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大分FW藤本憲明は「あれは究極だよ。魅力的だよね」。メッシと共通する“感覚”とは?【宮澤ミシェルの独り言】

4/5(金) 10:50配信

フットボールチャンネル

日本代表選出経験も持つ元Jリーガーで、現役引退後は解説者として活躍中の宮澤ミシェル氏の連載企画。第26回は、明治安田生命J1リーグについて。日本人FWの活躍が目立つが、宮澤氏は彼らをどのように見ているのか。(語り手:宮澤ミシェル)

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●鈴木武蔵には丸く収まって欲しくない

 Jリーグが開幕して、この序盤は日本人ストライカーの活躍も目立っているよね。まず、鈴木武蔵。彼は今後どういう風に変化していくのか楽しみだ。ちょっと変わってきたよね。アルビレックス新潟、V・ファーレン長崎、北海道コンサドーレ札幌と移籍する中で何か掴むものが出てきたんだろうね。スピードをさらに生かせるようになったり、落としが上手くなったり。そういうものを積み重ねていくと、移籍の意味があるって感じるよ。

「期待されて来ているんだから、結果を出さないといけない」とか、そういうプレッシャーがストライカーには必要なんだろうね。ポテンシャルはあったんだけど、丁寧になったよね。落としに関しても楔の受け方についても。

 新潟の時はミスが多かったり、マメさが足りなかった。ディフェンスとの駆け引きで、横に外すのか裏に抜けるのか、その辺がマメになってきたよ。そういうことができるようになると、自分のポテンシャルもさらに生きてくる。丸く収まって欲しくないし、ワイルドさをずっと持ち続けて欲しいよね。

 武蔵は日本代表にも初招集された。自分のタイミングを2列目のアタッカーが意識してくれて、欲しいタイミングでもらえるようになったらもっと生きるよね。ただ、ああいうヘディングは外しちゃダメね。何でもいいから枠には飛ばさないといけない。それでも、代表でプレーできたことは良かった。あとは自分のツボ。ここだけは寄越してくれ、というものを味方にがっつり要求してほしい。

●伊藤翔はDFにとって怖い選手

 それから鹿島アントラーズに移籍した伊藤翔。彼は若くしてすごく騒がれて、フランスに行って苦しんで、Jリーグで経験を積んできた。

 彼のここぞという時の落ち着きや、コースを見て打てるところ、キーパーをちょっとかわして打てるとか、そういう感覚はすべての経験が生きているよね。スピードが抜群にあったり、高さがあってというより、サッカー観でよく勝負しているなと。

 自分のサッカー観で出したいものと、実際に出すべきものが噛み合ったんじゃないかな。やっぱり点取り屋に年齢っていうのは関係ないんだね。若い奴は若い時に取っちゃうし、ベテランはベテランで味が出てくるし。

 伊藤は何でもできる選手ではあるよね。ポストプレーができて、前線で体を張れる。スペースに流れてキープもできる。そこに駆け引きも加わってきて、ゴール前に入る神出鬼没さも出てきた。一番いいところを選んで仕事ができている感じがするよね。ああいうストライカーはディフェンスからすると怖いんだよね。

 日本人FWが他クラブから鹿島に移籍することって、そんなに多くなかったと思う。伊藤が点数を取れるという感覚を、鹿島がどこで見たか。いい選手だけど、去年だってマリノスで得点を量産したわけじゃない。ただ、派手じゃないけど点数を取っていて、冷静にコースが見えている。やっぱり鹿島に獲られたという自信もあるだろうね。

 彼はチームというバランスの中で生きる選手。マークするディフェンスにしてみれば、そんなにつきづらい選手ではないと思うし、「何で点数を取られちゃうんだ」という感覚に相手はなると思う。でも、そうやって決めるのもストライカーだからね。経験を積み重ねる中で何かわかってきたのかもしれない。ここにボールがこぼれてくるとか、どこに入ればディフェンスが苦しむかとかが見えているんだろうね。

●藤本憲明のあるプレーに「僕の好きな感覚だね」

 伊藤がキャリアを積み重ねる中で成熟していったように、大分トリニータの藤本憲明にも同じことが言える。JFLから始まってJ3、J2、J1とステージを上げてきた。

 ここまで5点を挙げていて、J1でも十分戦えることを証明しているね。大分というチームのベースがあって、しっかり繋げるスタイルで積み上げてきた。その中に藤本というストライカーがいるんだけど、彼はスピードだよね。足元も上手いし、ドリブルもできる。下のカテゴリーから積み重ねていってゴールの感覚というのが彼にはある。ずっと点数を取ってきているわけだからね。

 シュートのパターンも多いよね。ニアサイドでも点数を取れるし、この前は右サイドからマイナス気味のクロスが来たんだけど、藤本は直接打てないと思ったら胸でトラップしたんだ。シュートは上にふかしてしまったけど、ああいうのは僕の好きな感覚だね。

 あそこで普通の日本人だったら、無理してヘディングで打とうとすると思うんだけど、彼はちょっと体を開いて胸でトラップして打った。自分で下から積み重ねてきているから、できることが変わっていない。それは凄いことだよ。

 (リオネル・)メッシが何で凄いかといったら、小さい時のプレーが今でも出せるから。藤本も相手のレベルが上がる中でもプレーが変わらない、という選手だね。面白い感覚を持っているよ。ニアサイドでヒールで点数を取った試合もあったけど、あれも感覚。成功したことがあって、それが残っているからできる。あれでいいんだよ。

 ディフェンスからすると、あんな決められ方はたまったもんじゃないよ。ああいうのが大事だし、それを忘れないようにプレーできる自分のポテンシャルを持っているんだよね。胸のトラップにしたって、「そんなところじゃ無理だよ」と言われるかもしれないけど、ゴール前でトラップしたっていいよね。

 相手のレベルやカテゴリーが上がる中でもプレーが変わらない、とうのは究極だよ。フォワードにとっては特に。そこには何か特別な武器がないといけないけど、藤本はそれが持てているよ。下のカテゴリーから培ってきて、時間はかかったかもしれないけど叩き上げで。魅力的だよね。

▽語り手:宮澤ミシェル
1963年7月14日、千葉県出身。Jリーグ黎明期をプレーヤーとして戦い、94年には日本代表に選出された経験を持つ。現役引退後は解説者の道を歩み、日本が出場した過去5大会のワールドカップを現地で解説している。様々なメディアで活躍。出演番組にはNHK『Jリーグ中継』『Jリーグタイム』、WOWOW『スペインサッカー リーガ・エスパニョーラ』『リーガダイジェスト!』などがある。

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最終更新:4/5(金) 10:50
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