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乾式貯蔵技術を米国とはまったくの別物に変えたヒノマル原発産業の宿痾

3/31(日) 8:33配信

HARBOR BUSINESS Online

◆日本の「乾式貯蔵」の現実を知るために

 本連載原子力PA編では、前回一度だけNUMOの高レベル放射性廃棄物最終処分場選定に関する説明会への参加レポートを挟みましたが、基本的には愛媛県八幡浜市で行われた「使用済燃料乾式貯蔵施設に関わる講演会」で目にした長沢博士、奈良林博士の講演についてその概要をお伝えしてきました。(参照:本連載原子力PAシリーズ1、2、3)

 この核燃料乾式貯蔵(乾式貯蔵)は、合衆国の商用原子力発電所としては1986年にサリー原子力発電所(Surry N.P.P. Virginia, USA)で初運用されており、十分に成熟した技術といえます。

 乾式貯蔵は、ドライキャスクと管理施設への投資が大きく、一方で維持・運用費は小さいという費用構造上の特徴があります。初期投資が大きく、維持費が小さいと言うことは長期間の運用に向きます。

 一方で、SFPによる貯蔵は、初期投資が小さく、一方で維持・運用費が大きくなりますので、短期間の運用に向きます。

 従って、使用済み核燃料の処分が円滑に出来る(再処理する、最終処分場への搬出の当てがある)のであるのならば、SFPでの十年ないし十数年程度の仮保管で済むため、SFPでの管理が最適であるとして前世紀では乾式貯蔵はそれほど大規模には使われていませんでした。

 例えば日本では、核燃料サイクルによってSFは冷却期間の10年間の後に再処理施設へと持ち去られるので、SFが発電所内で増え続けることはなく、長期滞留もないために、わざわざ高額の設備投資をして乾式キャスク貯蔵をする必要は無いと考えられてきたのです。

 ではなぜ、どういう理由で、どういった目的で乾式貯蔵が世界で大々的に使われるようになったのか、そして日本ではどうであるか。このことを見極めなければ表面的な議論、理解に留まります。

 今回は、ドライキャスクによるSF乾式貯蔵についてSFPによる貯蔵と比較しながらその現実を解説します。

◆使用済み核燃料保管における両方式の比較

 使用済み核燃料(SF)は、概ね10年間ほどSFPで保管すれば温度は人肌程度まで下がり、遮蔽と放熱さえ確保出来れば水につけておく必要はありません。また、核燃料は、水中に無い限り臨界を起こす可能性はほぼありませんので、水害などでドライキャスクが水没するなどキャスク内が減速材で満たされないかぎり、キャスク内で臨界核反応を起こす可能性は原理的にあり得ません*。一方で、原則として自然冷却を行うために冷媒である空気の熱容量が小さいこともあり、取り出し後数年間の熱い使用済み核燃料を保管することは行われていません。

(*:使用済み核燃料(SF)そのものが、241Amや240Puといった中性子を無駄食いして核分裂しない物質(核毒)を多く含むために熱中性子(速度の遅い中性子で、軽水炉はこれを連鎖核反応に使う)では臨界核反応を起こしにくい。軽水炉の核燃料交換が13~24ヶ月毎に行われるのはそのためで、日本の場合、現状では運転日数が18ヶ月を超えると原子炉の出力を維持出来なくなる。従って、キャスクの水没で臨界核反応が生じると言うことは、まずあり得ない。しかし物事に絶対はないために臨界対策がなされる)

 SFPは、減速材である水が冷媒として大量に存在しているためにSFP内での核燃料の配置とラック素材へのホウ素の添加、冷却水内のホウ素濃度の管理によって臨界を抑止しています。一方で水の熱容量は空気に比して4倍強大きい為に、水の循環と除熱さえ正常ならば、より狭い領域で同数の使用済み核燃料を安全に保管出来ます。また、水の熱容量が大きく、温度管理も容易であるために使用直後で崩壊熱量の大きなSFを保管することが出来ます)

 日本においても電力中央研究所(電中研)などがSFPとドライキャスクを比較した報告書を出すなど長年検討が続けられてきましたが、次のような理由でドライキャスクの取り入れは行われてきませんでした。

1) SFPとドライキャスクでは安全性に大きな違いは無い*

2) SFPは、設備投資額が小さく、ドライキャスクは設備投資額が大きい

3) SFPは、運用経費が大きく、ドライキャスクは運用経費が小さい(総額であまり差がない)

4) SFPは、SFの取り出しが容易であるが、ドライキャスクではたいへんに手数を要する

5) ドライキャスクによる乾式貯蔵は、たいへんに場所をとる(PWRにとくに多いが、日本の原子力発電所は、敷地が狭隘なところが多い)

