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<密着ルポ>大麻の違法栽培を強制捜査、劇薬で野生動物を毒殺、米国

4/12(金) 7:11配信

ナショナル ジオグラフィック日本版

保護林で「動物がバタバタと死に始めた」

 8月のある暑い午後のことだった。米カリフォルニア州北部のシャスタ・トリニティ国有林で、野生生物の生態学者モウラド・ガブリエル氏は、迷彩服姿を着込み、強制捜査の時を待っていた。

【動画ルポ】大麻の違法栽培を強制捜査、米国

 他にも、武装した米国森林局の隊員や地元警官など10人以上が待機している。これから、違法な大麻栽培の現場へ踏み込もうというのだ。

 レディングの町の東側で州道36号線を外れ、岩がちな森のなかを谷のほうへ下ると、サトウマツやベイマツの下に隠されるようにして4000本以上の大麻草が栽培されていた。そばには複数のテントが設営され、2台の貯水槽も見える。灌漑用パイプも長く延びていた。

 強制捜査が始まると、まず2人が逮捕された。現場の安全を確認したガブリエル氏は、妻であり仕事上のパートナーでもあるグレタ・ウェンガート氏とともに中に入り、環境の汚染状況を調査して、可能な限り浄化を行った。

 過去6年間、2人は違法栽培で使われる猛毒の殺虫剤や、それが周囲の野生生物に与える影響について注意を喚起してきた。大麻草とキャンプ地から虫や動物を退けるため、違法業者は殺虫剤を使うことがある。なかには、禁止されている劇薬が見つかることすらある。

 ガブリエル氏とウェンガート氏は、2004年に野生生物の研究と保全を目的とした非営利団体「統合生態学研究センター」を設立した。当時は、まさか大麻栽培の摘発に関わることになるとは思っていなかったとウェンガート氏は話す。「ところが、動物がバタバタと死に始めたんです」

危険にさらされる動物たち

 最初に異変に気付いたのは、テンの仲間であるフィッシャー(Martes pennanti)を調査しているときだった。フィッシャーは、カリフォルニア州では絶滅危惧種(Threatened)に指定されている。その死や病気、個体数の減少の原因について調べていた時、毒が体内に入って死んだフィッシャーがやけに多いことに気付いた。毒の種類も様々だ。元をたどっていくと、大麻の違法栽培に行き着いた。大麻が栽培されている森の奥深くは、フィッシャーの生息域でもある。

 2012年、ガブリエル氏とウェンガート氏は具体的な数字を示して問題を明らかにした。同年7月13日付けで学術誌「PLOS ONE」に発表した論文には、検査した58体のフィッシャーの死骸のうち、46体から「抗凝血性殺鼠剤」が検出されたと報告している。

 それから間もなく、クマやハイイロギツネ、ボブキャット、ピューマ、キタマダラフクロウといったほかの動物にも被害が出ていることに気付いた。キタマダラフクロウもまた、カリフォルニア州の絶滅危惧種である。誤って薬を口にしてしまう動物もいたが、なかには意図的に毒を与えられたと思われるケースもあった。森の中に仕掛けられた毒入りホットドッグが見つかったり、毒を食べたハイイロギツネと、それを食べたハゲワシの死骸も発見されている。その周囲には、ハエの死骸も散乱していた。

「私たちが捜査に関わっているのは、これが動物の保護に関わることだからです。大麻が悪の薬だからという理由ではありません。大麻草のことを問題にしているわけではないのです」

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