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ヘルシンキにあって日本にない観光政策の視点

3/26(火) 5:20配信

東洋経済オンライン

 830万人。これは2008年の訪日観光客数である。2018年に日本を訪れた個人旅行者数3120万人という驚異的な数字と比較すると、その差は歴然だ。わずか10年足らずで、日本は年間訪問者数を異例とも言える4倍に増やすことができたのである。

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 さらに2020年末までに、政府は年間4000万人の訪日旅行者を見込んでおり、この上昇傾向は当分おさまりそうもない。まるで世界中が突然目覚めて目をこすり、日本がものすごくお手頃価格で行ける、驚きに満ちた旅先であることに、ようやく気付いたとしか言えない伸びようだ。

■観光地が毀損され始めている

 しかし、このすばらしい成長も、ある程度の犠牲と代償を逃れることはできない。インバウンド旅行者の急激な増加は、既存のインフラに深刻な打撃を与えており、対応を迫られる当局担当者は、増え続ける旅行者に対して、その場しのぎの施策を講じるのがやっとだ。

 例えば、シンガポール航空を含め一部航空会社は、“人気路線”の需要に応えるため、航空機を「スーパージャンボ」の異名を持つA380sにアップグレードするだけでなく、1日当たりの就航数も増やしている。ただ率直に言って、東京オリンピック開催日までに、900万人の追加旅行者受け入れる秘策を打てるとは考えにくい。

 問題は既存インフラへの過剰負担にとどまらない。日本のインバウンド観光ブームそのものが、日本文化の破壊につながりかねないのだ。ここ最近、浅草・浅草寺や宮島の厳島神社など、主要観光地にはあまりに多くの観光客が押し寄せるため、もともとの魅力が損なわれつつあるように感じる。実際、大勢の旅行者の波にもまれていては、スピリチュアルな体験どころではないだろう。

 さらに悪いことに、京都などの観光地では、訪日観光客のせいで地元住民の日常生活に支障が生じているという。完璧な自撮り写真しか眼中になく、目的地を目指して急ぐ観光客グループの波間を縫うように歩行する、これがいかに地元住民をイラつかせているは想像に難くない。

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