(*:近年、こういった表現は少なくなったが、乾式キャスク貯蔵がSFPより目立って安全であるというわけではない。例えば、”原子力発電所内の使用済燃料の乾式キャスク貯蔵について 平成4年8月27日 原子力安全委員会”などでも、乾式キャスク貯蔵はSFP貯蔵と一長一短であり、基準は実績のあるSFPとの比較によってなされている)

 日本では、核燃料サイクル政策がとられており、SFは、十分冷えた後にフランス、英国、東海村の再処理工場に送られました。更に、六ヶ所村再処理工場が運開すれば年間800t(国内SF発生量の1/2~2/3と想定)が国内再処理に送られます。故に日本においてSF保管は、新たにドライキャスク保管することなくSFP保管を継続するという事になっていました。

◆SFPとSFの潜在的危険性が顕在化した福島核災害*

(*:英語圏では、一般に福島第一原発事故ではなく福島核災害Fukushima Nuclear Disasterと呼称される。身近な例ではJapan Timesが挙げられる。一方で、NRCではFukushima Nuclear Accidentが使われている。(参照:「Japan Times」)

 この安全性に差異が無いという結論は、意外に思われる方が多いと思いますが、誤りではありません。SFPは正常に人間による管理が行われている限り、たいへんに効率的で安全なSF保管方法です。

 しかし、シビアアクシデント(過酷事故, SA)や天災によりSFPが人の管理から外れると、SFPの安全は崩壊します。福島核災害では、4号炉SFPに熱い使用済み核燃料が大量に存在し、その状態確認も電力と水の供給も長時間途切れたことから、合衆国はSFPにおける使用済み核燃料溶融を強く懸念し、横田基地からの合衆国市民の緊急脱出を行いました。

 既述のように、まさに僥倖(ぎょうこう)、天佑(てんゆう)と言って良い全くの偶然で4号炉SFPは、偶然に水が張られていた本来は空である隣接する水ピットから大量の水が流れ込み、冷却が維持されたことにより、箱根以東の東日本全域が無人の核の荒野となる最悪の事態は避けられました。この水ピットに水が張られていたのは、偶然に作業が遅れていたためであって、この水ピットからSFPに水が流れ込んだのは、偶然に水密ドアが壊れたためでした。

 このことは、後日空撮によって4号炉SFPで水面が光っていた事が壊れた建物の隙間から確認され、日米政府関係者を大きく安堵させました。その存在するはずのない大量の水がどこからやってきたのかが謎でしたが、更に後日、機器仮置きプールの水密ドアが壊れ、SFPに水が流れ込んでいたことが確認されました。

 これまでの連載で指摘してきましたとおり、SFPの管理崩壊による開放系でのSF溶融ないし破損は、原子力・核災害の中では最悪といえるものです。福島核災害では、これにより福島第一の無人化と全炉、全SFPの崩壊と溶融、連鎖して福島第二の無人化と崩壊・溶融、大洗・東海村核施設の無人化と崩壊・溶融によって東日本だけで4千万人前後の難民化と大量の犠牲が予想され、この場合日本政府は消滅していたでしょう。もちろん、自衛官、消防官、警察官を欺し、JAEA、原電、東電職員に強制して決死の作業を行わせた可能性も否定出来ません。福島第一では、欺された自衛官と消防官が3号炉爆発に巻き込まれました*。時間を遡り、JCOでの臨界事故では、決死作業を渋るJCO職員に、作業の強制を示唆したことが知られています。福島核災害でも同様のことが行われています。これらは憲法第18条**違反ではないかと著者は考えています。

(*:“福島第一3号機爆発 自衛隊員ら11人ケガ|日テレNEWS24” 2011/3/14/当時、自衛官や消防官は、もう爆発はあり得ないと説明されていた)

(**:日本国憲法第十八条/何人も、いかなる奴隷的拘束も受けない。又、犯罪に因る処罰の場合を除いては、その意に反する苦役に服させられない)

 通常時において乾式貯蔵に比して安全性に見劣りがしない、部分的にはより安全であるSFPですが、人の手が加えられなくなると極めて脆弱となります。これを固有安全性の欠如と言います。現在主流の第二世代原子炉を代表として、商用原子力技術は熱力学的には固有安全性が低く、必ず人が手を加え、外部からエネルギーを供給する必要があります。但し、合衆国式の軽水炉を代表として、旧西側の原子炉は、核反応においては固有安全性が確保されています*。

