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マリナーズ元スカウトが見た衝撃。「イチローはすべて揃っていた」

3/23(土) 9:07配信

webスポルティーバ

 コルボーンは93年のシーズン後、アメリカに帰国して、97年シーズンにマリナーズに所属するまで、マイナーで監督を務めていた。その間、コルボーンは、日本で甚(はなは)だしく変化を遂げていく“蝶”を常に見つめていた。

 イチローは冬場、自主トレを南カリフォルニアでするようになり、近くに住んでいたコルボーンは、彼のためにノックや打撃投手をするようになった。コルボーンには、コーチとしてイチローの上達を手助けしたいという思いと、マリナーズのスカウトとしてなんとかイチローの意識をシアトルに向けさせたい、という2つの思いがあった。

 そしてコルボーンは99年、イチローがマリナーズのスプリングキャンプに2週間、特別参加できるように手配をした。

 コルボーンはその2週間が、マリナーズにとって、イチローの才能を見るいいショーケースとなることを密かに願っていた。しかし、腹痛と脱水症状により、イチローは1試合半しか出ることができず、6打席立って、1安打1三振という結果に終わってしまった。

「ルーのイチローに対する印象は、決して芳(かんば)しいものではありませんでした」と、コルボーンは当時の監督であったルー・ピネラの態度を思い出しながら語った。

「イチローが体調を崩してしまったことで、私が知る本来のイチローの姿をルーに見せることができなかった。それはとても残念なことでした。私のやるべき仕事は、マリナーズがイチローに対して興味をもつことだったので、この結果により、イチローが実力不足だと思われたのではないかと心配でした」

 しかし、コルボーン自身のイチローに対する評価は揺らぐことはなく、むしろ上がっていく一方であった。

 その2週間の間、マリナーズの練習終了後は、元メジャーの投手で、77年にノーヒット・ノーランを達成したことのあるコルボーンが、居残りでイチローの打撃投手を務めていた。

「私にはメジャーリーガー相手に10年間投げてきた経験があり、メジャーリーガーが投球に対してどのような反応をするのか知っています。私にはイチローがいかにいいバッターであるかわかっていたのです。

 ある日、アレックス・ロドリゲス(A・ロッド)が私たちの練習している姿を見て、飛び入りで参加してきたことがありましたが、彼と比べてもイチローの方がはるかにいいバッターであると、私は感じました。仮にそれがスプリングキャンプの時期であったとしても、ストライクゾーンに来たすべてのボールをうまく対処するところを見ると、やはりイチローの方が上だということは明らかでした。その時、私はマリナーズ関係者の誰かが歩み寄り、見てくれていたらいいのにと思っていました。

 A・ロッドは内角に大きな穴がありましたが、イチローには打ち返せないストライクゾーンの球はひとつもなかったのです。イチローの頭にはすべてのコースの球の軌道や動きがインプットされているのです。今まで私はそのようなバッターを見たことがありませんでした。

 私のイチローへの評価は、さらに上がりました。それと同時に、たとえメジャーの投手がどんなボールを投げたとしても、イチローなら必ず打ち返すことができる、という自信を持ちました」

 コルボーンはその後の1年半、マリナーズがほかのどの球団よりも高い入札額を払えるよう、体制づくりに時間を費やした。

 マリナーズが交渉権を獲得したことを名古屋で聞いたあの日こそ、10年にわたって思い続けたコルボーンの夢が現実になった瞬間だった。

 コルボーンの信念が正しかったことは、その後のイチローの活躍によって証明されたのだった。

ブラッド・レフトン●文 text by Brad Lefton

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最終更新:3/23(土) 9:07
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