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「この子は伸びる」と期待して教えると。成績は向上する!「この子の学力は今がピーク」と思い込むと成績が下落!?

3/23(土) 8:31配信

教員養成セミナー

この子は伸びる! ―ピグマリオン効果

■ どうやって学級を編成しているの?
 学校では、先生同士で子どもたちに関する情報を交換し、それを日々の教育活動に活かしています。中でも重要なのは、学年が変わる時です。子どもが小学校から中学校に進学した時には、より良い指導ができるように、小学校の先生が子どもの状況を中学校の先生に伝えます。クラス編成の際にも、担任同士で子どもたちの資質や特性について情報を持ち寄り、可能な限り均等なクラス編成ができるようにしています。

 学級編成の会議では、どのようなことが話されているのでしょうか。クラスをまとめられるリーダーシップを発揮できるのは誰か、指導上特別な配慮が必要なのは誰か、不登校気味なのは誰か、一緒のクラスにすると問題を起こしかねないのは誰と誰か、そしてもちろん学力が高いのは誰か、心理面での対応が必要であるのは誰かなどです。さらに、最近の中学校では合唱祭などをクラス対抗で行いますから、ピアノの伴奏ができる子がクラスに一人は必要になります。そのため、ピアノが弾けるのは誰かということも重要な情報になります。

 このような情報を基にクラス編成を行うことで、各クラスに必ずリーダーになり得る子どもがいて、学力面でもほぼ均等になり、不登校や不適応行動などで特別な配慮が必要な子どもが偏らないようにします。一部の先生だけに負担がかからないようになるのです。


■ 期待すれば伸びる!
 さて、先生は客観的な視点に立って子どもたちを見ているはずですが、印象は人によってさまざまです。ある子どものリーダーシップの有無についても、みんなの声を聞きつつまとめる力があるとみなす先生もいれば、リーダーシップがあるもののやや独断的な面が強いと思う先生もいます。人が人を客観的に評価するのは非常に難しいことが分かります。

 もし、新しく担任を務めることになった先生が、「A君は今、成績が伸びているところだから、今後に期待できますよ」と前の担任から聞かされたらどうなるでしょうか。聞かされた先生は、A君に対して「A君、君には期待しているよ」などと言ったりはしないでしょうが、授業中に視線を向ける回数が無意識のうちに多くなったり、やや難しい問題の時に指名したりするのではないでしょうか。そうなると、A君もそれに呼応するように一生懸命勉強に励みます。結果として学力は向上するはずです。

 このように、先生が「この子は伸びるはずだ」という期待を持って教育活動に臨んだ時、その子どもの成績が期待と一致した方向に向上する現象をピグマリオン効果と言います。ローゼンタールの実験によって明らかにされた現象で、「教師期待効果」と呼ぶこともあります。ピグマリオンとは、あやつり人形を意味する言葉です。逆に、もし教師が、ある子どもの学力に関して、今がピークであると思い込んでしまうと、実際にその子の成績が低下していくことがあります。ピグマリオン効果の逆の場合で、これをゴーレム効果と呼びます。

 また、担任するクラスの中にPTA会長の子どもがいたらどうでしょうか。親がリーダーシップを発揮して保護者会をリードしている姿を見れば見るほど、その子どもも当然ながらリーダーシップがあると思いがちです。これは論理誤差と呼ばれ、本来は関係ないものを関連づけて捉えてしまう評価の誤りです。先入観や固定概念が影響を及ぼすことも知っていて欲しいです。


■ 人を見る「フィルター」に完璧な透明はない
 資質や特性について評価をする時、評価する人の無意識的な見方、いわばフィルターが大きな影響を及ぼします。子どもを見る自分のフィルターは透明だと思い込んでいても、実際は多少なりとも色がついていたり歪んでいたりするものです。それに気が付いていないことが問題なのです。完璧な透明のフィルターはあり得ません。自分のフィルターは透明に近いかどうかを日頃から見つめ、周囲の声を聞きながら場合によっては修正する努力が求められているのです。


著・監修 古川 聡(国立音楽大学音楽学部教授)
筑波大学大学院心理学研究科博士課程単位所得満期退学。学術博士(筑波大学)。

『月刊教員養成セミナー 2019年4月号』「教育心理入門」より

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