(*:低出力域の核反応において固有安全性が低かったのがソ連邦のRBMK(LWGR)通称チェルノブイル型炉であった。この固有安全性の欠如からチェルノブイル4は、核暴走、原子炉内部構造破砕、水蒸気爆発、水素爆発の順で原子炉崩壊、チェルノブイル核災害に至った。ソ連邦では、運用マニュアルによって固有安全性の欠如=炉の欠陥を補っていたが、その欠陥を知らされていない現場では、運用マニュアル逸脱による実験を行っていた。一方で合衆国では、同じく低出力域での固有安全性に疑問を持たれていたBWRについて、原子炉暴走・破壊実験を含む徹底した実証実験によって固有安全性を確認の上でBWRを実用化している*。これまでの災害、事故、インシデントの経験により日本を除く原子力開発国では、熱力学的な固有安全性を持つ第三世代プラス(3G+)を実用化しているが、中露以外では建設費暴騰によって経済的に失敗している)

(*:参照『原子炉の暴走―臨界事故で何が起きたか』石川迪夫著・日刊工業新聞社刊。ちなみに大変な良書である)

 SFPの中にあるSFが、十分に冷えた人肌程度の温度のものであるならば、SFPが人の管理から離れても数ヶ月から1年程度は水が枯渇しませんが、現実の原子力発電所では、新たなSFが定検のたびに供給されますので、SFPの固有安全性の欠如は憂慮すべき事です。そのため、できるだけSFPに収容されているSFを減らし、SFPの空間的、熱的余裕を増やす必要性が福島核災害で強く認識されました。SFPに収容されているSFの数が減れば、それだけ発熱量が減少し、水の熱容量と気化熱(潜熱)による熱力学的固有安全性が高まります。

◆「使い分け」と「暫定」が大前提のSFPとドライキャスク

 ドライキャスクの場合は、除熱能力の欠如から取り出し直後のSF、使用済MOX、高燃焼度SFの収容は出来ない(安全性が未実証)のですが、十分に冷えたSFは、一度収容するとエネルギーの投入や人間による積極的管理を要さない、高い固有安全性を持ちます。

 一見して素人目に安全に見えるドライキャスクですが、火砕流などの高温の熱源に長時間晒された場合はSFPと差がありません。また、大津波や大洪水で流され、長期間水没した場合も同様です。そのため、SFPやドライキャスクも原子炉本体と同じく火砕流や水害からは完全に守られる必要があります。地震や航空機突入で転倒しないように厳重に固定されることも求められています。とくに火砕流は深刻で、有機物の発火点を遙かに超えるような高温の物質に埋没した場合、SFからの除熱が長期間不可能となり、逆に加熱されますので、条件によってはSFの破損や溶融まで発生し得ます。九州電力川内発電所など、過去に10mを超える大火砕流に埋没した土地に建設された原子力発電所が日本には複数存在します。なお、火砕流は水より軽いために海や河川湖沼は障害とならず、水面を疾走します。

 SFPとドライキャスクは、併用と使い分けによってSFPが10年単位の比較的短い期間、ドライキャスクが50~100年程度の暫定的なSF管理に本来用いられるものです。決して永久保管に用いるものではなく、それぞれ一長一短があって適切に使い分けられるべきものです。

◆日本に35年先行する合衆国の事例

 合衆国では、ユッカマウンテン最終処分場事業の中止に伴い、SFの処分先がなくなりました。また連邦裁判所は、SFの処分方法(中間管理でも可)が決定されるまで今後の原子力発電所の運転認可、運転延長認可は出来ないという判断を下しました。

 合衆国の原子力電力事業者は、運開以来貯まる一方のSFの管理費用に苦しんでおり、また運転期間の40年から60年への延長手続き(2015年に80年運転の指針もNRCより示されている)もあって管理費用が低く固有安全性の高いSF中間管理の必要性が増し、ドライキャスクによるSF乾式貯蔵が急速に進展しました*。

(*:原子力発電所の長期間運転によるSFP管理費用の増大に合衆国の原子力電力事業者は悩まされてきており、今世紀に入る頃から設備投資額こそ大きいものの管理費用が低廉なドライキャスクによるSF乾式貯蔵は合衆国において急速に普及してきていた。経済性が重視されるため、合衆国においては、ドライキャスクは屋外露天管理であり、ドライキャスクの価格低減と長寿命化が強く求められてきた。結果、合衆国においてドライキャスクの価格は3000万円から1億円(スタンフォード大学の評価では6千万円)であり、SF収容期間は80年となっている。なお、ユッカマウンテン事業の中止、WIPPでの火災事故などから、300年中間管理可能なドライキャスクの提案がメーカーからなされている。また、キャスクによる乾式貯蔵については、電中研も1980年代から、しばしば報告書で紹介してきている。その費用、キャスク単価についての紹介もなされてきている。 電中研レビュー No.52 2006.2など参考になる)

 合衆国では1970年代後半に核燃料サイクル政策が放棄されており、その後商用原子力発電所でのMOX燃焼は行われていません。兵器級余剰PuのMOX燃焼計画も経済性の欠如から放棄されました。従って、合衆国には乾式貯蔵が極めて困難なMOX-SFが事実上存在しません。

