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腰痛治療の80%が誤診、慢性痛の名医が嘆く医療界の現実

3/26(火) 6:01配信

ダイヤモンド・オンライン

 「慢性痛」の名医として知られる横浜市立大学付属市民総合医療センター・ペインクリニックの北原雅樹教授は、日本の腰痛治療は誤診があまりにも多く、「安易に手術を勧めるケースが多い」と嘆く。実際の医療現場で北原医師が体験し、理解に苦しむ誤診の実態を解説してもらった。(医療ジャーナリスト 木原洋美)

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● 骨粗しょう症に気づかず 怪しい診断、手術を勧める

 「日本の腰痛治療は間違いだらけ」と嘆くのは、慢性痛の名医として知られる横浜市立大学付属市民総合医療センター・ペインクリニックの北原雅樹教授だ。もっか北原教授のもとには、主治医の紹介状を手に日本全国から患者が殺到し、不本意ながら「(紹介状のない)初診患者さんお断り」にせざるをえない状況になっている。

 つまり、患者のみならず医師からも大いに「頼りにされている」わけだが、「この状態で、なぜあの病気を疑わないのか」あるいは「この患者さんにどうして手術を勧めるのか」など、理解に苦しむ診療をしている症例がものすごく多いらしい。

 そんな日々の体験から、昨年11月には『日本の腰痛 誤診確率80%』(集英社インターナショナル)なる著書まで上梓してしまった北原教授に聞いた、患者と家族が知っておくべき腰痛の真実をシリーズでご紹介する。

 第1回は、本当に患者数が多い、高齢者の“何をやっても治らない”慢性腰痛についてだ。

 まずは3つの症例を読んでほしい。

 【症例1】

 80代女性。紹介状には「認知症」とだけ記されていたが、MMSE※(ミニメンタルステート検査)を受けてもらうと14点で、重症であることが分かった。付き添いの50代後半の息子さんによると1年半ぐらい前から腰痛を訴えるようになり、整形外科を受診したが異常は発見できなかった。半年後、腰椎骨折が発見され、治療したが腰痛は消えない。その後転倒し、大腿(だいたい)骨と手首を骨折。手術を受けたがリハビリテーションをさせようにも、本人は痛がってやってくれない。車いすにも乗れず、寝たきり生活が続いている。どうしていいか分からず、息子さんは「わらにもすがる思いで来た」と言う。

 先生はまず、本人に話しかけた。

 北原「何が一番困っているんですか」
患者「うーん、分かりません」
北原「どこが痛いですか」
患者「私、痛いのかしら」
北原「じゃあ今日はどうして来たんですか」
患者「さあ、この子が連れてきてくれたの」

 というわけで、本人には、腰痛で困っているという意識がないことが分かった。先生は次いで息子さんに質問し、症状を一通り聞いた後、告げた。

 北原「申し訳ないけど“わら”にはなれませんよ。お母さんにとって一番重要なのは、とにかく運動してもらうことです。

 お母さんは短期記憶力しか残っておられないので、5分前のことは忘れてしまいます。だから、『運動しないと寝たきりになりますよ』と言うと『寝たきりは嫌、運動する』と約束するけど、すぐにまた『痛いから嫌』の繰り返しになる。それでも運動してもらいたいので『運動しないと寝たきりになりますよ。痛くてもつらくても運動しましょう』とワードで入力してプリントアウトしましたので、これを壁に貼ってください。ご家族が言うよりは、医者からの指示の方が多少なりとも効力が高いかもしれません。

 この1年半で認知症がかなり進んでしまったのは、恐らく動いていないせいでしょう。主治医の先生はよく分かっていて、認知症の薬以外余分な薬は出さず、なんとかリハビリテーションをしてもらいたいとおっしゃっています。信頼できる先生ですからどうか、この先生のもとでリハビリに励んでください。それが唯一最善の治療法です」

 ※MMSE:世界で広く行われている認知症のスクリーニング検査。30点満点で、21点以下は「認知症の疑いあり」、22点~26点で「軽度認知障害(MCI)」と判断される。

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