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ティティカカ湖底から驚きの宝物、古代の宗教の手がかり

4/3(水) 17:11配信

ナショナル ジオグラフィック日本版

古代アンデス文明ティワナクは宗教によって勢力を広げたかもしれない

 今から1200年ほど前、南米のティティカカ湖には、当時の人々にとって最も価値ある品々が集められる場があった。

思わずゾクゾクする考古学フォトギャラリー 写真13点

 水中調査によって、湖底のなかでも高くなった「礁」から、きらびやかな宝物が発掘されたのは2013年のこと。そして現在、研究者らは、これらの宝物が宗教の証拠であり、古代アンデスのティワナク国が一帯に勢力を広げるうえで大事な役割を果たしていたと考えている。

 研究成果は4月1日、学術誌「米国科学アカデミー紀要(PNAS)」に発表された。ティワナクの聖地がいくつもある「太陽の島」からほど近い湖底で見つかったのは、黄金の遺物や金属の装飾品、宝石、香炉など。研究によると、それら遺物はこの礁がかつて、儀式を行う場所だったことを示しているという。

宗教と貿易で勢力拡大

 ティワナク国は、紀元500年から1000年にかけて存在し、最盛期には現在のボリビアからチリやペルーまで版図を広げていた。その勢力拡大には宗教が大きな役割を果たしたと考えられているが、それが具体的にどんなものだったかについては、今も研究の途上だ。

 ティワナクの人々は、強大な軍事力を持っていた痕跡を残しておらず、この国は宗教と貿易によって力を持つようになったと考えられている。ティワナクに宗教的信仰があったこと示す証拠はすでに数多く発見されているが、考古学者らはさらに、その宗教が持っていた意味と、それが国家の発展にどのように寄与したのかを探ろうとしている。

 コア礁と呼ばれる今回の遺跡から見つかった品々の中には、ティワナクの神を表すふたつの黄金のメダルや、ピューマとリャマが混ざりあった架空の動物が描かれた金属の飾り板などがある。水に潜って調査を行ったダイバーたちはまた、生けにえとして捧げられた幼いリャマの骨を少なくとも3頭分発見している。

 もう一つの驚くべき発見は、ウミギクと呼ばれる貝(スポンディルス貝)から作られた5つの遺物と、完全な貝そのものが一つ見つかったことだ。初期アンデス文化において、ウミギク貝は重要な品と位置づけられていたが、その生息地はティティカカ湖ではなく、太平洋だった。これはティワナクの人々の貿易網の広さと、貝の価値の高さを示唆している。

「これほど多くのウミギク貝が見つかったのには、本当に驚かされました」と、米ペンシルベニア州立大学の人類学准教授で、今回の論文の著者の一人であるホセ・M・カプリレス氏は言う。

 ティワナクの人々はなぜこれほど貴重な品々を、アンデス高地の湖に置いていったのか。

 カプリレス氏は、供物が捧げられていたことは、宗教的な伝統が形成されつつあった証拠だと考えている。貴重で魅力的な素材を儀式に用いることで、ティワナクの礼拝者たちは、自分たちの新しい宗教への献身を示そうとしていた。こうした風習は「社会の構築に大きな影響力を持つ」と、カプリレス氏は言う。「人々が作り上げるそうした神々が、民の行動を左右する慣習となっていくのです」

 この新たな宗教は、倫理や行動の基準となったと同時に、人々が積極的に土地から土地へ移動できるようになったことも意味する。共有する信仰があるおかげで、人々は、どこへ行ってもよそ者とみなされることはないと安心できるからだ。こうした状況が、ティワナク国の拡大に寄与したのではないかと、研究チームは考えている。

 その全盛期、ティワナク国は大きな政治的影響力、経済力、優れた文化を誇っていた。しかし紀元1000年頃に崩壊を迎えると、その後登場した数々の文化によってすっかり影が薄くなってしまった。

 ティワナク国は遠い存在のように思えるかもしれないが、残された遺物がこの国の人々を身近に感じさせてくれると、カプリレス氏は言う。「彼らは感謝の心を持って捧げ物をしていました。彼らもまた、わたしやあなたと同じような人間だったのです」

文=ERIN BLAKEMORE/訳=北村京子

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