 結果、合衆国の原子力電力事業者は、十分に冷えた古いSFを乾式貯蔵に移行させ、SFPに十分な空間を空けることを進めています。

 ユッカマウンテン事業の再開ないし、新たな事業地の確保によって80年以内にSFの最終処分を目指す。それまでの時間をSFPと乾式貯蔵を併用したSF中間管理で稼ぐと言うのが合衆国におけるSF管理の現状です。既述のように、原子力メーカーの中には、最終処分場事業の破綻を見越して300年間の中間管理を提唱する事業者もいますが、「時間稼ぎをして、最終処分に移行する」という基本は変わりません。また、最終処分場は10年程度の時間と約1兆円の事業費*で完成しますので、政治的手続きによって立地点を新たに定めるか、ユッカマウンテン事業の地元合意を得るために稼いだ時間が用いられます。

(*:合衆国では、原子力発電事業者が1kWhあたり約0.1円を放射性廃棄物基金(NWF)に拠出しており、2007年時点で積立額は317億ドル(約3兆2千億円,1ドル=1円で概算)となっている。中止となったユッカマウンテン事業には同基金より約90億ドルが拠出されており、原子力電力事業者や地方政府から事業中止に対して訴訟が提起されている。なお、2007年時点で合衆国におけるHLW処分総費用は962億ドル(約10兆円)と見積もられている。参照:米国の地層処分の状況NUMO 2010年10月)

 合衆国では、2017年の共和党への政権交代よって、ユッカマウンテン事業の再開が期待されましたが、トランプ政権の動きは極めて鈍く、再開の見込みはありません。

 合衆国の原子力電力事業者は、日本と異なり経済性を強く志向します。設備投資額が大きく、維持費の低いSF乾式貯蔵において、設備費、資本費の低減は必須であって、合衆国では露天管理が主流となり*、ドライキャスクも安価で長寿命のコンクリートキャスクが選択され、既述のように衛星、航空写真では、原子力発電所のサイト内にドライキャスクが立ち並ぶ光景が見られるようになっています。

(*:合衆国の原子力発電所は、内陸に立地しているために塩害の心配が無い。コンクリートキャスクにとって塩害は、コンクリートと金属を劣化させるために極めて憂慮すべきものであって、日本では経済性に優れるドライキャスクの露天管理は不可能と言って良い。コンクリートキャスクの露天管理に至るまで、合衆国でも金属キャスク、屋内管理、横向きのラック管理など様々な手法が実際に採用の上で検討されてきた。また、アイダホ国立研究所(INL)では、1980年代から継続して実際に使用されているドライキャスクを各種露天で運用の上で健全性と放射能漏洩の有無を評価し続けている。参照:“電力中央研究所 研究報告書 L10017” 2011年7月)

◆米国でのドライキャスクによる乾式貯蔵の特徴

 合衆国でのドライキャスクによるSF乾式貯蔵は下記の特徴があります。

1) 大前提として、2010年に運用開始が予定されていたユッカマウンテンHLW最終処分場事業の再開ないし新処分場運用開始までのつなぎである

2) 合衆国では核燃料サイクルを行わないので、キャスクからのSF取り出しは原則としてISFSI(独立使用済核燃料保管施設)の撤去時まで行われない

3) 最大80年の保管=時間稼ぎを前提としている

4) 合衆国内4つの区域(リージョン)毎に設置されるISFSIでの集中管理を目指している

5) リージョン毎のISFSIの立地に難航しており、暫定的に発電所毎にISFSIを運用している

6) コンクリートキャスクの露天管理が主流となっている

7) 経済性重視のために初期費用の削減に力を注がれている

8) キャスクは現地組み立て

9) キャスクは保管専用であり、輸送用キャスクは将来より小型軽量のものが用いられる

10) 80年後以降も、キャスクの健全性が確かめられれば継続利用の可能性がある(塩の侵入、コンクリートの劣化が課題)

11) 司法リスクなど将来生じる可能性のある環境変化に柔軟に対応出来る。最悪の場合、ISFSIでの暫定管理を300年行う技術的選択も模索されている。300年という時間は極めて長く柔軟性を提供する。日本で300年昔と言えば徳川綱吉、新井白石、田沼意次の時代である

(*7:出典リンク)

(*8:出典リンク)

◆日本ではどうなのか

 日本では、合衆国と異なり沿岸立地のために経済性に優れた露天管理こそできませんが、受動安全性に優れたドライキャスクによる暫定管理の導入は、福島核災害において生じたSFPの管理・制御不能とそれによる破滅的大核災害発生の可能性を大きく減じます。そこで本連載で取り扱う八幡浜PA講演会で論じられた伊方発電所を例として取り上げて解説します。

