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「生きているだけまし」と言われても…知られざる震災障害者の苦悩〈AERA〉

4/10(水) 17:00配信

AERA dot.

 地震や災害に遭い、体や心に障害を負う──。「震災障害者」と言われ、1995年の阪神・淡路大震災の支援者らの間で使われ始めた。ただ、行政上の定義はなく、被災自治体がこれまで掘り下げた調査をしてこなかったため、その実態はよくわかっていない。「災害の盲点」「忘れられた被災者」ともいわれるのはそのためだ。

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 国の支援は、73年成立の災害弔慰金法に基づき、災害障害見舞金として最大で250万円支給される。東日本大震災では岩手、宮城、福島3県で97人が受給した。熊本地震では4人。だが支給対象は、両腕・両足の切断や両目失明など1級相当に認定された最重度の障害だけ。

 広島市に暮らす宮本孝子さん(79)は、77人が犠牲になった2014年8月の広島土砂災害で、左足と夫を奪われた。

 50年近く暮らした自宅は土石流にのまれ、助け出された夫の敏治(としはる)さん(当時74)は3日後に亡くなった。

 今も週2回、リハビリで通院する。義足をつけたが、移動するたびに右足に体重がかかって激痛が走り、痛み止め薬は手放せない。そんな宮本さんも、災害障害見舞金の対象にはならなかった。市に相談すると、「両足切断でないと難しい」と言われた。宮本さんは言う。

「冷たいもんです」

 震災障害者が置かれた現状について、15年近く彼らを支援しているNPO法人「よろず相談室」(神戸市)理事長の牧秀一さん(69)はこう話す。

「地震や豪雨が起きると必ず障害者が生まれる。だが、その人たちは放置されている。行政からの支援はなく孤立無援であることは共通している。災害によって、家族の中である人は亡くなって、ある人は障害者になって、ある人は無事でいる。同じ家の中でかけ離れた人生を歩む人がいる。これはつらい」

 牧さんによれば、震災障害者とその家族の4割が自殺を考え、震災障害者の7割が生きがいを失ったという。

 阪神・淡路大震災では1万683人が重傷を負った。だが行政は追跡調査をせず、支援が遅れた。発生から15年が過ぎた10年度になって兵庫県や神戸市が実態調査に着手。障害者手帳の申請内容などを精査し、県内で震災障害者349人が判明した。だがこれは氷山の一角かもしれない。牧さんは、重傷者数や被災者アンケートから「阪神・淡路では2千人超はいる」と推測する。

 震災障害者が「見えない存在」となるのはなぜか。理由を牧さんはこう話す。

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最終更新:4/10(水) 17:00
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