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「ジェネレーションフリーの社会」の発想が、 年金制度の行き詰まりも打開するvol.2

3/26(火) 8:03配信

Meiji.net

「ジェネレーションフリーの社会」の発想が、 年金制度の行き詰まりも打開するvol.2

北岡 孝義(明治大学 商学部 教授)

少子高齢化によって、世代間扶養の公的年金制度は限界にきているという議論をよく耳にします。そこで、マクロ経済スライド制の導入など、様々な対策が考えられています。しかし、そうした対策には、本質的な問題に正面から取組む発想がない、という指摘があります。

◇働く高齢者は社会とのつながりを感じ、元気になる

では、どうすれば問題解決につながるのか。

そのヒントがスウェーデンの首相の発言にあります。実は、福祉国家として知られるスウェーデンも、公的年金制度の破綻の危機に直面し、過去に年金制度の大改革を行ってきました。

しかし、最近、再び行き詰まっているようです。そんなとき、2006年から2014年まで首相を務めたヨーン・フレドリック・ラインフェルトは、首相在任時に年金の支給開始年齢を75歳に引き上げると言い出しました。

これに国民は怒り、それをマスコミも大々的に取上げて大問題となりました。確かに、一見すると、年金にかかる資金を少なくするための政策に思えますが、ラインフェルトの意図はそれだけでなく、60歳半ばでリタイヤして、それ以降は年金に頼るような社会の構造を変えるべきだ、ということにあったのです。

しかし、そんなことを言っても、高齢になれば、体力が衰えているし記憶力も悪くなります。

そんな人たちに働けというのは酷だし、また、そんな人たちが戦力として働き続けられるほど現実社会は甘くない、と思われます。確かに、その通りでしょう。

しかし、だったら、そのような高齢者でも働けるような環境に変えたら良いのではないか。

つまり、ラインフェルトは、いままでの働き方を見直そうと言っているのです。

実際、高齢者に働く機会を設け、業績を上げている会社があります。徳島県の上勝町は人口が約1600人で、高齢者比率が51%を超えるという過疎化と高齢化が進む町です。農業が主産業ですが、高齢者でも活躍できるビジネスはないかと模索し、1986年に始まったのが「葉っぱビジネス」です。

これは、料亭の料理の飾りとなる季節の葉や花、小枝などを販売するビジネスです。商品が軽量できれいなので、高齢者や女性でも無理なく取組むことができるというわけです。

すると、仕事にたずさわることができるようになった高齢者の皆さんは、やり甲斐を感じて元気になり、町の雰囲気も明るくなりました。

しかも、このビジネスは大ヒットとなり、1999年には株式会社が設立されました。いまでは、会社の年商は2.6億円だと言います。さらに、なんと、老人ホームの利用者数が減り、町営の老人ホームはなくなったというのです。

アメリカにも、社員の半分が74歳以上という会社があります。ボストン近郊にある事業用の針製造会社です。若い人の採用が難しかったこの会社は、高齢者を雇用し、働き方はパートタイムで勤務時間は自由としました。

すると、高齢者の皆さんは働くことを楽しみながら、着実に仕事に取組んでくれたのです。社員の中には100歳を超えている人もいます。自分が役立っていることを実感することが、働くモチベーションになっているのです。

生産の能率が良いとはいえませんが、仕事は丁寧で、それは針の製造においては大切なことでした。会社の売上げは3倍に伸びたのです。

※取材日:2017年12月

次回:働くことが苦痛であることこそ問題(3月27日8時公開予定)

北岡 孝義(明治大学 商学部 教授)

最終更新:3/26(火) 8:03
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