 合衆国においては、ユッカマウンテンHLW最終処分場事業が、2010年運用開始の直前で中止となったために、運転認可を巡る司法リスクが発生し、SFの最終処分までの時間稼ぎのためにドライキャスクによる暫定管理が急速に普及しました。これは、その受動安全性の高さだけでなく、導入費こそ高くつくものの、今後数十年から80年に及ぶ長期管理にかかる管理費用がSFPより安く、総コストでは経済的であると言う理由もあります。従って、その安全性だけでなく資本費=建設費の削減に力が注がれています。結果として現地組み立てとなり、発電所立地点での雇用など、経済的見返りが見込まれます。

 日本では、1980年代から電力中央研究所(電中研)などで乾式貯蔵について検討がなされてきました*が、経済性への一定の評価はあったものの、その後あまり進展がありませんでした。

(*:使用済燃料乾式貯蔵技術の検討・評価-キャスク貯蔵建屋の概念設計と費用見積り- 1985/9)

 日本では、核燃料サイクル政策によってSFは再処理に送られるために、理屈の上ではSFPがあふれることがありません。また、MOX-SFは現在の技術では商用再処理出来ず、新技術開発によって商用再処理しても軽水炉では燃えない(原理的に臨界核反応できない)のですが、高速増殖炉が商用化すれば、MOXでの核燃料サイクルは可能となります。これが新たな投資をすることなくSFPによる湿式管理に完全に依存してきた日本のSF対策の基本をなす教義(ドグマ)です。

 よく知られるように2016年12月21日にもんじゅが放棄されるまで、日本では軽水炉・高速増殖炉サイクルを国策ドグマとして、これに反する考えは徹底して排除されてきたのが本邦原子業界です。もんじゅの廃炉決定までは、たとえ10年20年遅れても天文学的なお金がかかっても、商用としては完全に完全に完全に無意味な高コストであっても、このドグマを貫徹し、ヒノマルゲンパツPA(嘘とペテンと暴力とカネ)によって市民を欺し、事業を強行し、敗北を認めることになる施策を行う事は、政府・業界一丸となって一切許しませんでした*。

(*:典型事例として、原子力工業(日刊工業新聞社 月刊)において生じた原子力未来研究会騒動が挙げられる。”原子力未来研究会ホームページ“)

 結果、SF貯蔵が破綻した原燃東海第二のみで2001年に、次いで東電福島第一において試験という名目で乾式貯蔵が始められ、日本では取り組みが極端に遅れていました。

 もんじゅの遅延と失敗に続き、第二再処理工場=六ヶ所村再処理工場の20年に及ぶ遅延、第一再処理工場=東海再処理施設の廃止によって国内でのSF減量の目処がつかず、英国の再処理事業撤退もあって、現在、国内原子力発電所からのSF搬出が著しく停滞しています。結果、SFPの容量枯渇が全電力で深刻化し、唯一東京電力と原電のみが青森県むつ市に中間貯蔵施設を共同で建設しました*。一方で関西電力などの他の電力は、SFPが容量限界に近づき、東電中間貯蔵施設の利用や新設を青森県から断られた結果**、手の打ちようがなくなっています。

(*:”リサイクル燃料貯蔵株式会社” )

(**:青森新幹線が開通し、六ヶ所村核コンビナートが雇用を創出している今となっては、青森県にとって新たに核施設を引き受ける旨味はない。今後100年から百数十年にわたり県内核施設がお金を落とし続けることは確実で、福島核災害後の政治的リスクを青森県が新たに引き受ける可能性はたいへんに低い。但し、下北半島であぶれた自治体が飛びつく可能性はあり、青森県政界の動きには興味がある。なお、青森県は、HLW/SF/TRUの最終処分を県内で引き受けることは決して無いとしてきている。これは青森県核政策の根幹であるため、青森県に恒久的なHLW/SF/TRU最終処分場が立地できる可能性はほとんどない。逆に言えば、恥も外聞もなく破れかぶれになった自治体が、県と一体となって誘致すれば確実に成功する。青森県のような破格の高い見返りを得られるか否かはその県の政治力に依るだろう)

 乾式貯蔵施設の計画は、このような状況においてほぼなし崩しに始まっており、こういったなし崩しの一番槍は、おなじみの四国電力が担うのが電力業界の慣習です。これまで安全性に本質的差は無いとしてきた電力業界が、乾式キャスク管理導入に動いているのは、NRAが、受動的安全性に優れる乾式キャスク管理を求める意向を示しているからという理由もあります。

 なし崩しですから、SF中間貯蔵計画の全体像は存在しません。故に、将来核燃料サイクルが国内稼働すれば中間貯蔵は通過点に過ぎなくなるのでSFがそこに永久に留まることはないというのが理屈です。従っていつまでかも分かりませんし、キャスクの寿命を超えればどうなるかも分かりません。

