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【センバツ】吉田輝星と4つの共通点があった石岡一の農業系エース

3/25(月) 19:13配信

週刊ベースボールONLINE

吉田の投球フォームを参考に

 2対2で迎えた11回裏一死満塁のピンチ。ここまで強打・盛岡大付高打線を相手に、一人で投げてきた石岡一高・岩本大地はフルカウントとしてしまった。ボール球は許されないこの窮地に、スタンドからはどよめき。そして、運命の170球目を投じる前には、三塁アルプスからネット裏にかけての観衆から、手拍子が自然発生している。まるでそれは、日本ハムファンが本拠地・札幌ドームでの劣勢時に巻き起こる“後押し”とよく似ていた。

 内角で詰まらせ、やや一塁側に転がった投手前のゴロとなったが、「ここで併殺に取れば、ウチに流れがくると思った。焦ってしまった」。岩本の本塁送球は大きく逸れてしまい、あっけないサヨナラの幕切れを迎えた(2対3)。9回裏は2点リードを守れず、あと1人から同点2点適時打を浴びて、勝負どころで詰めの甘さを見せている。しかし、岩本の力投が色褪せることはない。甲子園のファンを味方につけたキャラクター性。公立校のエースは、強烈なインパクトを残したと言える。

 21世紀枠で春夏を通じて初の全国舞台。石岡一高には普通科のほかに造園科、園芸科がある。岩本は造園科に在籍し、造園技師検定3級の資格を持つ。農業系エースと言えば昨夏の甲子園で準優勝を遂げた金足農高・吉田輝星(現日本ハム)の快投が記憶に新しいところ。吉田も甲子園マンモススタンドを完全に味方につけた。

 岩本は吉田の投球フォームを参考にしている。盛岡大付高との1回戦を前にした移動バスでも、スマホで動画を見てきた。奪三振をまとめた特集であり、モチベーションを高めて甲子園に乗り込んできたのだ。惜しくも初戦敗退を喫したものの、吉田との4つの共通点を確認することができた。

 まずはストレートの球質である。この日の最速は144キロ。130キロ台中盤がアベレージであったが、球速表示以上のキレがある。低めのコースが打者の手元で伸び、その裏付けとして、盛岡大付高打線は高めのボール球に手を出す場面も見られた。

 次に変化球の精度。盛岡大付高・関口清治監督は「(昨秋の)新チーム結成以降の公式戦で打線が一番湿った試合」と振り返った。同校は昨秋の県大会準決勝で157キロ右腕の大船渡高・佐々木朗希を攻略した攻撃力を誇る。だが、岩本の投じるチェンジアップにタイミングを外された。右打者の内角に食い込み、左打者の外角へ逃げる変化球は大きな武器であった。

 投球以外だけではなく、周辺分野にも長けていた。最大の見せ場は、10回裏一死二塁で三塁線に上がったバントの小フライをダイビングキャッチ。11回裏こそ痛恨の悪送球が出たが、フィールディングも吉田に匹敵する動きの良さを見せていた。また、ピンチでのけん制や、プレートを外すなど、間を取るのがうまい。ミスによる幕切れは悔やまれたが、マウンドでの落ち着きぶりが目立った。

 最後に冒頭でも触れた、観客を引き込む無形の力が、岩本にはある。「夏に戻って来られるようにしたい」と語った岩本。灼熱の夏に、もう一度見たい公立校エースである。

文=岡本朋祐 写真=佐藤真一

週刊ベースボール

最終更新:3/25(月) 19:44
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