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特集・米中“新冷戦” (1)狙い撃ちされる中国の地技学的台頭:テクノヘゲモニー論再考

3/26(火) 15:15配信

nippon.com

土屋 大洋

米中対立の様相は、かつての米露対立とは異なり、軍事と経済、そして情報通信技術のという各分野での覇権争いが相互に絡み合う点にある。

2019年2月半ば、ドイツのミュンヘンで55回目となるミュンヘン安全保障会議が開かれた。日本の防衛省によると、この会議は「欧米における安全保障会議の中で最も権威ある民間主催の国際会議の一つ」とされている。

もともとは冷戦時代のドイツと米国の二国間対話として小さく始まったが、今では会場に入りきれないぐらい多くの人が世界各国から詰めかけ、各国の首脳・閣僚がこぞって参加する大きな会議になっている。今年は米議会から52人もの現役議員が参加した。長年、常連として参加していた故ジョン・マケイン米上院議員を記念した賞も創設された。

実はミュンヘンは地政学と縁が深い。1923年11月、ドイツのミュンヘンでアドルフ・ヒトラーらはミュンヘン一揆と呼ばれるクーデター未遂事件を起こした。逮捕されたヒトラーは、ランツベルク刑務所の中でカール・ハウスホーファーと出会う。ハウスホーファーは日本に滞在したことがあり、それを元に博士論文を執筆、地政学の創始者の一人となった。ハウスホーファーの生存圏の考え方を、ヒトラーは自分の思考に取り入れた。現在のミュンヘンには、ナチスの足跡をたどる「第三帝国ツアー(※1)」という観光ツアーもある。

そして、2019年の会議はまさに地政学的な対立を反映した場となった。

(※1) https://www.getyourguide.jp/munich-l26/munich-third-reich-tour-t4961/

米中のつばぜり合い

会議2日目の午前、メイン会場のステージに立ったのは米国のマイク・ペンス副大統領だった。ドナルド・トランプ大統領の娘イヴァンカ・トランプもミュンヘンを訪問していたが、大統領の名代となったのはペンス氏である。

もともと冷戦時代に米独対話として始まったミュンヘン安全保障会議は、北大西洋条約機構(NATO)とソ連/ロシアの対立が焦点であった。実際、NATOの事務総長もスピーチを行い、ロシアのセルゲイ・ラブロフ外相もスピーチを行っている。

しかし、今年の会議では、ペンス副大統領が中国批判を強く行ったことが印象的であった。米中間の貿易摩擦だけではなく、中国の情報技術(IT)メーカーであるファーウェイ(華為技術)の問題にも踏み込んだ。同社や中国の通信企業は「中国の法律で北京の巨大なセキュリティ組織にデータを提供するよう要求されている」と批判したのだ。そして、米国の重要インフラストラクチャを守るとともに、米国のセキュリティ・パートナーとなる国々も同様にそうした企業を拒否するよう呼びかけた(※2)。

ファーウェイの創業者である任正非は中国人民解放軍とのつながりが強く、同社は中国政府、中国共産党、そして人民解放軍の要求に従わざるを得ないと米国政府は見ている。そして、任正非の娘であり、ファーウェイの最高財務責任者(CFO)である孟晩舟が、米政府の求めによって12月1日にカナダで拘束されている。直接の容疑は、イランへの経済制裁に違反してファーウェイが取引を行ったことについて偽証したという点にあるとされているが、米中の貿易摩擦・経済摩擦に関連していると見る向きが強い。

ペンス副大統領は、自らの演説が終わると、質問を受け付けることなく会場を後にした。そしてその直後にステージに上がったのは、中国の楊潔チ・前外相であった。楊は中国政治のトップ7である中国共産党中央政治局常務委員会には入っていないが、中央政治局員であり、中共中央外事工領導弁公室主任でもある。このポストは、中国政府の外交部長(外相)より格上であり、実質的な外交政策の責任者である。楊は駐米大使も務めた米国通の中国政治家として知られている。

しかし、ペンスの厳しい発言の後、楊も反論せざるを得なかった。手元のテキストを読み上げながら、「ファーウェイはヨーロッパ諸国にとても密接に協力している会社であり、第4の産業革命のためにみんなで協力しなくてはならない。中国の法律は企業にバックドアを作らせ、情報を集めることは求めていない(※3)」と述べた。

この楊の発言を疑問視する声は強い。国防法や国防動員法、サイバーセキュリティ法などを使えば、中国共産党、中国政府、そして人民解放軍は中国の民間企業を通じた情報収集は可能だと見られている。筆者が話を聞いた米政府の元高官は、「中国政府が米国内の中国人やその家族に対して強圧的に情報提供を迫っている実態を把握している」として、圧力を受けた中国人や中国企業は情報提供を断ることはできないだろうと見ている。これまで起きていないからといって、今後も起きないとは限らないというのが米政府の根強い疑念である。「韜光養晦」に努めていた中国が、習近平国家主席の指導の下で牙を見せ始め、トランプ大統領の虎の尾を踏んだという指摘もしばしば聞かれる。

(※2) https://www.whitehouse.gov/briefings-statements/remarks-vice-president-pence-2019-munich-security-conference-munich-germany/

(※3) https://www.securityconference.de/en/media-library/munich-security-conference-2019/video/statement-by-yang-jiechi-followed-by-qa/

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最終更新:3/26(火) 15:15
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