 日本のSF乾式貯蔵計画は、あくまでPlan Aである核燃料サイクルの一環であって、商用としては完全に破綻している核燃料サイクルが放棄されたときやさらなる遅延を生じたときのPlan BやPlan Cが全く想定されておらず、柔軟性、不確実対応性が全くありません。極めて脆弱な計画と言うほかありません。

◆日本のドライキャスクによる乾式貯蔵の特徴

 日本でのドライキャスクによるSF乾式貯蔵は下記の特徴があります。

1) 大前提として、20年以上の遅延で運用開始が望まれている六ヶ所村再処理工場(旧第二再処理工場)までのつなぎである

2) 核燃料サイクルが大前提であり、キャスクの寿命は50年であり設計上延命の余地はない限定された寿命の消耗品である(規制上50年、最大限度60年)

3) キャスクの寿命50年に10年を残す40年後に撤去が検討開始される

4) 合衆国のISFSIに該当する計画はない。但し、原子力発電所立地県の突き上げから青森県への持ち込みを検討する関西電力などの事例がある

5) 青森県はISFSI相当施設の受け入れは拒否の構えで、関西電力は行き詰まっている

6) コンクリートキャスクの露天管理は、沿岸立地である日本の原子力施設では不可能である。結果、屋内管理である

7) 日本では、貯蔵輸送兼用の金属キャスクの採用が予定されている。福島核災害では、数こそ少ないがキャスクが津波により被災したものの、健全性は維持されている

8) 合衆国と正反対に、極めて高コスト構造となっている。キャスク価格は5~10倍で寿命半分程度、保管施設は屋内型のためにかなり高価となる

9) キャスクは完成品の持ち込み(せいぜい半完成品の持ち込み)であり、地元への雇用効果、経済効果はほとんど見込めない

10) キャスクは合衆国では保管専用であるが、日本では小型軽量の保管・輸送兼用金属キャスクとなる。質量を大幅に軽減するために保管用キャスクとしては薄型である。放射線遮蔽の大原則は物量であり、薄型はそれに反するため、必ず大きな代償を伴う

11) 中性子遮蔽体がエポキシ樹脂であるため、キャスクは50年限定の消耗品であり、50年後以降の継続利用の可能性はない。エポキシ樹脂は、中性子線照射によって消耗する

12) 計画全体が核燃料サイクルに完全に依存しており、柔軟性と冗長性が全くない

◆似て異なる全く別物の日米乾式貯蔵

 日本の使用済み核燃料乾式貯蔵計画は、35年先行する合衆国に似て異なるものですが、同じドライキャスクと称するものですから、やはり合衆国と同じく高い経済性と受動的安全性を保証するものと私は考えていました。また地元組み立てにより、過疎に苦しむ伊方町と八幡浜市にかなりの雇用と経済効果をもたらすと期待していました。

 しかし、八幡浜説明会で示された資料にはじまり、日本電力・原子力業界の資料を読み解くとその期待は完全になくなりました。日本の乾式貯蔵計画は、いつもの事ですが、合衆国で通用するものとは似て異なる全くの別物でした。

(*12:出典リンク)

 説明会でまず気になったのは、日本のキャスクが痩せぎすであることでした。明らかに細いのです。細さは、遮蔽体の薄さを意味します。これは合衆国のコンクリートキャスクと用途が全く異なるか、技術的に相当な無理をして代償を払っていることを意味します。

 日本のキャスクの外径は2.6m、質量は120トンです。合衆国では外径3.6m、質量は180トンです。この差は中性子遮へい能力に直結します。日本政府と電力業異界、疫学業界によれば、”日本人は20mSv/yでもニコニコしていればダイジョウV、100mSvまで気にするな”とのことですが、さすがに中性子遮へいで手抜きは出来ません。より効率的な水か樹脂を遮蔽体に用いることはすぐに推測出来ました。

 合衆国のコンクリートキャスクは、厚さ6~8cmの炭素鋼と厚さ75cm前後のコンクリートで中性子をはじめとする放射線を遮蔽します。そして、これによってF16程度の軽戦闘機突入に耐えるとされています。キャスクは、コンクリートと炭素鋼によって80年の寿命を得ますが、コンクリートさえ健全であれば、寿命の80年を超える運用も不可能ではありません。実際に100年程度は持つと期待されています。

 日本の金属キャスクは、Main Yankee廃炉資料新版に示される輸送用金属キャスクにたいへんに近く、中性子遮へいはエポキシ樹脂に依ります。エポキシ樹脂は優れた中性子遮蔽体ですが、自身の化学結合が切断されることによって中性子を遮蔽するために設計寿命を基準とした完全な消耗品です。また、エポキシ樹脂は熱で劣化しますので放熱のために金属フィンを組み込むことにより構造が複雑化し、かなり高価となります。

