて、いくら中間業者をカットして適正価格が実現したといってもチェーンストアと比べれば、はるかに価格は高い。

 ユニクロやジーユー、無印良品でさえ商品レビューは自由に見られて購入時の検討基準の1つとして機能しているのに。工場のための適正価格を理解できた生活者だけをターゲットにして完結してしまうくらいのビジネスサイズでは、日本国内の繊維産業にパワーを加えるには物足りない。

 そして単なる日本の工場紹介サイトのままではもったいない。自己満足型から他社共感型へのスイッチを図ってみてもよいかもしれない。ファクトリエのキュレーションサイトとして「日本製」は適正価格以上にお買い得だと、生活者の洋服の産地に対する意識まで変えてしまう。そんな活動と仕組みづくりに期待したい。

磯部 孝

最終更新:3/23(土) 5:00
商業界オンライン

記事提供社からのご案内(外部サイト)

商業界オンライン

株式会社商業界

流通業界で働く人の
オールインワン媒体

こんな記事も読まれています

あなたにおすすめの記事