ここから本文です

マリナーズ元スカウトが見た衝撃。「イチローはすべて揃っていた」

3/23(土) 9:07配信

webスポルティーバ

 2001年、ポスティングシステムでオリックス・ブルーウェーブからシアトル・マリナーズへ移籍したイチローは、メジャー1年目にして盗塁王、首位打者、MVPを獲得する活躍を見せた。そんなイチローの活躍を早々に確信していた男がいた。彼の名はジム・コルボーン。オリックスの投手コーチを務めていた時に若き日のイチローに出会い、衝撃を受けた。その後、マリナーズのスカウトになったコルボーンはイチロー獲得に尽力。彼の存在なくして、イチローのマリナーズ入りはなかったかもしれない。

■ファン、雄星、翔平、プロ野球へ。イチローから現役最後のメッセージ

 28年の現役生活に別れを告げたイチロー。3月21日のアスレチックス戦のあと、引退会見を開き、シアトル・マリナーズへの感謝の思いを述べた。

 名古屋キャッスルホテルのロビーの柱の陰に隠れ、ひとりのアメリカ人スカウトが、携帯電話で話をしていた。そのスカウトは、大喜びで拳を振り上げた。

 ナゴヤドームでの日米野球から一夜明け、ほかのメジャー関係者たちは移動のためロビーに集合し、忙しくしていた。彼らが日米野球の架け橋をつくろうとし、集まっている一方で、柱の陰にいる男は、日米関係を最も深めることになる情報を、誰よりも先に入手したのだった。

 2000年11月10日の朝、(当時)マリナーズの環太平洋地域スカウト部長だったジム・コルボーンは、我が球団がポスティング制度での入札の結果、イチローとの交渉権を獲得したことを知った。

「思わず、『やった』と叫んでしまいました」

 コルボーンは南カリフォルニアの自宅で、その時と同じように拳を振り上げ、喜びを再現した。

「あの時はとても充実感を感じていました。イチローをシアトルに誘うため、私たちは何年もの間、いろんなことに努めてきました。彼はシアトルに来るべくして来たのです。私たちの努力を神様は見守ってくれていたのです」

 コルボーンは、イチローが無事に渡米できるよう、そして確実にマリナーズに入団できるよう、多くの時間を費やしてきた。

 90年から93年の間、オリックスの投手コーチをしていたコルボーンは、イチローが鈴木一朗として二軍に在籍していた時から、彼の潜在能力の高さに興味を示してきた。

「私は、二軍にとてもいい選手がいるというのを聞きました。その話を耳にした時、その選手は何試合か連続でヒットを打っていました。急激な成長を遂げるその選手を見に行かなくては、という衝動に駆られるようになりました」

 現場に行くと、コルボーンのイチローへの関心の度合いが、より大きなものになっていった。

「彼のバッティングをひと目見れば、人並み外れたバットコントロールと優れた流し打ちの技術の持ち主であることは明らかでした。それに、イチローはある試合で相手の執拗な内角攻めに対し、見事にライトへホームランを打ったんです。彼が前でとらえた強い打球は、かなりの飛距離が出ていました。

 そればかりかイチローは、その後の打席でも、まったく同じ要領でまたしてもライトへホームランを打ってみせたのです。その瞬間、私は心の中でいろんな想像が膨らみ、『この選手は内角の球に対してバットのヘッドを前に出し、引っ張ることができる上、流し打ちもできる。すべての要素が揃った、なんてすばらしい選手なんだ』と感激しました。

 彼が私の目の前でやってのけたことは、ロッド・カルーやジョージ・ブレッドのようなタイプの打者を彷彿とさせるほど、数少ない本当のプロのみが持つ、高い技術を要するものでした」

 コルボーンは、その日見た信じがたい光景を再度思い返しながら、首を振りつつ語り続けた。

「それを蝶の変態に例えるなら、蛹(さなぎ)になった段階。イチローがのちにすばらしいバッターへと進化を遂げる前兆であったのです」

1/2ページ

記事提供社からのご案内(外部サイト)

Sportiva

集英社

スポルティーバ
4月4日(木)発売

定価 本体1,800円+税

フィギュア特集『羽生結弦は超えていく』
■羽生結弦 世界選手権レポート
■羽生結弦 グランプリシリーズプレーバック
■宇野昌磨、髙橋大輔、紀平梨花、坂本花織ほか

こんな記事も読まれています

あなたにおすすめの記事