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禁煙規制で「国内のたばこ市場」はどうなった?決算書から読み解く

4/10(水) 8:47配信

bizSPA!フレッシュ

 経営者目線で仕事ができる、経営のイロハを学べることを期待してコンサルティング会社に入社する方々がいます。

 学生に人気の就職先、コンサルティング業界の意外と知らない事実を教えるこの連載。前回は財務諸表の3表のひとつである損益計算書の、売上総利益や営業利益など「5つの利益」を紹介しました。

 この知識だけでも企業の経営状態を理解することは可能です。例えばネガティブなニュースばかりが目につく企業でも実際の経営状態は良好である場合があります。売上総利益や営業利益などの基本的な項目を確認するだけでも、企業の実態を見抜き背景の理由や企業の戦略を読み解くことが可能です。

 今回は、日本たばこ産業株式会社(以下、JT)の損益計算書の数値を実際に見ることでこの点を確認していきたいと思います。

【第12回】会計知識 - 損益計算書の実例「日本たばこ産業」

 2019年3月には、すかいらーくホールディングス傘下の全店舗(約3200店)が全面禁煙化となりました。2018年10月にはたばこ税の増税(20本あたり20円)がなされたことも記憶に新しいでしょう。増税、禁煙規制を背景に喫煙人口が減ることで、国内のたばこ市場は縮小する一方です。

 たばこ産業にかかわるニュースはこのようにネガティブなものが多いですが、JTの損益計算書を見ると意外にも中長期的には当期利益は成長しつづけています。その理由を、損益計算書の数字をたどりながら探っていきましょう。

売上高および各種利益が成長しているJT

 JTのHPで公開されている過去6年分の損益計算書の数値からは、売上高は年平均で1.2%成長しており、法人税等を除いたあとの最も重要な当期純利益も年平均で1.1%程度成長していることがわかります。

 国内のたばこ市場が縮小し続けていることを踏まえると大いに健闘しているといえるでしょう。

人口減少を見越して事業を早めに海外シフト

 縮小するたばこ市場にも関わらず、売上高が増加しているのはなぜでしょうか。JTの財務諸表には海外・国内の売上高がそれぞれ記載されていますが、実はJTは売上高の7割から8割を海外のたばこ事業でまかなっています。

 そして、販売数量が伸びない場合でも、強固なブランド力に基づいた適切な値上げを繰り返すことにより売上高の成長を確保しているのです。人口および人口構成の予測は、ハズレにくいとされる統計のひとつです。JTは1980年代からすでに国内市場における売上の減少を見通し、海外企業の買収という施策を打ってきました。

 1999年のRJRナビスコ社の米国外たばこ事業の買収、2007年の英国ギャラハー買収はその最たるもので、Winston、CAMEL、Glamour、BENSON & Hedgesなどのブランドと販売網を買収し、現在も各国で販売網を広げ続けています。強固なブランド力に基づいた適切な値上げの実施もJTの施策のひとつです。近年は海外の販売数量も横ばいではありますが、値上げすることにより一定の売上成長を保っています。

 海外たばこの販売数量は過去6年で0.06%しか伸びていませんが、年平均3.7%程度の値上げを行うことにより、売上高を3.8%程度伸ばしています。値上げは通常は既存顧客の流出を招きます。ここまで高い値上げを行い続けることができるのは、たばこという商品の性質もありますが、強固なブランドを買収により手に入れ、保守管理し、自社ブランドを愛好する顧客を持っているからです。

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最終更新:4/10(水) 8:47
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