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「平成最後」という言葉を使うときに感じるザワザワの正体

3/26(火) 13:00配信

現代ビジネス

年末に頻用された「平成最後」

 平成も残り1か月となった。

 いろんなものが「平成最後」になっていくはずである。

 ただまあ、「平成最後の」というのは、あまり意味のあるフレーズではない。そうすれば、何かしらを刺激して、人を動かせるかもしれないとおもって、無闇に放たれていることが多い。受け手もわかっているけれど、ときに反応してしまう。

 もっとも多用されていたのは、おそらく年末である。実際にこれから年号代わりが近づくとまた多発されるだろうが、12月には多発され、そのあとの1月2月は、あまり聞かなかった。

 新聞のテレビ欄を見てみても、年末のころは「警察密着24時~平成最後の戦い~」「平成最後の奇跡を目撃」「平成最後のレコード大賞」「平成最後の紅白」などの文字が躍っていた。紅白歌合戦やレコード大賞はたしかに平成最後だろうけれど「警察官の戦い」やら「奇跡」やらはまだ平成最後と言い切っちゃうのは気が早いんではないかとおもったが、そのへんは気分で押し切っている。

 1月30日や1月31日の番組で「平成最後の」とうたわれているものは見当たらなかった。大晦日より一か月平成の終わりに近づいたはずだけれど、そこはあまり注目されていない。

 元号が変わるというのは、ここ100年でも2回しかない。歴史的な出来事である。しかも改元の日程が前もってわかっているという日本史上かなり稀な事態だ。なにやら歴史的な瞬間に立ち会う気持ちになり、浮き足だってしまう。落ち着けというのもなかなかむずかしいし、そもそも人にモノを売ろうとしている人たちは、浮き足だったところを狙いたいので、よけい浮き足立たせようとするだろう。それがいまのこの社会の、ちょっと哀しいシステムでもある。

「ミレニアム」の流行を振り返る

 人は、いま自分が歴史的瞬間に立ち会っている、と実感することは、意外にむずかしい。「歴史的な視点=俯瞰の視点」を持つのがけっこう困難だからだ。

 歴史の教科書で学んだ事例から、当時の人の息づく生活まで想像しにくいように(応仁の大乱が起こる前夜に細川勝元が何を食べどんな服装で寝ていたかということをみんなあまり気にしない)、日常の雑事にとりかこまれている自分たちが、どういう歴史的な意味がある瞬間に立ち会っているのか、なかなか想像しにくい。のちのち語られる瞬間に遭遇していようと、人は自分の日常生活のほうを優先してしまう。それがふつうである。そうやって人間社会は続いてきた。

 平成年間にもいろんな歴史の節目はあった。

 ちょっと変わったところでいえば、平成12年の年始、それに平成13年の年始。

 平成12年は西暦で言えば2000年、平成13年は2001年である。2年連続で、年代わりで盛り上がった。こうやって書くとあらためて元号の持つ不思議な力を感じてしまう。「2001年宇宙の旅」は、我が国的に正しく言えば「平成13年宇宙の旅」であって、そう書いてしまうと何だかそこはかとなくおもしろい。

 平成12年が明けるときは、1900年代から2000年代へ変わるときで、千年に一度のこと、と話題になった。「千年紀・ミレニアム」という言葉が流行った。次に同様のことが起こるのは2999年から3000年への年変わりになる。

 千年前の日本といえば、藤原道長や紫式部が元気なころで、まさに『源氏物語』世界が展開されていたときだ。遠すぎて実感がわかない。「源氏物語」という稀有な物語を持ってるおかげで、ぎりぎり想像できなくないのだが、生身の人間がリアルに実感できる時間サイズではない。

 そもそも1000年とか2000年とか、数字がきれいに揃ってる西暦をみると、急に他人事の数字に見えてくる。これまでの千年のことをおもい、これからの千年のことをおもう、というイベントはあまり開かれていなかった。千年を実感するのは、常人にはなかなかむずかしい。

 また、年号表記が「1999から2000」へと移ると、古いコンピュータがきちんとそれを読み切れず誤作動を起こし、はてはミサイルが誤発射されかもしれぬ、という報道がまことしやかにされていた。それを半笑いではあるけど、可能性ゼロだとはおもえない気分で眺めていた。「2000年問題(Y2K問題)」である。

 年が明けて2000年になっても何も起こらず、心配して損した、という拍子抜けの感覚をみんなで抱いてしまった。2000年の幕開きは、なんだか間が抜けた感じがした。

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最終更新:3/26(火) 13:00
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