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まったく異なる役割の仕事、どう始める? 音楽で被災地を応援するセイコー女性役員

3/24(日) 17:10配信

NIKKEI STYLE

管理職として活躍する女性が仕事やプライベート、働き方への思いを自らつづるコラム「女性管理職が語る」。今回は、セイコーホールディングス取締役の金川宏美氏です。

◇  ◇  ◇

東日本大震災から8年という歳月が流れるなか、被災地の方々の心に寄り添う活動をしたいと考え、当社では東北での応援コンサートを継続しています。私は3年前からこの「“わ”で奏でる東日本応援コンサート」の実行副委員長という立場で毎年東北に足を運び多くの出会いを得て、心が動く体験をしています。2018年7月に訪れた岩手県釜石市でもまた心に残る出会いがありました。

コンサートの前日、当時の市の広報であった方と共に市内の被災地を訪ねたのですが、復興のため全国から集まりこの地で汗を流している方々に日替わりで定食を提供している明るい食堂の女性に出会いました。

その食堂に飾られている1枚の写真。そこには震災前の旧店舗の中で撮った家族の姿がありました。写真の中のその店は流されてもうありませんが、こうして復興した食堂に人が集まり、明るく店を切り盛りする女性のイキイキとした姿を目の当たりにしてその強さに元気をもらいました。

被害が激しかった地区の一つ、鵜住居地区では、ほとんど全ての建物が流されました。静寂の中、震災後に建てられた建物の一群を見たとき、私自身を突き動かす何かを感じました。

私は長く営業という仕事に携わってきましたが、常に売り上げや利益という目に見える目標に向かって仕事を進めてきたと言えます。営業という仕事には、先輩が長く積み上げてきた仕組みがあり、そのなかで自分も成長し、マネジメントをする立場になってからは自分のカラーを意識して取り組んできました。

そうした中、3年前に音楽を通して被災地を応援するという企業の社会的責任(CSR)活動の責任者となったわけです。それまでと異なる分野でどう役割を果たせばよいのか。正直に言うと何を目標にしてよいのかがわからず戸惑いました。

また指揮する立場として、何をどのように指示すればよいのかと悩みました。結論を言えば、私が痛感したのは、現場に出て経験するしかないということです。まずは現場に行く、見る、歩いてみる、感じる、そして人と話をする。それはまさに過去のキャリアでも同じように培ってきた私の仕事のやり方でした。

釜石市を訪れた際、私たちと思いを共にしたいと同行してくださった歌手でバイオリニストのサラ・オレインさんがラグビーのW杯の会場となるオープン前のスタジアムで、日本とオーストラリアのそれぞれの国歌を突如、アカペラで歌われました。サラさんの澄んだ歌声がスタジアムにとけ込んで、その声に見えないはずの音楽の力が見えたような気がしました。

東北開催の「“わ”で奏でる東日本応援コンサート」に加え、毎年3月11日に東京で応援コンサートを開催し、被災地の皆さんと支援者とが音楽の力を通して心をつなぎ、絆を深める場を多くの人の力を借りて作り出しています。今年もまたその日がやってきました。あの日美しいアカペラを聴かせてくれた、サラさんにもご登場いただきました。新しい仕事や人との出会いに感謝しつつ、心動かせる自分であることがこの活動を続けていくという私の使命なのだと感じます。
[日経産業新聞朝刊2019年3月14日付]

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最終更新:3/24(日) 17:10
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