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大卒でも財閥系大企業でなければ年収200万円台。韓国の高学歴貧困の厳しすぎる事情

4/9(火) 8:33配信

HARBOR BUSINESS Online

◆若者の失業率上昇が止まらない韓国

 日本の労働市場が人手不足に悩まされる一方、韓国では若者の失業率の上昇が問題となっている。’17年には青年失業率(15~29歳)が過去最悪の12.3%を記録し、その後も劇的な改善は見せていない。’97年のアジア通貨危機以降、韓国では少なくとも’00年からこの状態が続いており、解決に至っていない。

⇒【グラフ】韓国における大企業と中小企業の勤続年数別年収格差と、大企業と中小企業の数の比較

 ’05年の82.1%から下降線を辿っているものの、大学進学率は70%台で推移しており、国民の約8割が大卒にあたる。しかし、大卒者であっても財閥系大企業に入れなければ30歳で年収200万円台が妥当な金額。そのため、高学歴貧困者の数が世界トップレベルにあると言えるのだ。そんな韓国の実態に迫った(通貨レートは’19年3月現在)。

◆一時しのぎにしかならない奨励金制度

 ソウルの小売会社に勤めるイ・フンミンさん(仮名・30歳)は、地方都市の出身で、現在ソウルで弟と2人暮らし。韓国でトップ10に入る某大学を卒業後、就活をするも連敗し、大手スーパーマーケットの高卒枠でようやく採用された。だが、馬車馬のように働いて月収はわずか120万ウォン(約11万800円)。現在のIT系企業の月収は150万ウォン(約14万円)で、交通費は含まれていない。

「家賃と光熱費、食費や被服費、交際費で1ウォンも残りません。8月に奨励金が出るのでそれが頼みの綱です」

 奨励金とは、韓国政府が若年層雇用促進のため打ち出した「青年追加雇用奨励金」のこと。満15~34歳の青年を正社員として雇用した企業に対し、企業規模に応じて一人当たり最大2000万ウォン(約197万円)負担する制度だ。ただ、被雇用者は3年間勤める義務がある。イさんもその制度で就職できたわけだが、根本的解決には至っていない。

「奨励金が入ればだいぶラクになります。しかし、今の会社にいる限り基本給が上がるわけではないので一時しのぎにしかなりません」

 イさんの友人のホン・チャンスさん(仮名・33歳)は、失業保険を受けながら就職活動中で、インタビュー時も面接用のスーツを持ち歩いていた。芸人のイジリー岡田に似た風貌のホンさんはこのように話す。

「僕は、芸能界志望でした。最初は歌手を目指していたけど、顔がダメだと言われ、ならばブサイクを生かそうと芸人のオーディションも受けたけど、それも落ちた。YouTuberになる手もあったけど、まず機材を買うカネがなかったし、何しろ毎回動画を撮るとか無理。それで、就活を始めました。エントリーシートはもう400枚は書きましたね」

 地方大出身のためソウルの大卒より不利だが、それでも社会福祉系資格と難易度の高いIT系資格を保有していたため、病院の事務職に採用された。年俸3200万ウォン(約315万円)と悪くなかったが、1週間で辞めたという。

◆努力すれば人生挽回できるなんて韓国ではありえない

「理由は、できないことをやらせるから。事務と言ったのに、3D映像を作れと言うのはやりすぎでしょう。韓国の中小企業は、募集内容と実態が違うことが多いんです。倉庫の荷下ろしと言っていたのに、倉庫のモノを売ってこいなどは日常茶飯事。あと、採用時に年俸3000万ウォンと言ったのに、後で『新人だから2000万ウォン』と平気で下げてきたり。だから人が集まらないんです」

 とはいえ今月で失業保険給付が終わるため、事態は逼迫している。

「自分はソウルに実家があるから助かっていますが、地方から上京している人はもっと厳しい。地方は仕事が少ないから来ざるを得ないのですが、すぐに仕事があるわけでもなく、饅頭を5つ買って1週間しのぐという人もいますよ」

 ホンさんが言うように、地方出身の若者は最も悲惨だ。釜山出身のミン・チュナさん(仮名・23歳)は昨年1月に技術系の短大を卒業し、仁川で一人暮らしをしている。TOEIC800点とオラクルの各種資格に加え、フラワーアレンジメントの資格も持つ。家賃は46万ウォン(約4万5000円)。卒業と同時にウエディングプランの会社に就職できたが、朝10時から夜7時まで働いて社員全員の月給が80万ウォン(約7万9000円)というブラックぶりだった。

「友達はホテルに就職して月給220万ウォンもらっているのに……。家賃とスマホ代だけでカツカツ。これならバイトのほうが倍以上稼げると思い、昨年10月に退職したんです」

 ところが文在寅政権の方針により、最低時給が’18年の7530ウォン(約742円)から’19年は8350ウォン(約823円)へと大幅に上昇。そのためバイトの競争率が激化し職にありつけず、単発バイトを知人に紹介してもらっていたが、昨年末から現在まで引きこもり状態だという。

「実家からたまに仕送りをもらってますが、今月はもう家賃が払えない。花屋のバイトに何とか受かりましたが、それも週1回だけ。洋服は組み合わせを替えて着まわし、食事はシリアルとヨーグルトを買って毎日少しずつ食べてます」

 極貧生活を抜け出すため、日本で働くことを希望している。

「10月から日本にワーホリで行く予定です。日本ではバイトの給料が韓国よりはるかに高いと聞いてます。韓国に未練はありません」

◆日本に関心があるだけに決断できない事情

 日本に関心を持っていても、くすぶる人もいる。日本のアニメを見て日本語を学びはじめたチョ・チウンさん(仮名・23歳)は、高校の成績はあまり良くなかったが日本語能力という一芸で、韓国トップの外国語大学に推薦入学した。だが、卒業後は何をしたいのかわからなくなり、引きこもるように。韓国では独身者が親元で暮らすのが普通であるため、引け目は感じないがやはり親の目は厳しいという。

「親は『時間の無駄だ』と言います。特に父は公務員なので厳しく、私が遊んでいると思ってるみたい」

 ホテルの配膳のアルバイトが時給1万ウォン(約990円)だが、常に仕事があるわけではなく、懐事情はよくない。

 日本語がとてもうまいため、日本の現地法人や日本でも就職できるのでは?と問うと、意外にも日本で働く気にはなれないと話す。

「私の日本語はまだまだ。それに、親切な人もいると思うけど、韓国人を敵視する人もいるでしょう。だから、なかなか決断できません」

取材・文・撮影/和場まさみ 小野田衛 安宿緑 安英玉

― 超絶格差社会 高学歴貧困in韓国 ―

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最終更新:4/9(火) 11:44
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