ここから本文です

米東海岸でクジラの「異常死」が急増、打つ手なし、科学者ら困惑

3/25(月) 7:11配信

ナショナル ジオグラフィック日本版

「異常死事例」宣言の表明から2年以上経った今も、おもな原因は特定できず

 風の強い冬の午後、米国東海岸のバージニアビーチ沖に浮かぶホエールウォッチング船で、船首にいっせいに人が詰めかけた。ザトウクジラの背びれが水面に現れたのだ。クジラが餌を取ろうと再び海中に潜っていくまでの1、2秒間に、立て続けにシャッターが切られた。

ギャラリー:世界のクジラの仲間たち 写真14点

 体のわりに小さな背びれからは、ザトウクジラの本当の大きさは分かりにくい。体重は子どもでも約1トンあり、おとなの体重は、子どもをたくさん乗せた幼稚園バスを上回ることもある。ザトウクジラを骨折させられるような生きものは海中にいない、と言っていいだろう。

 一方、1.6キロ北のチェサピーク湾口の付近では、巨大な貨物船がクジラたちのいる南に向かって航行していた。1月下旬の土曜日、ザトウクジラたちは、船が盛んに行き交う航路を泳いでいた。多くの船がこの場所を通り、混雑ぶりで米国屈指の港に出入りする。こうした貨物船は、ザトウクジラへの物理的な脅威となる数少ない要因の1つだ。

「ああいう大きな船が水をかき回すと魚が集まるので、クジラは魚を目がけてやって来るのです」。バージニア水族館・海洋科学センターのホエールウォッチング船「アトランティック・エクスプローラー」号の船長、マーク・セダカ氏は話す。

 大西洋岸のクジラ研究者たちによると、座礁(漂着も含む)するクジラの体には、船舶との衝突や、漁具が絡まった跡がかつてないほど多く残されているという。2016年1月から2019年2月半ばまでに、米海洋大気局(NOAA)が記録したザトウクジラの座礁は88頭。中でもニューヨーク州、バージニア州、マサチューセッツ州が最も多かった。

 この数字は、2013年から2016年までに座礁したクジラの2倍以上に上る。

 こうしたクジラの座礁の増加により、NOAAは2017年4月、メーン州からフロリダ州にかけて、ザトウクジラの「異常死事例」が起こっているとの宣言を発表した。2年近く経った今も、宣言は撤回されていない。

 ザトウクジラの異常死事例が宣言されたのは2003年以来4回目のことだ。この宣言を出さないと、NOAAは座礁したクジラの調査を追加で行えない。だが、2017年4月の宣言直後に開かれた電話会議では、回答しきれないほどの数の質問が出た。航路には、クジラの方が多いのか、それとも船の方が多いのか? 海水温の変化でクジラの獲物が海岸近くに引き寄せられ、そのためクジラも沿岸に集まっているのか? 海の中に広がる雑音(ノイズ)がクジラの方向感覚を狂わせているのか?

1/3ページ

記事提供社からのご案内(外部サイト)

こんな記事も読まれています

あなたにおすすめの記事