 合衆国の乾式キャスクは1基3千万円から1億円で、概ね5千万円程度と推測されています。日本の乾式キャスクは2億4千万円で、概ね2億円から3億円の間になりますが、合衆国に比してコスト意識が極めて低いために私は3億円になるだろうと推測しています。また、合衆国と異なり、現地製造は不可能なために現地での雇用効果と経済効果は極めて限定的となります。

◆現状の計画では40年後に深刻な事態になる

 現状の計画で乾式キャスク貯蔵を導入すれば、運用開始40年後に極めて深刻な事態となり、50年後(60年後)には、遮蔽能力の欠如したキャスクを抱えて右往左往することになります。

 経済効果も極めて少なく、立地自治体は将来の極めて高いリスクを雀の涙程度の見返り(経済効果)で引き取る事になりかねません。

 このような脆弱で高リスクの計画が合衆国で認められる可能性は低いでしょう。貯蔵・輸送兼用とするならば、輸送先の当てが揺るいではいけません。いつまでに、どこへ輸送するのかが明確でなければ将来に大きな政治リスクだけでなく安全上の重大なリスクを発生させます。

 実はこの貯蔵、輸送兼用の乾式貯蔵キャスクは、ドイツなどでの先行採用例があります。合衆国でも、輸送を重視して金属キャスクを導入した事例があります。日本の場合は、合衆国で欠陥が指摘されているTin Can Caskと呼称される薄型金属キャスクではなく、金属キャスクとしては厚形のTick Caskと称されるもので、貯蔵計画そのものの将来にわたる整合性と完結性があればコンクリートキャスクに大きく劣ることはないです。但し、2~5割ほどコンクリートキャスクに対して高コストであるために合衆国では主流となりませんでした。

 問題は、事業の将来にわたる冗長性と完結性がないと言うことです。すでに世界では放棄する国が相次ぎ、経済性でも資源論でも完全に合理性を失っている核燃料サイクルの一環としてキャスクを含めて計画全体が設計されているために、核燃料サイクル事業が破綻すれば乾式貯蔵事業そのものが完全に破綻するという本質的欠陥を持っています。残念ながら、夜郎自大で自滅した原子力後進国なればこその似て異なる見かけ倒しのガラクタと言うほかありません。

 このガラクタですが、キャスクの一括形式承認で、今後はたいした審査を要しなくなる可能性があります。合衆国で運用実績のある優れたものなら同意出来ますが、合衆国で主流となり得なかったもののパチものでされるのは困ります。

◆根本的な再検討を要するヒノマルゲンパツ乾式貯蔵

 2月に八幡浜PA集会で説明を聞くまで、私は、日本が導入するであろう乾式貯蔵キャスクは、合衆国の長期保管向けコンクリートキャスクまたはそれに匹敵するものを屋内管理することになるであろうと考えていました。

 私は、高い柔軟性と受動的安全性を持つ乾式キャスクによるSF保管は今後数世紀にわたる決定版であって、積極的に取り入れるべきものと考えていました。

 ところが現実には、合衆国のそれと全く異なり極めて柔軟性に乏しく40年後には10年後に使い物にならなくなる代物を抱えて右往左往することが確実なガラクタがそこにはありました。しかも価格は3~10倍です。地元への経済効果も建屋建設のごく一部と警備員雇用程度で雀の涙。寿命が限定され、熱に弱いエポキシを使って受動的安全性もヘッタクレもありません。輸送中程度の時間ならかまいませんが、半世紀運用するものの最重要の中性子遮蔽体にエポキシを使うことは受動的安全性と柔軟性を著しく損ないます。工学的、工業的には極めて欠陥のある思考です。もちろん、エポキシの寿命期間内に最終処分のために持ち出されるのならば問題はありませんが、日本ではその最終処分が絶望的ですし、核燃料サイクルはすでに破綻が決定的です。

 しかもキャスク現地製造は出来ず持ち込みです。日本原子力業界の宿痾である、利益の仲間内での徹底した囲い込みがそこにはあります。ずいぶんと立地自治体と需要家はバカにされたものです。私は、説明を聞いて、思わず”Flaming Thunderbolts!”とつぶやきました。余りの程度の低さに心底、心底落胆です。

 こうなってしまった原因は、すでに20年遅延で完成しても商用的には完全に失敗(製品価格20~50倍)の六ヶ所再処理工場に完全に依存していること、更に空想の存在でしかない第二再処理工場(旧第三再処理工場)にも依存していることがあります。

 六ヶ所再処理工場は事業費が16兆円と見込まれます*が、遅延と福島核災害の影響、更にデコミッション費用の暴騰から、30兆円迄高騰する可能性があります*。更に第二再処理工場は12兆円という見積もりですが、これは技術的に全く目処が立っておらず、更に再処理したMOX-SF由来のプルトニウムは軽水炉では燃えません。高速炉・高速増殖炉でなければ燃えない代物です。デコミッションも含めて50兆円の覚悟も要し、福島核災害で100兆円その他で100兆円、合計200兆円と私が見込む核の負債を250兆円に跳ね上げます。これは日本の一般会計予算の2.5倍に相当します。

