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命を奪う火砕流、猛スピードの原因を解明、最新研究

4/10(水) 17:44配信

ナショナル ジオグラフィック日本版

エアホッケーのように空気層の上を滑っていた

 火山が噴火した際に、多くの死者が出る原因の一つとなっているのが火砕流だ。高熱のガスや灰、岩屑などが混ざり合って斜面を流れ下る現象で、その奔流の温度は約700℃、スピードは時速80キロを超える。

【動画】火砕流の再現実験

 予測することも逃げることも難しい現象だが、火山に近いコミュニティを守るうえで、火砕流の仕組みを理解することはきわめて重要だ。たとえば、火砕流は想定以上に遠くまで達することがよくあるが、その原理はこれまでわかっていなかった。

 この疑問への答えを提示する新たな研究成果が、4月8日付けで学術誌『Nature Geoscience』に発表された。

空気の層で摩擦を回避

 論文によると、火砕流があれほど速く、あれほど遠くまで移動できるのは、それらが空気のクッションの上を滑っていくためだという。適度に細かい灰やガスなどがぎゅっと凝縮された火砕流は、なめらかな空気の土台に乗って前進する。この空気は、火砕流が斜面を下ったり、水平な地面を進んだりするときの摩擦を減らし、また十分な勢いがあれば、斜面を登ることも可能にする。

 実際の火砕流を分析するのは困難だし、極めて危険だ。そこで研究チームは、ニュージーランドで2000年前に起こった大噴火による堆積物を大量に用いて、屋内で再現実験を行うことにした。彼らは堆積物を熱してから12メートル弱の滑り台を滑らせ、小規模ではあるが驚くほど現実に近い火砕流を作り出した。

 さらにコンピューター・シミュレーションを用いて、この実験結果から実際の規模の火砕流を再現した。すると、得られたデータは、前述の摩擦を回避するメカニズムが噴火の最中にも働いていることを示していた。

「実験と数値モデルを組み合わせることで、複雑な自然のプロセスをより深く理解できるという好例です」と、今回の研究には参加していない米国立自然史博物館の実験火山学者、ベン・アンドリューズ氏は語る。

エアホッケーの原理

 今回の論文の著者であるニュージーランド、マッセー大学のガート・ルーブ氏らのチームは、火砕流を安全に研究するため「火砕流噴火大規模実験(PELE)」と呼ばれる装置を開発。実験をハイスピード撮影すれば、滑りをもたらす空気層の発達など、火砕流の活動を詳細に観察することが可能になる。

 火砕流の内部には空気が存在する。火砕流の底にある空気が地面とぶつかると、空気がもつエネルギーの一部が運動エネルギーに変化し、圧力(気圧)が低下する。すると、火砕流の底に気圧の低いゾーンができ、その上に気圧の高いゾーンができる。

 この圧力差によって、火砕流内部から底への空気の流れができ、潤滑クッションができあがる。そこには別の原理も働いているが、このクッションは、エアホッケーのテーブルから送り出された空気が、その上を走るパックの摩擦を減らすのと同じ効果を発揮している。

 この空気のクッションによって「大きな違いが生まれます」と、ルーブ氏は言う。なぜなら、さまざまなものが混ざりあった火砕流内部には、非常に高い摩擦力があるからだ。潤滑の役割をはたす空気がなければ、「火砕流内部はトラックに積んだ砂程度の可動性しかないでしょう」

 ルーブ氏はまた、火砕流ではこの空気による潤滑のメカニズムが発生するが、火砕サージと呼ばれるガスの多い現象では、この仕組みは働かないと指摘する。

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