(*:実はこの数字は嘘で、あらゆる経費を過小評価している。経産省で2004年に起きた“19兆円の請求書”事件に示されるように、核燃料サイクルの総費用は2004年時点で19兆円を超えており、東海再処理施設などの前例を根拠の概算すれば、2004年時点での概算で50兆円超えすら指摘されている)

 合衆国ではバックエンド総費用を10兆円と見込みますが、合衆国の半分以下の規模である日本が極端な過小評価によるペテンをしても、サイクルで16兆円、第二サイクルで12兆円の公称、公称だけで合衆国を電気出力当たり6倍を超えますが、現実にはバックエンドも含めて100兆円(電気出力当たり25倍以上)を超える可能性があり、これは構想そのものが破滅しています。

 破滅した計画に依拠した事業の先には破滅しかありません。

◆ペテンはやめろ

 核燃料サイクルという合衆国には50年前に見限られ放棄された計画に原子力後進国が夜郎自大にもしがみついてきた結果が福島核災害でありますが、現状のガラクタ中間貯蔵計画もそうであるといえます。

 とくに四国電力伊方発電所では、原子力PAシリーズ第二回(4ページ目)でご紹介した長沢啓行博士による指摘*では、1号炉2号炉SFPを残存させればSFP枯渇問題は3号炉寿命の40年間生じません。経営基盤が脆弱な四国電力が急いで導入する理由は全くないのです。要はたんなる業界序列の慣例というくだらない愚劣な因習によるものです。

(*:部分再掲。

1) 原子力発電はすでに質(経済性)、量(発電容量)ともに競争力を失っており、内包するリスクに対して運転する意味は全くない。

2) バックエンド(最終処分)は全く方策が決まっておらず、今後数十年かけても無理だろう。従って、デコミッション(廃止措置)において、解体廃止はすぐに行き詰まる。

3) 従って、伊方1,2の解体廃止による1,2号炉SFPの運用中止・解体を前提とした3号炉SFP容量枯渇には根拠がない。

4) 故に、乾式貯蔵キャスク貯蔵施設の建設も根拠がなく無意味である。)

 また、原子力PAシリーズ第一回、2ページ後半での指摘を再掲します。

”少なくとも、ドライキャスクによるSF暫定管理は、21世紀の世界の原子力産業にとって標準的なものであり、合衆国式のコンクリートキャスクではF-16級の小型軍用機の突入まで検討した、安全性に優れたものであると考えて良いです。ただし、日本人は和魂洋才ではありませんが、舶来の優れた技術をゴミにする類い希な能力を持ち、世界の標準が危険なガラクタに化けることは福島核災害が証明しています。従って慎重に事実を元に検証しなければなりません*。

(*:福島第一1号炉を建設したGEは、非常用発電機と電源系統を二階以上の高所に設置することを提案したが、東京電力は拒絶して地下に設置した。結果、津波による浸水で全電源喪失し、加えて非常用冷却装置(IC)の使い方を知らなかった日本人は、原子炉を爆発させた)”

 八幡浜説明会以後、詳細に検討しましたが、懸念は現実のもので、極めて柔軟性に欠け脆弱なワンショット・ライター(一式陸攻)に相当するヒノマルゲンパツ乾式貯蔵が現実であり、極めて劣悪な代物で、40年後に日本中で危機的な政治問題と化することは確実でしょう。「今だけ、カネだけ、自分だけ」を象徴する愚挙であると考えます。

 乾式貯蔵技術はすでに確立した技術です。それをここまで愚劣なものに変えるその才能には感心する限りです。まさに”Flaming Thunderbolts!”であり、「がっかりだ!」です。

 ゼロからのやり直しを断固として求めます。ペテンはやめなさい。

 本稿、次回に続きます。

『コロラド博士の「私はこの分野は専門外なのですが」』第4シリーズPA編--5

<取材・文・撮影/牧田寛 Twitter ID:@BB45_Colorado photo by Nuclear Regulatory Commission via flickr (CC BY 2.0)>

まきた ひろし●著述家・工学博士。徳島大学助手を経て高知工科大学助教、元コロラド大学コロラドスプリングス校客員教授。勤務先大学との関係が著しく悪化し心身を痛めた後解雇。1年半の沈黙の後著述家として再起。本来の専門は、分子反応論、錯体化学、鉱物化学、ワイドギャップ半導体だが、原子力及び核、軍事については、独自に調査・取材を進めてきた。原発問題についてのメルマガ「コロラド博士メルマガ(定期便)」好評配信中

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最終更新:3/31(日) 10:30
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